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episode22 『王と悟り』

  • 1 時間前
  • 読了時間: 8分

episode22


戦い疲れて、日暮れと同時にマーディラスの街に戻ってきた。

汗を洗い流し、宿屋の食堂でご飯を食べている。

すると、ノーラが上階から降りてきた。ソロのテーブルの前に立つ。

ノーラ 『王と悟り』
ノーラ

ソ「お?」

ノ「落ちてしまいました。王宮魔術師の面接・・・」

ソ「そっか。残念だったね。やっぱり9歳にはむ」

ノ「ソロさん、もう1度買い物に付きあってくれませんか?やはり丈の短いスカートを」

ソ「ストーップ!ノーラちゃん、ドレスの買い物は要らないよ。

 服装の問題ではないと思うんだ。仮にミニスカートを履くことで受かるなら・・・そんな城には就職すべきじゃないよ。暮らすべきじゃない」

ノ「・・・・・・」ノーラは目にうっすらと涙を浮かべている。

ノ「良いのです。私もドレスを着てお城で暮らしたいです」

ソ「可愛い服も好きなのかもしれないけどさ。

 それに、立派な魔法が使えるなら雇われ口はたくさんあるかも?」

ノ「住所はどこだ?親の職業は何だ?と聞かれます」

ソ「・・・!居場所がないのか・・・」

ノ「ひっく・・・信頼される宮仕えにならないと!・・・うぐっ・・・」

ソ「わかった!王宮魔術師の面接対策をしよう!

 きっとさ、何かお城の信頼を得ればいいんだ。強さや勇気を証明したり・・・」

ノ「お城のお触れは幾つかこなしてきました。それは面接でも言いました」

ソ「そっか。

 何か王様やお貴族さんの助けになることが出来ればなぁ」

ノ「うぐっ・・・」

ソ「何か考えようよ。僕、しばらくこの街にいるんだ。立派な剣を買いたくてさ。

 ベッドに入ってからも何かアイデア考えるよ」

ノ「ありがとうございます」


親子ではなさそうな成人男性と女の子が1つのテーブルで話し込んでいる。はたから見れば奇妙な光景である。

修道女や宿泊客たちは、奇異の目で2人を見ている。

ソ「あ、あのさぁ。

 男の人じゃなくて、修道女さんとかに話しかけたらいいんじゃない?」

ノ「迷惑ですか?」

ソ「い、いや、迷惑とかじゃないんだけど、女の子は女の子とおしゃべりしてるのが自然かなぁって」

ノ「巡礼の人たちは大抵、俗っぽいんです。話が合わなそう」

ソ「・・・!」ちゃんと相手を選んでいるのか!

安住の地を離れ、魔物との戦いを覚悟しながら巡礼をする彼女たちを、ソロは崇高だと思った。が、疑似ではなく本当の旅をしてきたノーラにとって、修道女たちは甘く見える。



ノ「ソロさんは、どうしてこの街に来たんですか?」

ソ「えーっと、あはは。話せば長いなぁ。

 直近の話をすれば、だね。ずーっと西のメトン川沿いの村とかにいたんだけどね。そこから2週間くらいかけて、野宿とかボロい宿を泊まりついでここまで来たんだよ」

ノ「2週間も?たった一人でですか!?」

ソ「そんなに長くなると思わなくてさ。あはははは!君と違ってバカなんだ僕は。あははは!」

ノ「メトン川には、何があるのですか?」

ソ「うーん、何があるってこともないかな。この辺の都会に比べたらホントに素朴で、何もないんだ。女の子が好きそうなものは何もないよ。

 でもその素朴な村が、僕は居心地よかったな~」

ノ「素朴な村・・・。

 ソロさんは戦士ですか?魔法使い、には見えませんが」

ソ「僕?魔法なんてこれっぽちも使えないよ!

 戦士・・・と名乗るのも戦士さんに失礼だしなぁ。てんで弱いんだよ、まだ」

ノ「武器は?」

ソ「恥ずかしいなぁ武器を見せるのも。あはは」しかしソロは自分の《銅の剣》を具現化して見せた。

ノ「《銅の剣》!ボロボロです!」

ソ「そ、そうなんだよ。あははは。浮浪者じゃないからね?いや、浮浪者みたいなモンだったな。一昨日までは。あははは!」

ノ「そんなボロボロの武器で、2週間もさすらってきたのですか!?」

ソ「お金も、ちょっと前に一文無しになっちゃってね!」

ノ「親にお金を送ってもらえばよいのでは?」

ソ「僕も、親にはそう頼れないんだよ。

 教育にうるさい家庭だったのに、反発してこんな生き様選んじゃったからね。『親に逆らうなら金は出さないし、25過ぎたらもう家を出ろ』って言われてたよ。あははは」

ノ「ソロさんも独りなのですか」

ソ「ノーラちゃんほど孤独じゃないさ!」

ノ「それでも、一文無しが《銅の剣》1本でここまで・・・!

