episode11 『王と悟り』
- 8月19日
- 読了時間: 5分
更新日:8月29日
episode11

何か人と話をしたいものだ。
商売をする者なら愛想が良いだろう、とソロは考えた。
キョロキョロしながら歩くと、武器屋の看板が見えた。中に入ってみる。
ソ「あのう」
武「へっへっへ。見ない顔だな。
女を買いに来たのか?」
ソ「え?」
武「なんだ、違うのか」
ソ「北の教会の神父さんに、用事があるのですが」
武「なんだ、買いに来たんじゃなくて売りに来たのか」
ソ「え?」
武「おっとスマン」武器屋はそれ以上何も言わない。
話が読めないが、神父は何か悪どいことに手を染めている匂いはする。
ソロは武器屋の品ぞろえを眺めた。色々あって興味深いが、マイエラの武器屋よりもやはり質が悪い気がする。1つ2つ、手にとって眺めてみる。
武「武器が欲しいのか?まぁ《銅の剣》なんて早く買い替えたほうがいいな」
ソ「そうなんですか?」
武「《銅の剣》なんて重たいばっかりで、脆い廉価品だからな。すぐに切れ味が悪くなっちまう。初心者がとりあえず持つだけのもんだよ。
これなんかどうだ?」
武器屋は《くさりがま》を差し出して言った。物騒な形の武器だ。

ソ「幾らですか?これ」歓迎も拒絶も見せないように、努めて言った。
武「600ゴールドだ。まぁまぁの質だろ。へっへっへ」
急に6倍もの値段だが、買えなくもない。こういうのを振り回して戦うのも、面白そうではある。しかし・・・船着き場の露店がそうであったように、ボッタクリ価格で吹っ掛けてくる武器屋がいるのでは?とソロは察した。あぁ、マイエラの武器屋で幾つか値段を聞いてくればよかった。
ソ「ちょっと高いなぁ」とソロは言葉を選んだ。「ボッタクるなよ、という意味にとれなくもなく、そんな予算はない、という意味にもとれる」ように。いきなり口論をしたくはない。
武「じゃぁこれだ。《青銅の剣》がいい。」
《銅の剣》よりも一回り小ぶりな剣だ。振りやすそうだ。状態も悪くない。
ソ「これは幾らです?」
武「500ゴールドだ」
ソ「ふうん。あぁ、どのみち僕、ゴールドを持ってないんだった!両替えしてこなくちゃ!」
武「なんだい!
両替え屋なら戻って左に曲がってまっすぐだ」
ソ「どうも」
武「明日までは取り置きしておいてやるよ。それ以降は売っちまうかもしれないからな!恨むなよ!」
厚意で言っているのか何なのか、よくわからない。ハラハラする。
どのみち本当に両替え商に行く必要がある、と思った。
武器屋の言うとおりに道を戻ってみる。
すると、両替え屋に辿り着く前に人を見つけた。兵士のような鎧を身に付け、精悍な顔立ちをしている。ここの住人ではなく冒険者か。
ソ「あのう!」ソロは声をかけてみる。
男「おう」
ソ「冒険者ですか?」
男「まぁそうだな」
ソ「ここの住人ではないですよね?」
男「住人じゃないよ。なんで来たのかって?聞くなよなでへへへ」
風俗目的という意味だろうか、それはまぁいい。
ソ「ここの勝手がよくわからないもんで。えへへ。
住人じゃない人のほうが信頼できると思って話しかけたんです」
男「あぁ、そうか!」
ソ「《くさりがま》って幾らですか?」
男「350だろ?」
ソ「あぁやっぱり!
そこの武器屋に600って言われたんです。ボッタクリじゃないかと思って!」
男「ははは!ここはスラム街だからな!吹っ掛けてくる奴が多いから気を付けろよ」
ソ「《青銅の剣》っていうやつは?」
男「なぁ、メシでも食いながら話さないか?俺お腹減ってんだ。安い食堂知ってるからさ」
ソ「着いていきます!」
冒険者風情の男は、町の外れの食堂にソロを連れ立った。
男「おっちゃん、ラーメン1つ!」
ソ「幾らですか?」
男「1ゴールドだよ」
ソ「良かった!僕も同じのください!」
男「へっへっへ。俺はゴンザレス。お前は?」
ソ「ソロっていいます」
ゴ「何しに来たんだ?こんなところに」
ソ「えへへ。よくわかりません」
ゴ「はぁ?頭でも打ったのかよ?」
ソ「いえ元気ですよ。
親戚に頼まれて、北の教会の神父さんに届け物に来たんですが・・・」
ゴ「なんだよ!運び屋かよ!」
ソ「検問で没収されちゃって」
ゴ「なんだよ!お前ワルだな!」
ソ「いやぁ僕、麻薬だってわからず引き受けちゃったんですよ。まさか親戚からそんなこと引き受けるなんて」
ゴ「はっはっは!
お前さわやかすぎるからな!見ててハラハラするぜ」
ソ「警戒心持ってやってるつもりなんですけどね」
ゴ「ここはスラム街だ。
用事のない店に無暗に入るなよ?吹っ掛けられるからな」
ソ「それなのになんで人が来るんですか?」
ゴ「そりゃまぁ、ここでしか手に入らないようなもんもあるからだろ?でっへっへ。
おっちゃん!牛肉ラーメンもう1つ!」
ソ「娼婦とか?」
ゴ「バカ!でけぇ声で言うなよ!」
ソ「娼婦なんてどこでも買えるんじゃないですか?」
ゴ「ここは幼い子が買えるからな。それに相場が安いだろ。それで病みつきになる奴が多いってわけだよ。
お前は女買いに来たわけじゃないのか?」
ソ「病気を移されそうですよ」
ゴ「そこは気合だよ!がっはっはは!」
ソ「ふうん」
ゴ「あぁ、薬中な奴もいるから気を付けろよ!」
ソ「それって娼婦のこと?この町の住人のこと?」
ゴ「あぁどっちもだ。この町の住人はラリってるヤツもいる。余所者だってラリってるヤツいるからな!頼もしいとは限らねぇぞ。
他に、聞いておきたいことは?」
ソ「あぁ、両替え屋ってどこですか?」
ゴ「引き返すんだな。さっき俺らが出会ったところをまっすぐ行けばあるよ。
でも両替えもあまりやらないほうがいいぜ?両替えもボるからな」
ソ「やっぱりそうか!」
ゴ「飯は1食1ゴールドや2ゴールドの店が幾つかある。見つからなければここまで来い。
宿は相部屋でいいなら3ゴールドで足りる。だから生真面目くんならそんなにカネ掛からねぇよ」
ソ「よくよく見てみることにします。
あと、北の教会っていうのはどこですか?」
ゴ「町をずーっと奥に行って、町はずれにあるよ。
お前ブツを没収されたのにまだ教会行くのかよ?」
ソ「あはは。なんか神父さん悪い人っぽいから、好奇心っていうかなんていうか」
ゴ「触らぬ神に祟りなしだぜ!」
ソ「神なんて何のご利益もくれませんからね。すると祟りもないんじゃないですか?あははは!」
なかなか面白い話が聞けたが、ゴンザレスとも別れて北の教会を目指す。
キョロキョロしながら路地を分け入っていく。物騒だが、眺めて歩くのは面白くもある。
すると・・・
「おにーぃさん♡」
ソ「うん?」



