CHAPTER 35
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- 2023年3月2日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年5月4日
CHAPTER 35
一度通った道をもう一度なぞる、というのは本来鬱陶しいものだが、カミュとの出会いを経て再びヤハーンを目指しその先へ行こうとすることに、そう苦痛は感じていないのだった。《いかずちの杖》も戻ってきたし、心はとても軽い。
再び砂漠へと直面し、小さな村で休息を挟んだらいざ砂漠越えに励む。
道は険しく、軽かった心はもう重たいが、過去を悔やんでいるわけではない。いつも目の前に何か苦痛があるのは、冒険の旅をしていれば仕方ないことである。大切なのは、過去に過ぎ去った苦しみまで同時に背負い込まないことだ。無駄に歩き回ったことは経験値や戦闘能力の加算という形で跳ね返ってきている。一行はそうして出来事を昇華していく。
砂漠を延々歩き、「グビアナ城はこちら」という立札を越えた頃、ちょっとした異変を感じた。
襲ってくる魔物の種類に、どうも偏りがある。
黄色い小型の恐竜のようだが犬のようにも見える、そんな魔物の出現が多いのだ。

魔「うーー、わんわん!!」しかも、鳴き声がどうも犬のようである。
サ「イヌ…なのかなぁ??」
ドラゴンキッズ?Aは《火炎の息》を吐いた!それぞれ30前後のダメージ!
《火炎の息》を吐くイヌなど聞いたことがない。どうやら魔物ではあるようだ。
そうこうしていると一向は、砂漠の中のオアシスに形成された大きな城下町に辿りついた。グビアナ城だ。
熱い日差しに照り付けられ、かげろうのようにもやもやと揺れる町は、色々な意味で奇妙な珍しい光景だった。
バトランドほどではないが人は多く、暑さにめげず人々は元気で、良くも悪くも活気に満ちている。
武「へいまいどありー!」
客「おい、このお釣りは古い硬貨じゃねぇか!旅行者だからってナメんじゃねぇぞ!」
武「おや?どうもすみませんねぇついうっかり!」
ロ「余計暑くなるようなトラブルや怒鳴り声はやめてほしいもんだな」一行は相づちの代わりに溜息をついた。
武器を欲してはいないがなんとなしに武器屋を眺めてみる。どんな武器が売っているのか視察と、そして町の者と交流するキッカケになることを期待している。
武「おや?旅のもんだね。しかも強そうときたもんだ!
王様の悩みを聞いてやるといいよ!あんたらにも得があるはずだ」
ロ「ふむ。たまには城の王にまともに謁見しないとな」
城下町を抜けて城へと向かう。
ヤハーンあたりから、芸術の色気もない殺伐とした風景が続いていたが、さすがに城ともなるとそれなりに洒落た造りの参道がしつらえられていた。水路が引かれ、噴水が噴き出し、城下町よりも心なしか涼しい感じはする。その水を浴び少しの花が風にそよいでいる。
ミ「あぁ、お花を見るとなんだか生き返ったような気持ちになりますわ」
城へと入る。
門兵はやはり、「何者だ!」などと怒鳴ったりはしない。強そうな冒険者とみると、「さぁさ、王様にお会いください!」と機嫌よく一行を通すのだった。
少し寄り道をしてみる。この国も何か古い伝承などあると耳にした。
城を散策していると「古代研究所」なる部屋があった。入ってみると学者がいる。
サ「龍について何か、ご存じだったりしませんか?」
学「龍かね?ふむふむ。
仙人と呼ばれる人の里では、わりかし多くの龍の言い伝えがあると聞きます。
仙人とはどこにいるのでしょうかね。東の大陸ではあまり聞かない言葉です」
ロ「紋章は手に入り始めたけど、龍の手がかりは相変わらずだなぁ」
一行は研究所を後にしてさらに歩く。
サ「うん?なんか犬の鳴き声が聞こえやしないか?」
そんな気もする。
ロ「フィールドであの黄色いドラゴンが吠えてるんじゃないか?」
こんなところまで聞こえるかなぁ…。まぁいいか、と一行は思う。
促されるままに歩くと王の間に達した。
王「よくぞまいられた!私はグビアナ城主だ。
ほほぅ強そうだな。そなたら私の頼みを聞いてくれるのかね?いいや、損はさせないさ!」
サ「どうも、お初にお目にかかります。西の大陸の者です。
私たちで力になれるものかはわかりませんが、王様がお悩みと伺い、謁見に参った次第です」
王「ほほぅ感心だ感心だ!いやいや役に立たないことはない。
少なくとも6匹か10匹はな!」
サ「は?」
王「おぉ、本題に入ってもよろしいものか?
では、そなたらは明日にでも、格闘大会に参加していただきたい!」
一行「は!?」
王「裏にコロッセオがある。明日も試合があるから格闘大会に参加していただきたい」
サ「どなたと戦うのですか?王様に、お悩みがあると伺っておりますが…」
王「そう。わしの悩みの種じゃ。国民の悩みの種でもある。
ええぃ、説明するのもくたびれたのだがな!
おぬしら、この城に向かう途中にドラゴンキッズと戦ったであろう?」
ロ「黄色い、小さなドラゴンのような魔物ですね?やたらと数が多かったです」
王「そうじゃそうじゃ。
その魔物が繁殖しすぎて、国は困っておる!」
ム「繁殖!?ですか?」
王「そうじゃ。どうも、数年前に町の者が、ドラゴンキッズの幼子を捕まえて家に持ち帰ってしまった。そのうえそのドラゴンキッズが、町の犬と繁殖をしてしまったのじゃ!
すぐに対処すればどうにかなる問題じゃった。しかし人の心…一度手なずけた獣は別れも処分も惜しくなるというもの。処分から逃した「相の子」が、人知れず、手が負えんほどに繁殖しすぎてしまったのじゃ!!」
サ「ドラゴンキッズとイヌの、雑種ですか…!?」
王「そうじゃそうじゃ。とにかく!国土が狂犬で溢れかえっておる!」
ロ「それは厄介な問題だ…!」
王「そうじゃそうじゃ!
雑種とわかった個体は城の兵士どもが順次捕えておる。そしてコロッセオの下の牢獄に捉えてある」
サ「だから城にもイヌの鳴き声がするのか!」
王「そなたら強者だろう?出来るだけ多くの狂犬を仕留めてほしい」
ロ「つまり、格闘大会とは狂犬を相手に戦うのですか?」
王「そうじゃそうじゃ。引き受けてくれるな?」
ロ「わかりました」ローレは振り返り、一行に同意を伺う。皆賛同する。
王「よし。詳細は追って伝える。今日は宿屋で休むがよろしい。良い部屋を取らせる」
『転生したらローレシアのメイドさんだった件』



