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CHAPTER 5

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月2日
  • 読了時間: 3分

CHAPTER 5


翌朝。ミユキが目を覚ますと、ベッドには自分の体しかなかった。

王子の姿はそこにはなく、ロビーに戻ってソファで眠ったようだった。

一晩中抱きしめてもらいたかったが、それをしない王子であることもわかってはいた。

どこまでが夢でどこまでが現実か、一瞬よくわからなかったが、頬が涙で濡れた形跡があるのを感じ取った。転生の話を打ち明けたのは夢ではない。

ミユキは、昨晩の打ち明け話はもう忘れたふりをして、いつもの笑顔でロビーの王子を起こしにいった。


宿「おはようございます旅の方。

 大陸から西に抜けられるんで?

 サマルトリアの国王から許可証を貰わないと、関所は抜けられませんよ。

 ムーンブルクは今荒れてるからね。魔王の一味に襲撃されたの、ご存じでしょう?

 サマルトリアの王子が残党退治の援軍に行くそうだが、その家来でもなきゃ行けないでしょうなぁ」

ロ「はぁ、どうも」

二人は宿屋を後にし、朝の陽光まぶしい町を歩いた。

ミ「好都合ですわローレ様!

 西に抜けたいですが、その前にサマルトリアの王子様に家来になっていただきたいものです!」

ロ「あれ、どっちが家来になるんだっけ(汗)」

ミ「ローレ様が親分です!」

ロ「ははは」

ミ「そうだローレ様、道具屋です!

 《やくそう》を買うんではなかったですか?

 それに、どこかの洞窟に入る前には《どくけし草》を買っておくべきだ、とどこかのラノベで読みました」

ロ「らのべ?」

ミ「いえ、なんでもありません!

 とにかく《やくそう》や《どくけしそう》が必要なのでは?」

ロ「そうだったね」


二人は道具屋を探した。それは町のはずれにあった。

古びた小さな店には、よくわからない野草の干し束や煎じ薬などが乱雑に並んでいた。

店の主人は、年のいった老婆である。

ミ「こんにちは!」

婆「ふぁーあ。朝も早くからやかましいこった」

人嫌い、愛想の悪い老人であるようだった。しかし、ちらっと王子の顔を見ると、急に目を見開くのだった。

婆「王子さんだね?ローレシアの」

ロ「えっ!」

婆「大丈夫さね。わたしも人生長い魔法使いの端くれだよ。

 あんたみたいな人間のために、意味もなく道具屋なんぞやってんのさ」

老婆は他の人に話を聞かれないようにと、店のドアを静かに閉めた。

婆「ローレシアの王子が旅立った話は聞いておる。

 一人では目的は果たされぬ。サマルトリアの王子に会いなされ」

ミ「どっちが家来なのですか?」

ロ「こら!」

婆「はっはっは!サマルトリアが家来じゃな」

ミ「やっぱり!」

婆「して、ローレシアの王子が子分じゃ」

ミ「えぇ、なにそれぇ!」

ロ「お婆さん。急いでおります」

婆「おぉすまんかった。

 この町から西にサマルトリアの城がある。

 自分の足で行くのは初めてじゃろう。迷わんようにな。

 これは餞別じゃ。くれてやる」

老婆は王子に、《やくそう》と《どくけしそう》を2つずつ、そして珍しい野草茶の包みを手渡した。



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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