episode5 『王と悟り』
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episode5

ソロはトルネコに尋ねた。
ソ「トルネコさんは、どうしてそんなに笑ってばかりいられるんでしょう?
世界を股に掛けるなら、強い魔物も大きな困難もたくさんあると聞きますよ。それをこなせるのは勇者や冒険者だけだって」
ト「なぜわしが笑っていられるかって?わっはっは!強いからだよ。
わしは商人だがね、そこらの戦士に負けないくらいは強いさ」
ソ「そうなんですか!」
ト「そうだよ!商売ばっかりじゃなくて、鍛えたんだ。
強くなれば、いいことがある。誰も怖くないし、何も怖くないのさ。そしたらいっつも笑っていられる。誰にも寛大でいられる。こんなに幸せなことはないよ!わっはっは」
ソ「武器をたくさん背負って、それだけでも鍛えられそうです」
トルネコという男は、大きな体をさらに覆い尽くすほどにたくさんの武器や防具を背負っていた。
ト「そうだね!大量の武器を抱えているのもトレーニングになるし、大量の武器を買い付けするためにも、体を強くしておきたいもんだよ!一石二鳥だな!」
ソ「ふうん」
ト「でもあれか、君は武器やら防具やら調達しながら、世界を股に駆けて旅するんだって?一人旅なんだろう?」
ソ「そうですね。一人でさすらうつもりです」
ト「それなら君に、特別な魔法を授けてやらなくちゃな!」
ソ「えぇ、魔法!?炎の魔法ですか?氷の魔法ですか?」
ト「残念!どっちでもないんだよ。
《ホイポイ》っていう魔法なんだ。収納と具現化の魔法だよ」
ソ「収納と?具現化??」
ト「そうさ。えぇと、そこにじっとしていたまえよ。
ちちんぷいぷい!えいっ!」
ソ「あははは!僕はもうそんな子供じゃないですよ!」
ト「わっはっは!冗談じゃないんだよ!
ほら早速やってみたらいい。
さっきやった《銅の剣》を手に持ってごらん?」
ソ「こうですか?」
ト「《ホイポイ》!って念じるんだ」
ソ「うぬぬぬーん、《ホイポイ》!」
すると!
なんと、手の中にあった《銅の剣》が忽然と消えてしまった!
ソ「えぇ!どうなってるの!?
トルネコさん、マジックしたんですか!?」
ト「わっはっは!だから君が魔法を使ったんだってば。収納したんだ。オーラの中に」
ソ「どういうこと!?」
ト「まぁいいよ。早く元に戻さなくちゃな!
もう一回、さっきの剣のことを思い浮かべながら《ホイポイ》って言ってごらんなさい」
ソ「うぬぬぬーん、《ホイポイ》!」
ぼんっ!
なんと、本当に《銅の剣》が姿を現した!
ソ「すごいぞ!!」
ト「わっはっは。一人で長旅でもするならね、こういうのも必要なのさ。荷物が多かったら大変だ」
ソ「他でもなくトルネコさんが、その無数の武器を収納すればいいのに!?」
ト「わしはね、商人と見せつけておいたほうがいいんだよ。
商人だって皆に認識されたほうが何かと都合がいいんだ。話が早いってヤツさね」
人それぞれにセオリーが違う。それをわかった上で語ってくれているらしかった。
ソ「トルネコさん、どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」
ト「わっはっは!それもまたわしの旅の醍醐味だよ。武器商人をしながら、わしも旅をしている。商売だけじゃなく旅もしたいから体を鍛えたよ。旅をして、人とドラマを作るのが楽しいんだ!」
ソ「ビジネスだって人とのドラマでしょう?」
ト「そうだがね。なんていうか、わしの商売のポリシーだな。
金持ちには高いものを売るんだよ。金持ちにはカネを使わせればいい。そんでわしの懐が肥えたらさ?」トルネコは大きな腹をポンと叩いた。「カネのない奴を、気前よく助けてやりたいってもんさ!」
ソ「おぉ!」
ト「金持ちはカネを使いたがる。高いものを欲しがる。望みどおりにしてやったらいい。でも貧乏人はそうじゃないだろ?
貧乏人からカネを巻き上げる商売なんて、楽しくないよ。そんな人生はぜんぜん笑えないってもんでさ!」
ソ「すごい・・・!」
商売人に尊敬の念を抱いたのは、ソロにとって初めてのことだった。
カッカッカッカッカッカ・・・馬車は小気味よく走っている。
ソロはふと、トルネコの大荷物の中から1つの本がはみ出しているのを見つけた。
ソロはなんとなしにその本を開く。
『感動的に生きたいものだ』
良い大人とはどんな大人かって?
そりゃあれだよ
子供たちの秘密基地に招待してもらえる大人のことさ
あとはあれだな
ある子供が家出の計画を練ったとき
真っ先にあなたに相談しに来たなら、あなたは良い大人だな
ネロ・ダース
話に花を咲かせている間に、すっかり時間は過ぎていた。
運「そろそろ町に着きますぜ?」
するとトルネコは意外なことを言うのだった。
ト「おぉ!じゃぁそろそろ降ろしてくれたまえよ」
運「いやまだですぜ?」
ト「そうだよ。着く前に降りたいんだ」
ソ「どこか寄り道するんですか?」
ト「君、戦いの経験があまりないんだろう?」
ソ「えぇ」
ト「そらみろ!だから町の手前で降りてさ、ちょっくら戦いながらいこうじゃないか。
あーほら、もう停めてくれってば!」
そして2人は荷馬車を降りた。
運「割引しませんぜ?」
ト「わっはっは!いいんだよ。君に10ゴールドと、あの男に1ゴールドの仲介賃だ」
運「へぇどうも」
ソ「ちゃんと約束守るんですね!」
ト「当たり前じゃないか!」
運「じゃぁどうもです」しかし荷馬車は引き返さず、町へ行くのだった。町でまた仕事を獲るのだろう。
ソ「ちゃんと仲介賃渡してくれるのかな?猫ババするかも?」
ト「わっはっは!大丈夫だろう。親戚って言ってたからな。この辺の奴らは余所者からボッタクリをしても、家族や仲間を騙したりはしないよ」
ソ「色々考えてるんですね!」
ト「わっはっは!何も考えちゃいないよ!」
ソ「もしかして、すごく頭がいいですね?」
ト「わっはっは!わしは考えるなんてのはキライでね、何も考えちゃいないよ!
騙すか助けるか決めるのに、何か考える必要があるかね?そんなの3歳児でもわかるさ。わしぁなにも考えちゃいないよ!」


