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episode4 『王と悟り』

  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

episode4


早朝。乗客の多くがまだすやすやと寝静まる頃、船は西の大陸の端くれに着岸した。とても小さな港町だ。

ソロの故郷カレンから南に下ってきた。豪華客船はここで幾らかの客を降ろしたあと、進路を直角に、東に変える。そして東の大陸を目指すのだった。同じ船が、西の大陸にも東の大陸にも行くのだ。


空はまだ明けやらぬ、ナイーヴな色をしていた。風はまだ起きておらず、港は静かで、カラスか何かだけがカーカーとまばらに鳴いている。

人の足音はそのすべてが聞こえるが、数十人がソロと一緒にここで降りたようだった。

木の古びた桟橋を歩いていくと、検問所のようなものがある。そこで乗客は立ち止まり、列が生じている。検問を受けるようだ。

外国に来たぞ!大丈夫だろうか?検問なんていうのはドキドキする。

ソロの番になる。

兵「どこから乗ったね?」

ソ「カレンからです」

兵「西の大陸は?初めてかい?」

ソ「えぇ、外国すら初めてのことで」

兵「剣や槍か、君は武器を持っていないね?」

ソ「もちろんです!大丈夫ですよ」

兵「いや大丈夫じゃないよ。

 西の大陸はカレンよりも治安が悪いんだからさ。町から出りゃ魔物が出るんだ。護身用の武器を持ってなきゃ入国はさせられないよ」

ソ「え!そんな決まりがあったのですか!」

兵「武器を持ってないんだね?

 じゃぁその脇の露店で1つ買っていきなさい。《銅の剣》が200ゴールドだ。あぁ、カレンの通貨で言ったら2万円だ。えぇと、両替えも必要か?じゃぁ22,000円だな」

《銅の剣》
《銅の剣》

ソ「えぇ!」入国した途端に大金を要求されるなんて、どういうことだ?

ソ「失礼ですが、ボッタクリじゃないですよね?」ソロは単刀直入に尋ねた。

兵「何を言っているんだね!私は入国官だよ」

ソ「入国官も警察官も、それだけで安全とも言えませんが・・・」

兵「もう!後ろが詰まってんだろ!私はいっつもおんなじ仕事をしているまでだ!」

ソ「そ、そうですか。じゃぁ」ソロはこれ以上の抗戦はしないことにした。が、

男「わっはっは。武器を持ってりゃ買わなくていいんだろう?」

列の後ろから声がする。ソロは何事かと振り返る。

男「ちょっとごめんよ」ソロの4人後ろに並んでいた恰幅のいい男が、のしのしとソロに近づいてくる。


●トルネコ

トルネコ byドラクエ公式
トルネコ byドラクエ公式

男「《銅の剣》だって?同じものをわしは100ゴールドで売ってあげよう。円しか持ってないって?かまわんよ。じゃぁ1万円ぽっきりでさ」

ソ「えぇ、いいんですか!?ありがとうございます!」

男「いいともいいとも。確かに武器が必要なんだよ。この辺りじゃね。

 私はトルネコという者さ。君は何者だい?」

「おい!後ろが詰まってんだよ!」列の者たちがイラつきはじめた。

ト「おほほぉ。スマンね。君は入国を済ませてしまいなさい」

ソ「あ、はい」

ト「ほれ、迷惑を掛けた詫びだ。1ゴールドで勘弁してくれたまえよ」

トルネコという男はそう言うと、列の者たちに順番に1ゴールドを配って歩いた。すると男たちは苛つくのをやめるのだった。


ソロは検問を済ませると、恩人を待つがてらに、そばの露店で武器を眺めた。

ソ「《銅の剣》ってどれです?」

商「これだね」先ほどトルネコが見せてくれたものと同じだ。もっと錆びているが。

ソ「幾らなんですか?」

商「200ゴールドだよ」

ソ「へぇ」

すると検問を済ませたトルネコがやってきた。

ト「わっはっは。ボッタクリなんだよこいつ等は。

 《銅の剣》の相場は100ゴールドってもんさ」

商「何を言うかね!僻地でものを売ったら高くもなるんだよ。それに円なんてこの国じゃ使えないんだからね。両替えの手間だってある」

ト「ああいいよ。そういうことにしておきたまえ。わっはっは」

ソ「あははは!」ソロはトルネコの飄々とした言動を見て、楽しくなってしまった。

ト「とにかくね、わしは君に100ゴールドで売ってやるんだよ」

ソ「どうして?」

ト「一人であてもなくさすらっていくんだろう?カッコいいじゃないか!

 それに勇敢にも兵士に食ってかかったなぁ!」

ソ「食ってかかったなんてそんな」

ト「そうだよ。わっはっはっは!怒りもせずに『ボッタクリですね?』って言うんだからさ。わっはっは!君は大物になるよ!」

トルネコはトルネコで、飄々として穏やかなソロに好感を抱いたのだった。そして咄嗟に助け船を出したのだ。

商「ふん!商人なんて誰だって利子を取りながら生きてんだろ」

ト「まぁそうだがね。わっはっは!

 おい商人さんよ。ちょっと馬車を呼んでくれたまえよ。手数料は1割多くとっていいからさ」

たった今口ゲンカした相手に商談を掛け合うとは。本当に飄々としている。

ソ「そうですね。僕にも後で利子とるんですか?」

ト「わははは!君から取るつもりはないんだよ。別に100ゴールドでも利子は得てるんだからさ。75ゴールドで買い取って100ゴールドで売るんだよ。それだけさ。

 ・・・強いて言えば、そうだな、君の未来に投資したいよ」

ソ「えぇ?」

商「ほらやっぱり!」

ト「わっはっは!違うさ。カネも取引も求めんよ。

 いつかまた世界のどっかで会ったらさ?旅の思い出話を聞かせてくれたまえよ!

 きっと3日間は必要だ!3日間わしにくれるか?3日間ずーっと思い出話を聞かせてくれよ!」

ソ「えぇ?思い出話?」

ト「あぁ。君はきっと面白い旅をするさ。わかるんだ、わしには。わっはっは!」


露店の商人は親戚の荷馬車を呼び寄せた。

ト「わっはっは。助かったよ!カネはどっちに払うんだ?運転手か?」

商「運転手に払っておくんな」

ト「そうかい。

 じゃぁ運転手さんよ、最寄りの町まで頼むよ。マイエラってとこだろう?」

運「はいよ。1時間はかかるよ。10ゴールドだ」

ト「よしよし、いいよ」

ソ「あのう。僕は歩いていきますよ。お金を節約したいんで」

ト「何言ってんだい!わしのおごりだよ。どうせ町まで行くんだからさ」

ソ「ありがとうございます!」


荷馬車は町に向けて走り出した。

ソロはこの商人と話したいことがたくさんあった。相乗りが出来たことは色々な面でありがたかった。

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