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CHAPTER 64

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月1日
  • 読了時間: 6分

更新日:2024年5月3日

CHAPTER 64


ロ「か、勝ったのか?」

そのように見えるが、そのように感じられない。

禍々しい気配は収束するどころか…ますます増幅してくる。一行は身の毛のよだつ絶望を感じる!


シュゥゥゥゥゥゥ…!!


なんと、祭壇の上の大神官ハーゴンの姿は消え、そこにはこの世の者とは思えないおぞましい魔物が姿を現した!!!

「グギャアアアアァァァァッ!!!」

破壊神シドーがあらわれた!!!


ロ「…なんだこれは…!!!」

一行は呆気に取られた。体力のかぎりを尽くして大神官ハーゴンを打ちのめしたと思ったのも束の間、さらにおぞましい怪物が目の前に立ちはだかっている。

怪物は3つの顔を持ち、6本の手を持つ阿修羅のような生き物だった。こちらが3人だから3面なのか?そうであるらしかった!

(これを3面阿修羅ふうにアレンジした怪物)

シ「さぁ、一人ずつ破壊神じきじきに相手をしてやろう!」怪物はおぞましい声で言った。

3人は相手の挑発に乗ってしまい、3つの顔それぞれの前にばらけて立ち構えるのだった。

ロ「行くぞ!」

ローレは一貫して勇気を失わなかった。まずは自分が率先して得体のしれない怪物に斬り込んでいくのだった。破壊神シドーに53のダメージ!

ロ「て、手ごたえが薄い!」ローレは表情を曇らせた。

破壊神シドーは反撃に出た!

なんと、最も虚弱なムーンに、しかも彼女の喉元めがけて手刀を突き出した!ムーンは68のダメージ!

ム「がはっ!!」

ムーンは大声で何かを叫ぶが、しかしローレやサマルには何も聞こえない!

サ「まさか!?魔法を遮るためにノドを潰したのか!」

思わずサマルの両の瞳からは涙が溢れ出した。

サ「この野郎ーーー!!」サマルは自分に面した怪物のボディに剣を振りかざした!シドーに20のダメージ!

ロ「やはり剣での攻撃など無力なのか!?やはり魔法がすべての鍵を握るのか!?」ローレは急に、自分が無力な生き物に感じて怯みはじめてしまった。


ノドを打たれたムーンは絶望を感じて膝から崩れ落ちていた。

ム「(こんなにも呆気なく、足手まといに成り果てるのか!?)」

ムーンの瞳を大粒の涙が流れる。ムーンは眼前の現実から目を反らすように瞳を閉じた。

そのときだった!

ムーンのまぶたの裏に、紫色の龍が姿を見せた!

龍「ムーンよ。ムーンブルクの民がそなたに贈った言葉を思い出しなさい。なぜ民は皆が自らを犠牲にしてでもあなたの命を守ったのか?」

ム「…!!龍だ!」しかし感動に耽っている場合ではない。

民が私に贈った言葉?

ムーンは必至に思い出そうとした。城の者との思い出が走馬灯のように駆け巡り、城が襲撃されたときの残酷な情景がその最後を締めくくった。

「あなたは希望の光です!」

いいえ!私は巨大な怪物の前に無力な女!!

龍「ムーンよ。あなたはその時何を思ったのか?思い出しなさい」

ム「…!!


 (私は…、私は…、希望の光なんかじゃない。

 だけど私は…、私は…、

 希望の光にならなくてはいけない!!!!)」


ムーンは大粒の涙を流し、それでもしっかと立ち上がった!杖を構え、勇ましく臨戦態勢をとった!


シドーの攻撃!ローレに66のダメージ!

シドーの攻撃!サマルに81のダメージ!

ローレ、サマル、ムーンはそれぞれ、自分の目の前の体躯以外に目を配る余裕が無かった!


痛手を負ったムーンは怯まない!

しかしイオナズンを連発する魔力はもう彼女に残されていなかった!

ム「(あきらめない!あきらめない!

 どうする?イオナズンが撃てないなら何が出来る!?)」

ム「…!!」

ム「%&*##△*!!」ムーンは一か八か、何かを叫んだ!

言葉に達しない音がムーンの口から洩れる!

痛めたノドにさらに痛みが走る!ムーンは慣れない痛みに顔を歪める!

しかし…!

シドーの守備力が下がった!!

ム「(効いたわ!ノドが潰れても魔法が使える!)」

しかし守備力の低下にローレやサマルは気づかない!

