CHAPTER 19
野営の連続は厳しいな、と思った頃、小高い平原に佇む一軒の小屋を見つけるのだった。
サ「寝床を分けてくれたりはしないだろうか?」
一行は駄目で元々、一軒家を尋ねてみた。
家屋の前にはクワや古びたミシンなどが乱雑に置かれていた。人の家だと察せられる。
トントン。木の扉をノックする。
?「どうぞ」穏やかな女性の声がした。
一行はドキドキしながら木戸を開いた。
サ「こんにちは。
旅の者なんですが、一晩だけでも寝床を分けてはもらえないでしょうか?」
女「こんにちは。粗末な寝床でよろしければ。
そして少しの食事ならお分けすることが可能です」
サ「ありがとうございます!ていうか全然動じないのですね?」
女「あなたがたが来るのが、わかっていました。
鳥たちが騒ぐので」
小屋の横の木には小鳥たちが集まるのだった。
ミ「鳥の言葉がわかるのですか?」
女「そこまでではありません。
しかし多少の見当はつきます。
鳥たちの騒ぎ方によっては、戸が叩かれても開けないようにしています。
まぁ、まずは体を休めてくださいな」
一行は肩にかかったものを、見えるもの見えないもの、ほんのひと時下ろすことが出来た。
お茶をいただきながら、サマルは彼女に話しかけた。
サ「盗賊か、そうでなくても用心棒にしか見えないでしょう?」
女「魂と眼差しは、偽ることはできません。
気高き魂を持つ方々でしょう。おそらく…ロトの子孫では?」
ム「すべてが見えている、というわけでもないのですね」
女「私は私で、試された人生の途上です。
………。
あなた方の旅は、思った以上に長くなると思われます」
サ「そう思ってるんですけど、それ以上に長いんでしょうかね(笑)」
女「魔王の討伐は、たくさんの遠回りを要するものです。
大陸を越え、もっと広い世界を見るでしょう。
そこではあなた方のように、魔王討伐に命を捧げる人々にも出会うはずです」
サ「そうなんです。強い人がいたら子分になりたいんですよ」
女「謙虚も協力も良いことですが…
最終的には、ロトの子孫でないと魔王の討伐は叶わないでしょう」
一行「!?」
ロ「なぜです?僕よりも強い人は、世界のどこかにいるでしょう。
僕は…いえ。」何かを言いかけて、しかしやめた。
女「そうかもしれませんが、強さだけが悪を滅ぼすわけではないのです。
ロトの子孫は、卓越した戦いの才能を持つはずです。
ですがそれ以上に、卓越したロイヤルブルーのオーラを持った魂です」
ム「ロイヤルブルーのオーラ?」
女「物事を見極める目です」
サ「誰が正義で、誰が偽善か?」
女「それもそうですが、他にも様々なことがあるでしょう」
ム「魔王について、何か知っていることはありませんか?」
女「大神官ハーゴン。魔王は邪教のカリスマ的教祖です。
そしてすさまじい魔法の使い手だと聞いています」
ム「魔法使いなのですか?」
女「はい。魔法は大戦争において強力な力となります。
ひとつの魔法で大勢の敵を滅ぼしうるのですから。
ハーゴンが最初にムーンブルクを襲撃したのもそのためです」
ム「3つの子孫の中で、最も魔法を得意とするから」
ロ「なるほど」
女「私に語れることは多くありません」
そこで彼女は、口を閉ざすのだった。
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』
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