episode17 『王と悟り』
- 45 分前
- 読了時間: 6分
episode17
武器屋に行ってみると、そこにいたのは、なんとクレアだった!
行きの豪華客船の中で話し込んだ、スパンコールのドレスを着たセレブ女性だ。

ソ「クレアさん・・・!!」
ク「まぁ!やっと出会えたわ!ソロ!!」
クレアはソロに抱き着いてくる。
ソ「ちょ、ちょっと!どうしたんですか!」
ク「あぁごめんなさい。あんまりにも嬉しくって!
まさかあなたを本当に見つけられるなんて!!私ってば天才なのよ!」
ソ「どうなってるんですか!あのスーツの恋人は?」
ソロはクレアの後ろを見渡した。
ク「いないわ、彼は。船で別れてきたんだもの!」
ソ「えー!!」クレアの後ろにはごつい男性がいる。用心棒であるようだ。
ク「座れるところに行きましょう。表のホテルに部屋を取っているの。応接間でカクテルでも飲みながら」
カクテルは飲まないが、クレアのホテルに着いていくことにした。
ソ「こ、この人は?」
ク「お金で雇った用心棒よ。彼氏とかじゃ全然ないの」
クレアが泊っているのは、例の50ゴールドのお高いホテルだった。
ソ「あぁ、ここか」
ク「知ってるの?」
ソ「いいや全然。僕は向こうの3ゴールドの宿ですから。
それよりクレアさんの話を聞くべきですよ!」
ク「そうね。うふふ!ぜひ聞いてほしいの!」
2人はホテルの応接間に座り込んだ。
ク「あなたと別れた夜のこと、覚えてる?」
用「へぇへぇ」用心棒は嫉妬がましく溜め息をついた。
ソ「ちょっと!変な言い方しないでくださいよ」えぇと・・・、ソロは最初の日の晩のことを懸命に頭の記憶から引っ張りだしてきた。まだ4日しか経っていないが、すでに遠い昔のことのように思える・・・。
ク「鉢合わせたスイートルームで、彼はあなたのことを突き飛ばしたわ」
用「へぇへぇ」用心棒は嫌味ったらしく鼻くそをほじっている。
ソ「もう!言い方がなんかいちいちロマンチックで誤解を招きます!」
ク「彼が失礼なことをしてごめんなさい。まずは謝りたいの」
ソ「いえ、全然気にしていないです」
ク「朝起きて、懲りずにまた3等室に行ったの。そしたらあなたはもういなかった・・・。
私、そこで絶望を感じたわ。それで自分の気持ちに気づいたの。
私が行きたいのはもうアンチローブじゃない!
ソロと一緒に土の神殿に行きたいんだわって!」
ソ「えぇー!?」
ク「それにもう1つ気づいたの。
私別に、あの人に貢いでもらわなくたって、自分のお金で海外旅行が出来るわ。お金なんて幾らでも持ってるのよ。
そのことに気づいたら、なんだか勇気が湧いてきたの」
ソ「はぁ」
ク「それで私、彼に別れを切り出したの。もう決めましたって。ソロの名前は出さなかったわ。『あなたとはもう価値観が合わない』って、そう言ったの。
それで、次のオストラっていう国で船を降りたの。一人でよ!
すごいと思わない!?」
ソ「す、すごいですね」
ク「すごいでしょ!?あなたと同じようにすごいでしょ!?」
ソ「は、はぁ」
ク「それでね、すぐにマイエラ港に引き返す船に乗ったの。
もうハラハラのドキドキだったわ!