 すごいですね!!」

ソ「えぇ?そんなことないよ!無計画っていうかノンキっていうか。あははは」

ノ「ありがとう。面接に落ちて落ち込んでたけれど、私元気になりました。おやすみなさい」

ノーラは少し笑顔を取り戻し、寝室に向かおうと立ち上がった。

何かわずかでも、彼女の役に立ったなら嬉しい。それが愚かな身の上話でも。笑いものになっただけだとしても。良かった。ソロは思った。

ソ「おやすみ♪」



翌日。

ソロはノーラを伴って、城下町に聞き込みに繰り出すことにした。

最近世間を賑わせている馬車の脱輪問題。王子様をはじめ、貴族や商人や、国への影響力の強い人間が被害に遭いやすい。この問題を解決して見せれば、株が上がるのではなかろうか?

貴族を恨む庶民のイタズラなどであれば、腕っぷしの強くなったソロにはしょっ引くことが出来るだろう。


ソ「王子様に『現場はどうでしたか?』って尋ねたいけど、まさか話を聞いてくれやしないよね?」

ノ「謁見してくれないと思います。城下町は解放されていますが、城はなかなか人が入れません。王宮魔術師の面接も、年に1度だけ、今1週間くらいそういう特別期間なのです」


兵士でも捕まえてみるか。

ソ「馬車が脱輪する事件ですけど、たくさん起きてるんですか?」

兵「あぁ。ここ2週間くらいでボコボコ起きてるぜ。オレが知ってるだけでも4件・・・5件かな。こないだなんて王子まで被害に遭ったんだぜ!」

ソ「はい。僕王子様が負傷しているところに居合わせましたよ。それで何かお助けしたいと思って」

兵「感心じゃないか!」

ソ「どうして穴に落ちるんでしょう?そんなに穴だらけの国なんですか?」

兵「いやそんなことないはずだぜ!ちょっと前までは脱輪事故なんてほとんどなかったんだから」

ソ「誰かが落とし穴を掘っている?」

兵「城はそれを真っ先に考えたよ。だから兵士が近隣の見回りをしたけど、別に怪しい奴もいないんだ。でも事件はまた起きる」

ソ「うーむ?」


城に近づいてみる。前庭には白衣を着た学者のような男がバラに水やりをしている。

ソ「あのう、脱輪事故について何かご存じありませんか?」

学「私の担当ではないんだがね。少々は気に留めているよ」

ノ「植物の生態系が関連していませんか?根が腐って地面が脆くなったとか」

ソ「君頭いいなぁ!」

学「脱輪の現場を幾つか調べたようだが、植物も何も見つかっていないよ」

ソ「地震とかは?」

学「地震だって?最近別に、地震なんてないなぁ」


次は武器屋だ。

武「脱輪事故だって?あぁあれか。

 馬車だけじゃないぜ。通行人が穴に落っこちた話も耳にしたなぁ。膝までズボっとさ!」

ソ「膝程度なのですか」

武「あぁ、大怪我にもならないんだろうけど、だからあんまり城とかに報告されてないんじゃないか?結構あちこち被害に遭ってるかもしれないよ」

ソ「穴の数は5つ6つじゃなさそうだな・・・。

 でもそんなにいっぱいあったら、歩いてたらすぐにわかりそうなもんだよな」

ノ「カムフラージュしているのかもしれません。

 穴を掘って、その上に布でもかぶせて砂で覆えば、ぱっと見では穴があると気づきません。でも脆いので上を通れば落ちます」

武「トラップじゃねぇか!なんでそんなこと知ってんだ?」

ノ「学校で習いました」

ソ「マジかよ!」

武「物騒な学校行ってんなおい!」

ソ「じゃぁ想像以上にたくさん穴がある可能性も!?」

ノ「そうですね」

武器屋を出る。



ソ「穴がたくさんあるんだったら、捜査も大変だなぁ。僕らも穴に落っこちそうだよ」

ノ「いえ、馬車道の上を歩かなければいいんだと思います。多分」

ソ「そうか!住民を狙っているっていうより馬車に乗るような人を狙ってる気がするな!」金持ちほど犯罪者に狙われやすいものだ。

ソ「でもさぁ、カムフラージュするほど立派な落とし穴を掘ってるんだったら、時間かかるからなおさら誰かに見つかりそうだよな。それなのに目撃情報がないなんて・・・。

 あぁ!魔法でパパっと穴を掘ってるのかな?そんな魔法ってあるの?」

ノ「わかりません。学校では教わりませんでしたが・・・ないとも言い切れないです」


次は魔法研究所に行ってみた。顔見知りになったから、話を聞いてくれないだろうか。

男「穴を掘る魔法だって?聞いたこともないな」

ノ「不可能ではない気がしますが?」

男「あぁ、不可能ではないはずだ。

 しかしそんな地味な効果に特化した魔法を、わざわざ開発するもんかな・・・」

ソ「魔法使いの可能性もなくはないが、可能性は薄い、か。

 どうもありがとう。お邪魔しました」

ソロは研究所を出ようとドアに向かった。

ノ「あ!」ノアが声を上げる。

ソ「うん?」ソロは振り返る。

ノ「今そこの本が光ったような気がしました」ノーラはその本を手に取った。ページを開く。


 魔法使いよ。強くなりたいか?

 一日中歩くことだ。

 勇者のお供をするつもりなら、《イオナズン》一発では足手まとい。


ノ「はっ・・・!」

魔法が強いだけでは実践では役に立たない、ということか!

ソ「どうしたの?」

ノ「ううん。なんでもありません」

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