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CHAPTER 55

CHAPTER 55


いつの間にか一行は、集落の入口まで戻ってきていた。

庭園の横には、大きな畑が広がっている。

向こうにはぽつんと、人がしゃがみこんでいる。

一行は近づいてみる。

サ「あれ?さっきの爺さんじゃないか?」

ミ「お爺さーん」ミユキは明るい声で呼びかける。

べ「ワシか?ワシはベッポじいさんじゃ」

サ「えぇ、またお会いしましたね」

べ「ワシか?今は畑仕事をしておる。

 手伝ってくれるのか?」

サ「あ、ごめんなさい(汗)

 今はやることがあるものでして」


一行は集落に引き返すことにした。

サ「一周しちゃったな。いや、左側の集落は素通りして城に行ったから、もう少し出会える人がいるか」

ム「行ってみましょう」

しかし…そのときだ。

ロ「………。」

ローレは一人、立ち止まってしまった。何かを考えている。

サ「あれ?どうした?ローレ」

ロ「………。

 あの爺さんだ!

 戻るぞ、畑に!」

サ「なんだよ?どしたんだよ?」

ロ「あのベッポという爺さんだよ。王様は!」

サ・ム・ミ「えぇ!?」

ロ「 『王様は、この国の民の命を守るために懸命に働いています』と言ってたろ?

 強いことは素晴らしい、機織りも芸術も素晴らしい。

 でも、『野菜を作ること』よりも命を守る作業はない…!」

サ・ム・ミ「…!!!」


ローレははやる気持ちを抑えきれず大股で歩いて戻った。

ロ「お爺さん!ベッポさん!」

べ「おや?畑仕事を手伝ってくれるのか?」

ロ「手伝います。畑仕事。

 お会いできて光栄です。あなたがテロスの国の王様でしょう?」

ベッポはニコっと笑った。

べ「ほっほっほ!正解じゃ♪」



べ「よくわかったなぁお若いの!」

ロ「畑仕事よりも民の命を守れるものはありません」

べ「そう言い切れるのか?戦士としての英才教育を受けて育ったのに?」

ロ「剣術や戦術を学ぶ前に、僕の父は僕に野良仕事をさせました。

 父はそれで指の先や足の爪の中まで鍛えさせたかったのでしょうが、僕はそれだけでなく、農業の重要性を学んでしまったようです。その楽しさや心地よさも」

べ「しかし敵に迫られたらどうする?戦わないと死んでしまうぞ」

ロ「移り住めば良いのです。このテロスのような僻地にでも。

 農業の技術があるなら、どこに行ったって野菜を作れる。どこに行ったって生きられます」

べ「ほっほっほ!お見事じゃな」


サ「いやぁ~クイズでローレに負けるとはな!悔しいぜ」

べ「集団戦じゃからな。みんな合格じゃよ。

 ほれ、景品にこれをくれてやる」

ベッポはローレにクシャクシャの『命の紋章』を授けた!

サ「王様!これっ!!!」

べ「ほっほっほ、ボケじゃ!

 あとで刺繍の婆さんに新品を貰っといてくれ。どちらでも同じことじゃよ」

ム「あはははは!なんて楽しい国なの!?」ムーンは口元に手を当てて、珍しく大笑いしている。

べ「そうじゃそうじゃ!お嬢さん、笑顔のほうが似合ってるぞい!」



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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