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episode20 『王と悟り』

  • 1 時間前
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episode20

ラノベ『王と悟り』ノーラ
ノーラ

ソロとノーラの会話は続く。

ソ「それで、マーディラスに来たばかりってこと?ここで次にどうするの?お節介かもしれないけど、未成年の子は放ってはおけないような」

ノ「えぇ、お城の王宮魔術師に採用してもらいたいと思っています。そしたら住む場所も手に入るし、暮らしていけるので」

ソ「すごっ!でもそれってハードル高いんじゃないの?」

ノ「《ベギラマ》が使えれば最低限の条件は満たしていると聞きました。中級魔法が使えれば。でも他にも条件が色々あるみたいで、今対策を練っているところです。王様に気に入られたりとか、色々必要なんです」

ソ「それで城下町に滞在しながら様子を伺っているってことか!

 外に出て魔物も倒せるし、3ゴールドの安宿で暮らせるし、あまり心配も要らないんだね」

ノ「安宿にももう慣れました。なんでも慣れるものです。

 お城のお触れをこなせばまとまった報酬が貰えたりもしますし」

ソ「ふうん。ちょっと安心したよ」


修「ねぇ!ついに王子様まで脱輪事故にあったらしいわよ!」

修「へぇー、物騒ね!」

近くのテーブルに座る修道女たちがそんな話をしている。さっきの王子様の事件のことだろうか。

「ついに」ということは同じような事件が重なったのか?



ノ「えぇと、お名前なんでしたっけ?ソロさん?

 私、人の名前を覚えるのが苦手なのです。あまり興味がないので」

ソ「そ、ソロで合ってるけど。ははは」

ノ「じゃぁ私、もう行きますね」

ソ「あぁ、どうもありがとう」


ソロは、マーディラスにもしばらく滞在しようと思った。2週間も掛けて遥々来た街だから、というのもあるし、同じ宿の中に修道女の姿がある、というのが心地よかった。

修道女の清楚ないでたちは好感が持てる。とても上品に「ごきげんよう」と従業員に挨拶したかと思えば、食堂では学生のようにキャッキャと喋っている。そのギャップが可愛らしい。

時には話し掛けてもみる。ソロは年頃の女性にはあまり自分から話し掛けないが、やはり修道女と会話をしてみたい。同宿者ならそう失礼な行為でもないだろう。

なんでも彼女たちは、巡礼という修行の目的で方々からマーディラスに来ている。この宿は冒険者というよりも、元々はそんな健気な巡礼者たちに手を差し伸べるために、昔から安い宿をやっているのだった。信仰の修行のために、命の危険を冒してわざわざ遠い町から旅をする。崇高なものである。彼女たちは武器をとって魔物と戦うという!

巡礼者の中には、馬車を雇って安全に旅をするお金持ちもいる。しかし裕福でない女性たちは、苦しみながらも自力で巡礼修行を行う。彼女たちにとってこうした安宿は救世主だ。

冒険者も巡礼者も、同じことを思っている。

かと思えば、マーディラスに来ると華やかな街を歩いて周ったり、可愛いブローチを買ったり、歌劇の舞台を見たりすることも楽しむと言う。乙女は修道女でも乙女なのだ。


マーディラスは多面的な特徴を持つ。由緒ある王都にして巡礼のメッカでありながら、人々はひっそりと様々なものを享受しながらこの街を行き交う。

面白いな、とソロは思った。人間の多面性がここにはある。特にこの安宿の中に。



街を歩いた。武器屋を見つけたので入ってみる。

兵士の多い城下町らしく、シルバーに輝く立派な剣がたくさん並んでいる。

ソロの目に1つの剣が留まった。《はがねの剣》だ。兵士たちがよく持っていた。一人前の証、という感じがする。値段を見ると、1,500ゴールド。

ソ「もう少しで買えそうだぞ!」ソロがこの街に滞在しようと思った要因の1つだ。


さらに歩いていると、妙な家を見つける。「魔法研究所」と表札が掛かっている。これはまた興味深い!

