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CHAPTER 59

CHAPTER 59


一行はゆっくりと崖を降りていった。

ププルとバーバラが一行を出迎える。

プ「あはははおかえりー!」

サ「ププル!君にも感謝が言いたいよ」

プ「え?」

サ「君の勇ましく飛ぼうとする姿を見ていなかったら、僕たちはこんなに簡単に谷には帰ってこれなかったかもしれないさ」

プ「うん??」

ププルには意味がわからなかったが、サマルは精いっぱいの笑顔で込みあげる気持ちを伝えるのだった。


遊びたがるププルをたしなめながら、一行は老婆マーニャの元へ向かった。

マーニャは一行の再来を驚き、しかし「やっぱりね」という顔をしていた。

ローレは事情を話す。自分の龍が言う「家庭的な女性」とは、マーニャのことではないか、と。

マーニャは唖然とした表情を見せたが、永遠にも長いほどポカンとしたのち「…なるほど」と言ったのだった。

一行はマーニャに5つの紋章を託した。マーニャはそれを受け止めた。


マーニャは「少し遊んでおいでなさい」と言った。時間が要るよ、と。

そして、「助手をしなさい」と言って、ププルとバーバラを引き留めた。二人は快くそれに応じるのだった。サマルたちの役に立てる喜び、新しいことに携われる好奇心、二人は嬉しかった。

一行は集落を歩いて散歩することにした。そして成り行きから、今度は村長に一夜を泊めてもらうこととなった。この谷に宿屋はないのである。だれかが民家を提供しなければならない。

この頃にはもう、付き添い無しに集落を歩いても誰も怪訝な顔を見せることはなかった。


翌日。

冒険者に安らかな時間というのは20時間も続かないのである。

彼らは谷の入口まで、マーニャの家まで様子を見に戻った。そこで衝撃的な光景を見て心臓が飛び出す思いをする!

なんと、ププルとバーバラは、大切な5つの紋章を糸からほぐしてほどいて、バラバラにしてしまったのだ…!!

一行「…!!!」

サ「おい!これは遊ぶためのものじゃないんだよ!!!」

サマルは言葉を荒げた。珍しく響き渡る剣幕に、集落の周囲は唖然とした。皆こちらのほうを見て「何事か」とポカンとしている。

プ「えぇ?良いんだよこれで」

サ「良くないよ!これは大切なものなんだ!遊ぶものじゃないんだよ!」

まぁまぁ、とサマルをなだめることすら、残りの3人には出来なかった。

一行が顔面蒼白になっているところに、何事かとマーニャが駆け付けた。

マ「はいはい、どうしましたね?」

サ「マーニャさん!これ見てください!!

 ププルたちが紋章を、こんなバラバラにしてしまって…!!」


すると、マーニャは意外な反応を見せるのだった。

マ「おっほほほほ、良いんですよぉ!」

サ「何が良いんですか!」これを集める苦労を思い返しながらサマルは汗を飛ばした。

マ「私がこの子らに指示したんです」

サ「なんだって!?まさかあんたたち…」

サマルはたまらず武器に手を掛けた。

マ「これこれ、落ち着きなさいな。

 私はこの糸を使って、防具を編むのです」

一行「…!!!」


マ「さぁさ、どうか落ち着いてください。

 何も不幸なことは起こっとりません。

 不思議な紋章ですもの。魔法の力を使って何か起こすのかな、と思ったのでしょうねぇ。

 それもそうですが、手芸の力も使うのですじゃ。

 魔法の紋章はどれも、魔力の高いものたちによって丁寧に作られました。じゃから糸の1つ1つが高い魔力を帯びています。それを使ってね、防具を作るのですよ」

マ「ごめんなさいね。あなたたちが青ざめる気持ちはわかりますとも。

 命がけで集めた紋章ですじゃ。それが散り散りになったら青ざめます。

 だからこそププルとバーバラを選びました。大切に助手をするだろうと。大丈夫です。この子たちは手芸の大切さも知っとりますとも」

サ「ご、ごめんなさい…」

マ「おほほ、良いのです。誰も悪くはないんですよ。

 人生にはこういう、突拍子もないことがあります。

 信じられもしないことに、身を投じなけりゃならんこともあります」

サ「ははは。マントを使って飛ぶとか、ね」サマルは肩の力を抜いた。

ミ「ごめんねぇ」ミユキはププルとバーバラを抱きしめた。

ローレも二人の頭をなでた。

ム「魔法の力が魔王討伐の鍵を握る、とあちこちで耳にしました」

マ「そうね。色々な意味でそういうところがあります。

 急いでやりますよぉ。いつまでもハラハラさせるのは可哀想ですこと。

 明日の朝までお時間くださいな」

サマルはもう、疑ってはいなかった。一行はハラハラしてもいなかった。

誰も知らない旅に出るということは、誰も知らないことに身を投じるということだ。



一行はさらなる一日を、集落で様々な人と戯れながら過ごした。

翌朝再び、マーニャのもとを訪れる。

マ「はいはい。出来ましたよぉ。お待たせしましたね」

プ「お婆ちゃん、寝ずに作ったんだよ!」

マ「これ!余計なことを言わないの!

 良いんですよぉ、たまには」

老婆は老婆なりに、一世一代の機会に体を張ったのだった。

大切にしまわれた箱から彼女が取り出したものは…


マ「どうぞ。《やまびこの帽子》です。

 これはあなた方に差し上げますよ」ニコニコと微笑んだ。

ロ「《やまびこの帽子》…?」

マ「伝説の武具と讃されるようなものの1つですじゃ。

 魔法使いさん用の防具ですね。可愛いお嬢さんがかぶりなされ」

マーニャはムーンにその帽子を優しくかぶせた。

マ「おぉー、よく似合う」娘に記念日服を着せる母親のように、目を細めている。

ロ「美しい、だけではないはずですね?」

マ「おほほ、そうですとも!

 この帽子には、魔法をやまびこさせる、大層な効果があります」

サ「やまびこって、もしかして!?」

マ「そうですよぉ。1度唱えると2回の効果」

ム「本当ですか!?これをかぶって《イオナズン》を唱えたら…」

マ「おほほ、そうです。

 《イオナズン》が2回、放たれる!!」

サ「え、え、えげつないぞ…!!!」

マ「そうですじゃ。えげつないのです。

 だから、装備する者を選びます。

 正義の使者に託さなければなりません」

ロ「紋章を5つ集めし者にしか、持つ資格がない、ということか!」


ム「紋章を5つ集めし者がいざなわれる、『新たな領域』って…」

マ「《イオナズン》を唱えたらそれが2回。もはや破壊の神ですじゃ」

ロ「対抗できる者がいなくなるんだ…!」

マ「ほとんど、ですね。

 世界の勢力すら、変えうるものですじゃ」

サ「こんなすさまじいアイテムを、頂いて良いのですか?」

マ「あなたたちが、険しい旅の果てにそれを捕まえたのです。

 これはあなたちのもの。ほほほ」

ム「魔法が鍵を握るって、こういうことだったのね。

 ただでさえ魔法は、大勢の敵を瞬時に殲滅する。

 それが《やまびこの帽子》を手にした勇者は、すさまじい破壊の力を手に入れる…!!」

サ「世界で唯一、魔王軍に対抗しうる、ということか!」

マ「世界はこうして、昨日まで見えなかった景色が開かれていきますじゃ。

 ほほほ」老婆は何かを懐かしむように、目を細めた。

マ「お行きなされ。

 ただし、気を付けますように。

 魔法にはかぎりがあります。魔力が尽きたら何も出来なくなってしまう」

ム「そうですね。わきまえております」



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