だって船着き場に降りたら、『武器がなきゃこの大陸は歩けない』って言われるんだもの!」
ソ「そうですよ。ただの旅行者じゃ歩けない土地なんです。クレアさん、武器を買ったんですか?」
ク「武器なんて持てないんだから!だから用心棒を雇ったの。馬車に乗せてくれて、魔物が出れば蹴散らしてくれるのよ」
ソ「あぁ良かった」
ク「この広い大陸で、あなたを見つけるなんて絶望的だと思ったわ。一人で陸に降り立つと、なぜだか世界はとても広く見えるものなの。
でもね、どうにか達成できると思ったの。
だって船着き場の人はあなたの目撃情報を持っていたから。それにあなたが土の遺跡に行きたいことを、私は知ってる」
ソ「それにしたって・・・」
ク「マイエラに行ったら、あなたは北に行ったようだと聞いたわ。
でも北に行ったら、検問で突っぱねられてしまったの。危ないからロンガデセオに入れることは出来ないって。ロンガデセオは売春で有名なスラム街っていうじゃない。あなたがそんな町に行くはずがないわ。私は推理を働かせたの。
それじゃぁどこに行った?
あぁ、遺跡が好きって言ってたわ!遺跡のあるところ!そしたら遺跡観光で有名なイムルの村だろうって情報を貰ったの。思った通りだったわ!私って天才!」
ソ「なるほど。およそ一直線にここまで来たのですね。す、すごいな」
ク「ここも結構広い村だけど、でもきっと土産屋でも服屋でもなくて、あなたなら武器屋に立ち寄るかもって考えたの。正解だったわ!武器屋があなたを知っていた!」
ソ「何気ない行動がこんなことに繋がっていくとは・・・」
ク「ねぇ、私とあなたは運命よ!」
ソ「え?」
ク「あなたは一文無しになったって聞いたわ。なんて可哀そうなこと!
でも、でも私ならあなたを助けてあげられる!!」
ソ「えぇ?」
ク「ソロ!旅費は私が出します。私と一緒に遥か長い旅をしましょう!
2人で一緒に土の神殿まで行きましょう!
赤い土の神殿を越えても、それでもまだ遠くまで、手をつないで行きましょう!」
クレアは詩人のように雄弁に語り、そして「これでもか!」と言わんばかりにソロの手を両手で握った。一世一代の口説き文句であった。
しかし・・・
ソ「ご、ごめんなさい。一緒には行けないや」
ク「えぇぇ!!どうして!?
一文無しのあなたには私が必要よ!!」
ソ「そんなこともないんです。
魔物を倒せばお金が手に入るから。だから3ゴールドくらいはすぐに稼げるんです」
ク「でも私なら50ゴールドのホテルにだって泊まらせてあげられる!もっと高いホテルだっていいのよ!
それに、もう戦いなんてしなくたって、馬車を私が雇ってあげる!」
ソ「ははは。そこが違うんです。目的が、違うんですよ」
ク「えぇ?私も一緒に赤い神殿に行くわ!その先だって!」
ソ「僕はね?クレアさん。
お金が幾らあったって、それでも3ゴールドの安宿に泊まりたいんです。
豪華な応接間でカクテルを飲むんじゃなくて、薄暗い宿の絨毯でボロい本を読むんです。
そして自分で戦いながら、一歩一歩地を踏みしめて行きたいんです。
同じことが・・・クレアさんにも出来ますか?」
ク「でき・・・・・・
・・・ない・・・わ」
ソ「そうでしょう?
ここで『できる』と言うなら、同行の試みも検討しました。でも出来ないと言ってしまうなら、一緒に旅はできません」
ク「そんな・・・」
ソ「僕は、あなたの豪華な旅行に付きあうことは出来ないです。少なくとも今は。あと1年か2年か、この素朴な旅に満足するまでは」
ク「そう・・・なの・・・」クレアは茫然と肩を落とした。
ソ「ごめんなさいね」
ク「この私に手に入らないものがあるなんて・・・。
お金で買えないものがあるなんて・・・」
セレブは、自分が一番魅力的だと思っている傾向がある。テレビや舞台に立つ人間が最も魅力的だと。
大衆はそれに魅了され、賞賛するのも事実だ。しかし全ての人間がセレブを一番好いているわけでもない。「カッコいい!」「大好き!」という言葉を叫ぶためのアイコンとして、そういう役割分担としてセレブを捉えている。