ムーンは叫んで伝えようとするが、まともな言葉は口を出ない!


ローレもサマルもファイティングポーズを崩さないが、でも動揺や怯みに襲われていた。そしてこの極限の状況で、何をどうしていいかわからない。いつもの冷静な頭脳は上手く働かないのだった。

防御するか、HPを回復するか、攻め込まれる状況に対して反射的に動くことしかできずにいた。

ミ「ローレ様!!ローレ様!!」ミユキは懸命にベホイミを飛ばした!ローレのHPは回復しているが、ローレの受け身な戦いは回復しない。

サマルはやはり、攻め込まれる傷を回復しながら、《マヌーサ》や《マホトーン》など搦め手を試す技巧的な手段に傾倒するのだった。魔法にせよ打撃にせよ自分は主力になり得ない。その性質をわきまえていた。

そうこうしている間に《ルカニ》の効果は消滅してしまうのだった。

ムーンは再び《ルカニ》の呪文を放った!シドーの守備力が下がった!

ム「(お願い!気づいて!二人の剣は通るわ!!)」


しかし同じことが繰り返された。

ローレは防戦に偏り、歯を食いしばって防御をしては回復に回る。

ロ「ムーン!魔法を撃てないのか!どうにか《イオナズン》を撃てないのか!最後は魔法が鍵を握るんだ!」そう思い込んだままでいた。

サマルも同様に、同じことを繰り返していた。防御をし、回復をしては、弱体化魔法が効かないか試みる。時々ダメ元で剣で斬りつけては、その小さなダメージに自分が無力だと思い出す。


ロ「だめだ!このまま押し切られる!!」

冷静になろうと自分を律し、頭で考えれば考えるほどこのルーチンではジリ貧になる未来しか見えないのだった。

ロ「だめだ…!!」

ローレが闘志を失いかけ、目を閉じたその瞬間…


ローレのまぶたの裏に、再び赤色の龍が姿を見せた!

龍「ローレよ。まだ戦いは終わっていない。

 サマルがあなたに最初に贈った褒め言葉を思い出しなさい」

ロ「…!!龍だ!!」

ローレは瞳に力を取り戻した。

サマルからの最初の褒め言葉…!?

ローレの脳裏に、この長い壮絶な旅が逆回転で蘇っていった。テロスを経て、グビアナを経て、エンドールを経て…

サマルからの最初の褒め言葉!?なんだそれは!?

幾つかの褒め言葉を貰った記憶はあるが、最初が何であったか思い出せない。

修道院を経て、サマンオサを経て、ムーンブルクを経て…

…!!

もしかして…!?

サマルと出会った勇者の泉のことを思い出した。


サ「タイマンで戦ったら君が世界一だろうけどね」


!!!

そうだ!僕はこの腕力と勇気で戦うことを心に誓ってここまで来たんだ!!


ローレの体に闘志が漲り戻った!

駄目で元々、一か八か、とにかく飛び込んでいくしかない!

ローレは守りを捨てて攻撃に転じた!

ロ「うぉぉぉぉぉーーーー!!!」シドーに156のダメージ!

ロ「通る!ダメージが通るぞ!どうなってんだ!」


ローレの大声となりふり構わぬ特攻がサマルの目に映った!

そうだ!あれがローレだ!

じゃぁ僕は何だ!

サマルは近視眼的状況から目を覚ました。1歩、2歩3歩後ろに引いて静かに構えた!

そして自慢の《はやぶさの剣》を華麗にぶん回した!

少々のダメージと衝撃派がシドーを襲う!サマルと面していないシドーの体躯も、不意打ちを喰らったように少し怯んだ!

破壊神シドーの攻撃の手が緩まる!


ム「良かった!戦況が変わったわ…!!」

ムーンは《ベホイミ》を唱え、そして《ルカニ》を放った!

ローレはすべての恐れを、計算を捨てて、思いきり斬りかかった!

サマルは仲間や自分を回復しつつ、《なぎ払い》で相手の動きを鈍らせた!

ミユキは戦況を見ながら巧みに3人に回復魔法を放った!

形勢が変わってきた!破壊神シドーは3人の小さな人間の攻撃に押されている!いいやまだ五分五分か?しかし着実にダメージが蓄積している!


数ターンを重ねた後…

肩で呼吸をしはじめたシドーはついに、大きく跳び下がって戦況の仕切り直しを図った。

「追いつめてるぞ!」と3人が気を緩めたその瞬間…!!



『転生したらローレシアのメイドさんだった件』

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