ソロは中を覗いてみる。

ソ「こんにちはー」

男「なんだね」気難しそうな男が実験器具の前でメモを取っている。「城からの遣いか?」

ソ「旅の者なのですが、見学してもいいですか?」

男「旅の者だと?」

ソ「えぇ。魔法っていうのは僕の国では珍しいものなんです。お邪魔しないようにしますから」

男「好きにしたまえ」

壁一面が本棚になっており、多くの本が並んでいる。

ソ「読んでもいいですか?」

男「講演を求められるよりは助かる」

気難しい人のようだが、悪い人でもないようだ。


ソ「うわぁー」聞いたこともない専門用語がずらりと並んでいる。もはやまったく手に負えない。

何か理解できそうなものはないか?熱心に背表紙を眺めた。

『瞬間移動の魔法』興味深い本だ!


瞬間移動の魔法《ルーラ》。それは遥か昔、ここマーディラスの魔法研究者によって発掘された。第一次マーディラスの繁栄はその賜物だった。

しかし《ルーラ》は、マーディラスによって封印されてしまった。ここは巡礼のメッカ。巡礼者が《ルーラ》を習得し、苦も無くあちこちの巡礼地を踏んでも意味がないのだ。聖地巡礼とはスタンプラリーではない。悩み苦しみながらさすらうことに意味がある。

時のブライ司教は、人々の批判を受けながらも《ルーラ》の魔法を封印した。

それから《ルーラ》は伝説の魔法の1つとなり、特殊な人間しか使えなくなった。

ブライ司教は宗教信仰の堕落を食い止めたのだが、それはあまり理解されなかった・・・。



ブライ司教はどうなったのだろうか?ソロはこういう人物が好きだ。

何か足跡が残ってはいないかと、教会を覗いてみる。

マーディラスの教会はとても大きく、「大聖堂」と呼ばれていた。それは教会と同じ意味で、教会のとても大きなものを指す。

天井が高く、聖堂は広く、感嘆の声も足音もよく響くので静かにしていなくてはいけない。

そしてこの教会は、祈りの場というよりは美術館だった!

たくさんの大きな立派な絵が飾られており、たくさんの彫刻がある。内装自体も芸術的な装飾の施されたものが多く、正面にはひと際立派なメシアの像が祀られていた。

こういう教会を以前本で見たことがあったが、実際に目の当たりにすると本当に驚かされる!祈り場というよりも、美術館として!

大きな窓ガラスが壁面に並んでおり、それはカラフルに光っている。ステンドグラスだ。ステンドグラスはそれぞれに、誰か立派な人間が描かれていた。宗教聖人というやつだ。

ソロは礼拝に来た住民を捕まえて尋ねてみた。

ソ「ブライ司教の絵はどれですか?」

しかし、

男「ブライ?ブライって誰だね?」

なんと、名前すら知られていないようだ!

今度は雑用をする修道士に尋ねてみた。

ソ「ブライ司教の絵はどれですか?」

修「ブライ司教ですか?ブライ司教の絵というのは特にありませんよ。どこかの本を漁れば肖像画の1つもあるかもしれませんが・・・」

ソ「あぁ、そうなのですか」

やはりブライ司教という人間は、あまり国の貢献者として崇められてはいないようだ。

まぁいいか、美術鑑賞は楽しかった。

教会の中で、手を合わせもせず美術ばかり眺めているのは失礼かな、という気もしたが、あちこちの国から訪れる様々な衣服の人たちの中にも、ソロのように絵や彫刻を眺めて小声で唸っている人は数多くいた。もはや、芸術を見るために遥々やってきた人すらいそうなほどだ。

教会という場所は不思議だなと思った。多面的な存在である。



マーディラスにやってきて、まだ数時間である。

新しい街に訪れたときの1日目は、すさまじく時間が長く感じる。目や耳や、脳から吸収する事物の量が膨大だからだ。この感覚が面白い。

旅というのは、どこの街が面白いというものではなくて、次々と新しいものを目耳にする変化の塊りのような環境が、面白いのだ。



夕食は街の食堂で摂ったが、宿の居間で食後のジュースを飲んだ。

ここにも本棚がある。ソロは本を探す。


『古の勇者ローシュの旅日記~マーディラス編~』


オレはルーラ係じゃないっ!


ソ「ぷぷぷ」

急に《ルーラ》が使えなくなったマーディラスの民の誰彼に、あちこちへの同行を依頼されまくったのだろうか。

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