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CHAPTER 45

CHAPTER 45


やがて谷は大きく角を曲がった。

すると、思いがけない光景に一行は声を上げた!

なんと、幾つもの風車がくるくると優雅に稼働しているのだった!

サ「うわぁー!なんですか、これは!?」

マ「ほほほ。風を利用した動力装置ですよ。

 風を受けて力を生み、それで水を流したり、脱穀したりしますじゃ。小さいものは手前の集落にもある」

ム「ヨルッカの人が言ってた『ハイカラな村』の意味がわかったわ。

 原住民族と思いきや動力装置を操るし、色鮮やかな織物を好む里…!」

マ「村長さんはね、村の奥におって風車や木工を担当しとります。

 メシも出してくれますが、美味しくないですよ!ほっほっほ。

 ですから昨日の夕に連れてくるのも何だなと思いましてね」


そしてしばらく歩いた後に、1つの洞窟住居に入っていく。

マ「村長さん。来客ですよ!」

長「なに?客人だって?」

奥から、ノコギリと木片を持った細身の老人が顔を出した。豊かな白いヒゲを蓄え顔には威厳があるが、しかしなりは上半身裸であった。

マ「村長さん!何か着てくださいな」

長「おぉすまんすまん。仕事しとったもんでな」

村長は服を羽織ると、改めて一行の前に現れた。

長「客人だって?またイタズラ坊主たちが招き入れたのか?」

マ「ほっほっほ。どの子もあんたの子供の頃にそっくりですよ」

老婆はそれだけ言うと、「自分の役目は終わった」とばかりに近くのイスに深く腰かけて、目をつむってしまった。


サ「どうもお邪魔してすみません。悪い者ではない、と思っているんですがね。ははは。魔王退治を目的に西から旅をしてきたんです。

 僕はサマル、こっちはローレと、ムーンとミユキです」

長「長旅ご苦労じゃったな。

 して、魔王退治の旅じゃと?」

サ「はい。その手がかりがあるのではと思って、やってまいりました」

長「どうかのう。魔王退治に協力しようとは思わんがなぁ…」

サ「そんな冷たいこと言わないでくださいよ!苦労して来たんです」

長「冷たいことを言ったつもりもないぞ?

 魔王退治なんぞ犬死にじゃろ。それに協力したいなんて思わんよ」

一行「…!!」

長「しかしな。俯瞰する者が止めたところで、冒険者が冒険をやめたりはしないもんじゃな。

 昔、この村を経て魔王に到達した者がおる、と聞いている。

 しかし何を持ってしてその勇者が魔王に到達したか、それは知らんよ。本当に知らん」


サ「ひょっとして、乗り物を造ることが出来るのでは?」サマルは風車を見てそう思った。

長「乗り物か。簡単な乗り物を造ることも可能ではあるが…

 足場の悪いこの谷を、馬車が活躍するとも思えんな」

サ「空を飛ぶ乗り物とか…?」

長「はっはっは!

 それが実現するならワシが真っ先に飛んどるよ!」

サ「子供たちが大きな翼の模型など作っています」

長「似たようなことを、大人とて考えたことはある。

 鳥の翼は、風車の羽根によく似とる。

 しかし本格的に羽ばたいた者は誰一人おらん」

サ「そうですか…」


ロ「もう1つ、伺いたいことがあります。

 龍について何か、知っていることはありませんか?

 僕らは旅立ちのとき、賢者に『龍を探せ』と言われました」

長「龍か。

 ………。

 それは、どこにもおらんよ」

一行「えー!!??」

長「世界中すべての町を探しても、龍など見つからん。

 龍なんぞいるなら、今ごろ見世物になっとるわ」

サ「そんな…!」

長「しかしな。

 世界中をさすらったことは、無駄にならん」

サ「いや、そういう問題じゃないんですよ!強くなれて良かったね、じゃ意味がないんです」

長「ほっほっほ!精神論の話ではありゃせんよ。

 龍を見つけるにあたって、おぬしらがさまよったことは無意味ではない。

 人はやがて………」

ロ「はい」


長「まぶたの裏に、龍を視る」


ミ「霊感、ということですか!?」

長「そうじゃ。そういう言い方ができるじゃろう」

サ「なんてこった!魔法の一種ってことか!」


長「ワシはなぜ、こんな素朴な村におると思う?」

ロ「なぜですか?」

長「ワシも昔、まぶたの裏に龍を視た。

 そしてその龍は言った。

 『風の谷で生きよ』とな」

一行「…!!」

長「それが天啓であり、ワシの天命であることを察した。

 抗うことも出来たろうが、もう他に行きたい場所もなかった。ほっほっほ!」

サ「どこか洞窟の奥とかに龍がいて、僕らを背中に乗せて魔王のところに運んでくれるとか、そういう話じゃないのですね?」

長「そういうことが無いとは、言い切れんがね。

 ワシが知っていることなど世界の事象の万分の一に過ぎぬ。

 ワシが龍について知っていることを話せ、と問われたら、まぶたの裏に視る龍のことを話す。それまでじゃよ」

ム「グビアナの神父さんは、『龍とは天啓を示す者だ』と言っていたわ」

ロ「その話とも一致するな。

 しかしまぶたの裏とは…!」

長「さて。意地悪を言いたくはないが、もう良いかな?

 この里は、余所者を受け入れたことで外部から攻撃を受けたこともあると聞く。

 ワシはまず第一に、民の安全を守らねばならん」

ロ「わかりました」



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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