episode47 『王と悟り』
episode47
翌朝、とても静かだが、隙間からの日差しで目を覚ます。
とても静かだ。風が戸や壁を打ちガタガタといい、野鳥がピーチクいっているが、それ以外の音がない。それ以外の音がないと、戸の音と鳥のさえずりが聞こえていても、「とても静かだ」と感じる。その感覚は、面白い。
戸から外に出て、今自分が眠っていた建物を仰ぎ見る。
とても大きな建物だ!そこからは全容は把握できない。宮殿と言われるだけのことはある。
向こうの宿からはとても白い建物に見えたが、間近で見れば汚れてくすんでいる。もう手入れはされていないのだから当たり前か。
ソロが寝床にしたのは、用務員室のようなものであったようだ。
広い階段を上って、正門から入るのがスマートだろうと考えるが・・・噂通り侵入者があるのか、正門は豪快に打ち破られている。
ソ「お邪魔しまぁす」ソロはおそるおそる、中へと入ってみる。
中も白い壁がそびえ立つ大きな立派な宮殿だが、何者かに荒されて汚らしく朽ちている。
壁には大きな絵や、金属製の像や、派手な装飾を持つ剣など飾られている。たしかにお宝になりそうだが、ソロは別にそれを持ち帰って換金したいとは思えない。
普通はどんどん階段を登って、王の間みたいな場所に行くだろうか。しかしソロは、お腹が減っていたので台所を探した。それは建物の上のほうではなく、1階や地階あたりではなかろうか。エントランスの立派な階段は上らず、ソロは左に反れて探索を始めた。
広い食堂はあった。普通なら食べ物なんて期待できないものだが、ここは山の上だ。村ではもっぱら、干し肉やチーズ、蒸留酒などの保存食ばかりが食されていた。つまりこの宮殿だって保存食のストックを残していておかしくはない。そしてあちこち開くと、予想通りチーズや干し肉を探し当てるのだった。それももう腐っているのかもしれないが・・・食べなければどうせ死んでしまうだろうから、一か八か食べてみる。大丈夫そうな気はする。
食堂の他にはリネン室がある。ベッドのシーツやタオル、従業員の制服などが大量にある。ちょっとは状態のよいものがあるし、その先には川の流れを利用した洗い場もあった。水は飲めそうな気がする。
ソロは、もう一日ここで休息しようと考えた。
服を着替え、体を洗い、洗濯をし、腹ごしらえをする。王の間は探さず、食堂やリネン室や、または1階あたりにある従業員の作業場で滞在しようと考えた。
なぜなら、王の間など行くと盗賊とばったり顔を合わせる危険があるからだ。そしてそういう奴はソロを攻撃してくるかもしれない。ソロはどうにかこうにかここまで魔物と荒野に応戦してきたが、きっとプロの盗賊とやらはもっと強いだろう。戦いたくはない。本当は宝荒らしを成敗するのが理想なのだろうが、それは勘弁してもらって、とにかくバレないように端っこで息をひそめてやり過ごすのだ。せめて、体が回復するまでは。
地球の果ての宮殿にやってきて、そして盗賊に出くわすのか、何があるかもわからない状況で、ドキドキする。さらに誰もいないこの異常な静寂なので、もはやそのドキドキは自分の耳によく聞こえる。とても静かだ。独り言を言う気にはなれない。盗賊に見つかるかもしれないからだ。
ソロはこの日、体も心も休めているが、終始ドキドキしていた。ある意味では休まっていない。でも悪くないドキドキだ。
これが、冒険である。



