episode12 『王と悟り』
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episode12
角から少女がこちらを見ている。
「おにーぃさん♡うふふふふ!」
大きな瞳をした可愛らしい女の子だ。12歳か13歳に見える。「おにいさん」しか言わないが、これが娼婦なのだろう。
ソ「可愛いなおい!」
「私はクラリス。うふふふふ♡」少女はいたずらっぽく角に身を隠す。
こんなに可愛らしい女の子が身を売っているとは思わなかった。これは中毒者が出るのも頷ける。しかしソロは懸命に誘惑を振り切った。
集落のはずれに教会はあった。教会によくある大きな尖塔を持ち、教会のマークが打たれているのだからわかる。
ギィィィィ!大きな扉を開ける。
ソ「お邪魔しま・・・」
ワンワンワン!!!
なんと、扉を開けるや否や、中から犬が大きな声で吠え掛かってきた!こちらへ向かって突進してくる!
ソ「うわー!!」ソロは不意のことに慌てる。
「どなたかね」遅れて人の声がした。
ワンワンワン!!!
ソ「ご、ごめんなさい!怪しいものではないんです!」
神「あぁ、わかっているとも。
私はここの神父だ。
レオパルドや、吠えるのをやめなさい」
神父が言葉を強めると、犬は吠えるのをやめた。
神「こちらまで来なさい」神父は礼拝堂の奥の控え室までソロを誘い込んだ。
ソ「あ、はい」
神「レオパルド、お前はそっちにいなさい」
犬は礼拝堂側に締め出された。
神「干し肉とワインしかないが、勘弁してほしい」
ソ「いえおかまいなく。お酒は飲めないですしね」
神「ほお。変わった賊だ」
ソ「いやだなぁ、賊じゃないですってば!怪しい者じゃないですよ」
神「なに?いや、賊とはかぎらんな。失礼。
して・・・?」
ソ「あのう、神父さん。
何か悪いことをしていませんか?」
神「な、何を言うんだね!」
ソ「えぇと、どこから話せばいいんだろう。
ここはスラム街ですけど、どうしてこんなところにいるんですか?」
神「それは、人を導くためだよ」
ソ「誰も礼拝には来ていませんね」
神「そんなことはない。人が来ることもある」
ソ「麻薬を売りに来る人でしょう?」
神「な、なに!
いや、そなたも売人であろう?」
ソ「いや、ホンダラ叔父さんに頼まれて麻薬を持ってきたは持ってきたんですが・・・検問で没収されてしまいましたよ」
神「!?そなた、先から何をそんなにのらりくらりしゃべっているのだ?
何か駆け引きを企んでいるな?
上玉の女が欲しいのか?」
ソ「売春にも関与しているのですか!」
神「はっ!待て待て!私は何も言っておらん。
そなた・・・麻薬を売りにきたのであろう?私とそなたは共謀者のはず」
ソ「だから、麻薬は没収されちゃったんです。100万円まで罰金されちゃったんですよ」
神「だから嘘をつくな!麻薬を持っているはずだ!」
ソ「何を言っているんですか?」なぜそんな決めつけを言うのだ?
神「あの犬が、いや、」
麻薬探知犬の類か!ソロは察した。
神「私に逆らうつもりなのか?場合によっては力づくでブツを奪うが」
ソ「えぇ?争いはしたくないのですが」
神「ではそのカバンを見せるんだ」
ソ「えぇ、別にいいですけど」ソロはカバンを神父に差し出した。
神父はがさごそとカバンの中身を放り出す。小さなナイフ、下着、手ぬぐい・・・当然ながらあの小袋はもうない。底にあった大きな封筒に手がかかる。
ソ「それは大事な旅費なんです。人に触られたくないんですが、いいですか」
神「いいだろう。自分で中を示してみたまえ」
ソロは旅費の封筒を自分で開き、お札しか入っていないことをばらばらと見せ示した。
神「もう1つ封筒があるぞ」
ソ「え?」何かあったかな。
神「なんだこれは?」
ソ「あぁー!ホンダラさんから貰ったお小遣いだ!それも旅費ですよ」
神父はしかし、今度は自分でその封筒を開きはじめた。
神「おぉやはり!」
ソ「えぇ!?」
なんとその封筒には、小さな平べったい薬の包装紙にくるまったわずかな白い粉が入っていた!
ソ「うわぁ、気付かなかった!」ホンダラはどうやら、麻薬がどこかで没収されることすら読み切っていたらしい!
神「まぁよい、この量でも悪くはないのだ。手伝いご苦労」
ソ「ちょっと待ってよ!
それを渡すとは言ってません」
神「何?」
ソ「僕は麻薬だなんて知らずにお使いを頼まれただけなんです。そんな悪いことに加担したくはないです」
神「しかし貴様は叔父とやらから報酬を貰ったのだろう?それで仕事を放棄するのか?神の怒りを買うぞ?」
ソ「あははははこんなときばっかり神の名で威嚇するんですね!自分も悪いことしてるのに。
今さら叔父さんとの約束なんてどうでもいいことですよ。社会的に大きな問題を真の当たりにしてるんです。こっちを放ってはおけないですよ」
神「貴様、権力に盾突くのか!」
ソ「まぁ慣れっこなんですよ。お偉いさんに噛みつくなんて。あははは。
ケンカする気もないですけどね。神父さんに麻薬の取引とか吸引とか、あとは売春とかもやめさせなきゃですよ。または神父さんに変装してる賊なのかな?」
神「無礼者め!私は20年来の神父である!」
ソ「気張るとこの焦点間違ってますよ。あははは。威嚇なら僕には通じませんよ。あんまり」
神「私を敵に回すと、無数の牙が貴様に向くんだぞ!」
ソ「それは困ったけど・・・。どうしたもんかなぁ」
神「仮に私を殺したところで、ロンガデセオの腐敗は止まらない。世界の腐敗も止まらない。それなら快楽の側に乗じたほうが得策というものではないか?」
ソ「うーん。場合によっちゃそうなのかもしれない」
神「剣を収めるんだ。ここで見たことは忘れるんだ。
女を10も仲介してやろう。上玉ばかりだ」
ソ「この町に警察なんていないんですよね?居ても腐敗してるか。
はぁあ。それなら他にないよなぁ。
はぁあ。人を斬りたくなんてないんだけど・・・
きっと、仕方ないことなんです。そんなに色々抱えてるのなら」
ザシュっ!
ブルブルブル・・・。救いようもない悪人であることはわかっているが、人を殺めた自分に強烈な身震いを感じるソロだった。しかし幸か不幸か、その辛い感情に浸り続けることを妨げるものがあった。
ドンドンドン!ドンドンドン!
どこからか壁など叩く音がする
ソ「え!?」ソロは周囲を見渡した。
ソ「あれか!」控室の奥に小さな木戸がある。生活品の倉庫か。外から錠が掛けられている。ソロが錠を開けると・・・



