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episode33 『王と悟り』

20 時間前
読了時間: 4分

episode33


3時間ほど眠ったらしかった。ソロには時間の長さはわからない。

目が覚めても真っ暗だが、洞窟の中にいることを思い出す。

ソ「うう」体はあちこち痛いが、動ける。

《たいまつ》はもう消えている。

ソ「《レミーラ》!」ソロは明かりを灯す魔法を唱えてみた。

ぼぅっ!

なんとソロの周囲は確かな明かりに包まれた。

ソ「出来ちゃった!」自分で自分に驚く。

ターニアの娘の温もりを、ソロはもう忘れてしまっていた。しかしそれが彼を救った。


ソロはよろよろと立ち上がった。

もう少し先に進もう。何かのゴールがあるはずだ。宝物ではないのか?少しワクワクしながら。


次第に、洞窟は突き当りに達するのだった。

しかし、《レミーラ》の灯りはそこに石碑があることを示した。


ソ「なんだこりゃ!」ソロは駆け寄って、石碑の文字を眺める。



 最高の恋に憧れますか?メラミを覚えて浮き足立った魔女の少女よ。

 それなら勇者を探しなさい。

 勇者様のお役に立ちなさい。

 商人ではありません。勇者様です。


 あなたの類稀なる魔力は何のためにあると思いますか?

 お金儲けのためではありません。名声のためでもありません。


 魔法を放っているのは誰ですか?

 「あなた」ではありません。魔法を司っている精霊が放っているのです。


 なぜこんなことを書き記すかわかりますか?

 学校を卒業しても、ちゃんと学んでいない子ばかりだからです。

 そして教師すら、ちゃんと教えているのか信頼できたものではないからです。


 私は内から外から世界を見守りし者 精霊セニカ



ソ「・・・ふうん。

 厳しい人なんだなセニカさんて。

 『卒業おめでとう』じゃないのかぁ」



ソロは来た道を引き返した。

やはり魔法使いのために存在する洞窟だった。魔法使いではないソロが来た意味は、なかったのか?

石碑を読むことはソロの心得にはならない。しかし、魔法使いたちが本来どうあるべきかを知る助けにはなる。魔法を使って金稼ぎをしているような輩は、立派な人ではないのだ。

魔法学校を出て、淑女を気取って金持ち男と結婚している魔女は、我が道を見失ったのだ。

ソロからすれば、すごい魔法を使う者は誰にせよ尊敬してしまいそうだが、そうではないことを理解した。


他人の学校に通うことは、それなりに意味がある。




・・・気付いただろうか?

人生にはいつも、2つの卒業があるのだ。

1つは、表面的な卒業だ。卒業証書を得ることだ。それによって大半の人は、「あの人はあの試練を卒業したエリートなのだな」と騙されてくれる。するとまぁ、一流企業には潜りこめるだろう。様々な課題のたびに、あれこれと不正をしたり虚勢を張ったりしていても、単位は取れる。

2つ目は、「本質的な卒業」だ。

カルベローナの魔法学校における真の卒業は、卒業証書を得ることではなく、試練の洞窟を攻略すること。これは、ちゃんと学校の授業を頑張ってきた者でないと成し遂げることは出来ない。《ベギラマ》程度はマスターしなければらないし、泥水を飲むたくましさやオフロードを歩き続ける体力を培ってきた者だけが、精霊セニカの石碑に達する。

冒険の旅に出て、勇者を見つけられるのは、後者の卒業者のみだ。

虚勢を張り続け実際的な能力の心もとない者は、「実践」という抜き打ちテストでどんどん振るい落とされていく。


バカ正直で努力家な者が、最後まで残る。

「アセンション」という学校も、然りである。




魔法学校まで戻ってきた。

次はどちらに向かうべきか?

色々な意味で、カルベローナの里にもう一度行きたい欲があったが、そうしないほうが良い気がした。

・・・でもターニアさん心配してるかな?無事を報告したほうがいいかな。と思ったが、やっぱりだめだ。

ソロは魔法学校の共同墓地に、「ターニアさんヒメアちゃん、ありがとう。お陰で無事です」と炭木で書いた。

あまりに心配なら、この辺りに様子を見に来るだろう。来ないなら、伝えるほどのこともないだろう。

里の誰かが見るなら、ターニアに伝えるだろう。


山とは反対側に、大きな街などあるらしかった。ミーハーな魔女はこちらに赴き、金持ちの男を見つけるのだろう。

この日の晩は学校の端の、あまり火災被害を受けていない教室で夜露をしのがせてもらうことにした。

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