episode4 『王と悟り』
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episode4
早朝。乗客の多くがまだすやすやと寝静まる頃、船は西の大陸の端くれに着岸した。とても小さな港町だ。
ソロの故郷カレンから南に下ってきた。豪華客船はここで幾らかの客を降ろしたあと、進路を直角に、東に変える。そして東の大陸を目指すのだった。同じ船が、西の大陸にも東の大陸にも行くのだ。
空はまだ明けやらぬ、ナイーヴな色をしていた。風はまだ起きておらず、港は静かで、カラスか何かだけがカーカーとまばらに鳴いている。
人の足音はそのすべてが聞こえるが、数十人がソロと一緒にここで降りたようだった。
木の古びた桟橋を歩いていくと、検問所のようなものがある。そこで乗客は立ち止まり、列が生じている。検問を受けるようだ。
外国に来たぞ!大丈夫だろうか?検問なんていうのはドキドキする。
ソロの番になる。
兵「どこから乗ったね?」
ソ「カレンからです」
兵「西の大陸は?初めてかい?」
ソ「えぇ、外国すら初めてのことで」
兵「剣や槍か、君は武器を持っていないね?」
ソ「もちろんです!大丈夫ですよ」
兵「いや大丈夫じゃないよ。
西の大陸はカレンよりも治安が悪いんだからさ。町から出りゃ魔物が出るんだ。護身用の武器を持ってなきゃ入国はさせられないよ」
ソ「え!そんな決まりがあったのですか!」
兵「武器を持ってないんだね?
じゃぁその脇の露店で1つ買っていきなさい。《銅の剣》が200ゴールドだ。あぁ、カレンの通貨で言ったら2万円だ。えぇと、両替えも必要か?じゃぁ22,000円だな」

ソ「えぇ!」入国した途端に大金を要求されるなんて、どういうことだ?
ソ「失礼ですが、ボッタクリじゃないですよね?」ソロは単刀直入に尋ねた。
兵「何を言っているんだね!私は入国官だよ」
ソ「入国官も警察官も、それだけで安全とも言えませんが・・・」
兵「もう!後ろが詰まってんだろ!私はいっつもおんなじ仕事をしているまでだ!」
ソ「そ、そうですか。じゃぁ」ソロはこれ以上の抗戦はしないことにした。が、
男「わっはっは。武器を持ってりゃ買わなくていいんだろう?」
列の後ろから声がする。ソロは何事かと振り返る。
男「ちょっとごめんよ」ソロの4人後ろに並んでいた恰幅のいい男が、のしのしとソロに近づいてくる。
●トルネコ

男「《銅の剣》だって?同じものをわしは100ゴールドで売ってあげよう。円しか持ってないって?かまわんよ。じゃぁ1万円ぽっきりでさ」
ソ「えぇ、いいんですか!?ありがとうございます!」
男「いいともいいとも。確かに武器が必要なんだよ。この辺りじゃね。
私はトルネコという者さ。君は何者だい?」
「おい!後ろが詰まってんだよ!」列の者たちがイラつきはじめた。
ト「おほほぉ。スマンね。君は入国を済ませてしまいなさい」
ソ「あ、はい」
ト「ほれ、迷惑を掛けた詫びだ。1ゴールドで勘弁してくれたまえよ」
トルネコという男はそう言うと、列の者たちに順番に1ゴールドを配って歩いた。すると男たちは苛つくのをやめるのだった。
ソロは検問を済ませると、恩人を待つがてらに、そばの露店で武器を眺めた。
ソ「《銅の剣》ってどれです?」
商「これだね」先ほどトルネコが見せてくれたものと同じだ。もっと錆びているが。
ソ「幾らなんですか?」
商「200ゴールドだよ」
ソ「へぇ」
すると検問を済ませたトルネコがやってきた。
ト「わっはっは。ボッタクリなんだよこいつ等は。
《銅の剣》の相場は100ゴールドってもんさ」
商「何を言うかね!僻地でものを売ったら高くもなるんだよ。それに円なんてこの国じゃ使えないんだからね。両替えの手間だってある」
ト「ああいいよ。そういうことにしておきたまえ。わっはっは」
ソ「あははは!」ソロはトルネコの飄々とした言動を見て、楽しくなってしまった。
ト「とにかくね、わしは君に100ゴールドで売ってやるんだよ」
ソ「どうして?」
ト「一人であてもなくさすらっていくんだろう?カッコいいじゃないか!
それに勇敢にも兵士に食ってかかったなぁ!」
ソ「食ってかかったなんてそんな」
ト「そうだよ。わっはっはっは!怒りもせずに『ボッタクリですね?』って言うんだからさ。わっはっは!君は大物になるよ!」
トルネコはトルネコで、飄々として穏やかなソロに好感を抱いたのだった。そして咄嗟に助け船を出したのだ。
商「ふん!商人なんて誰だって利子を取りながら生きてんだろ」
ト「まぁそうだがね。わっはっは!
おい商人さんよ。ちょっと馬車を呼んでくれたまえよ。手数料は1割多くとっていいからさ」
たった今口ゲンカした相手に商談を掛け合うとは。本当に飄々としている。
ソ「そうですね。僕にも後で利子とるんですか?」
ト「わははは!君から取るつもりはないんだよ。別に100ゴールドでも利子は得てるんだからさ。75ゴールドで買い取って100ゴールドで売るんだよ。それだけさ。
・・・強いて言えば、そうだな、君の未来に投資したいよ」
ソ「えぇ?」
商「ほらやっぱり!」
ト「わっはっは!違うさ。カネも取引も求めんよ。
いつかまた世界のどっかで会ったらさ?旅の思い出話を聞かせてくれたまえよ!
きっと3日間は必要だ!3日間わしにくれるか?3日間ずーっと思い出話を聞かせてくれよ!」
ソ「えぇ?思い出話?」
ト「あぁ。君はきっと面白い旅をするさ。わかるんだ、わしには。わっはっは!」
露店の商人は親戚の荷馬車を呼び寄せた。
ト「わっはっは。助かったよ!カネはどっちに払うんだ?運転手か?」
商「運転手に払っておくんな」
ト「そうかい。
じゃぁ運転手さんよ、最寄りの町まで頼むよ。マイエラってとこだろう?」
運「はいよ。1時間はかかるよ。10ゴールドだ」
ト「よしよし、いいよ」
ソ「あのう。僕は歩いていきますよ。お金を節約したいんで」
ト「何言ってんだい!わしのおごりだよ。どうせ町まで行くんだからさ」
ソ「ありがとうございます!」
荷馬車は町に向けて走り出した。
ソロはこの商人と話したいことがたくさんあった。相乗りが出来たことは色々な面でありがたかった。


