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episode50 『王と悟り』

11 時間前
読了時間: 5分

episode50


山の上だ。峰の向こう側に出たようだった。

こちら側のほうが風が強いが、この台地にだけは雪がなく、植物も生えている。

向こうに集落が見える。

シャンバラ『王と悟り』
峰の向こうの台地 挿絵 by 生成AI

ソ「人が住んでるぞ!」

ソロは駆け寄る前に振り返った。こじ開けた穴はどうしよう?埋めようとしたが上手くいかない。集落があるならそこの人に頼むとしよう。


里に近づくと、もう人の笑い声が聞こえる。

そしてガーデンテーブルを囲んで男たちがトランプに興じる姿が見える。近寄ってみる。

ソ「あのう」

男「ほらやっぱり次も盗賊だよ!

 賭けはオレの一人勝ちだ!へっへっへ~」

男「ちっくしょぉ~」

柄のあまり良くない男たちだ。

ソ「あのう、僕、盗賊じゃないんですけど」

男「え、違うのか?」

男「なんだ違うじゃねぇかよ!カネ返せほら!」

男「じゃぁなんだよ。戦士にしちゃガリガリだぜ」

ソ「いや、戦士か何かもわかりませんが、とにかく盗賊ではないです。モノ盗んだりしませんから」

男「ほら金返せ!」

迷いこむ人がちらほらいるのだろう。その対応に慣れている感がある。

ソ「ここはひょっとして、無政府世界というやつですか?」ポタロ宮殿の本に書いてあったものではなかろうか。

男「まぁそうだよ。

 ここには王も税金も警察もない。自由の楽園だぜ!はっはっは!」

無政府世界ってこんなものなのか?ちょっと想像とは違った。


ソ「あのう、泊るところはありませんか?」

男「オレん家が宿だよ。500ゴールド(約5万円)だ」

ソ「ご、500!?」

男「そうだよ。こんな辺鄙なところで食い物恵んでやるんだからな」

ソ「高すぎます!」

男「持ってないことはないだろ?

 持ってないならそこのロープから少し崖を降りるんだ。魔物がいるから倒して金策してこいよ」

こうして新しく迷い込んできた者たちから金をせしめるのだろう。それを取り締まる者が誰もいないから。

ソ「そうですか。じゃぁ金策考えてきます」

ソロは角が立たないように切り返し、その場を離れた。魔物を倒しにいくつもりはない。集落をもっと進めば、違う毛色の人もいるかもしれない。

彼らは人間だが、おそらくとても強い。戦わないほうがよい。


ソロはさらに奥へと進んでみた。土地は広い。まばらに家が見え、中にはもう使われてないような古い家も見受けられる。家屋の様子はセントベレスの手前の里の家に似ていて、白い壁の素朴な平屋が多い。


また高らかな笑い声が聞こえた。この殺風景な土地で、陽気なもんである。今度は女の声だ。

声のする方に歩いてみる。やはり庭先でガーデンテーブルを置いて談笑する男女がいる。

ソ「女の人もいるのですね」盗賊のようななりをしている。

女「カッコいい男じゃないか!あたいを探しに来たのかい?」

アサ 『王と悟り』
アサ キャラデザ by 生成AI

ソ「い、いえ」

女「なんだつまらないなぁ。もっと粋な返し言葉があるだろうよ」

男「なんだよアサ!こんなガリガリな男がいいのか?」

女はアサというらしい。

ア「妬くなよ~妬く男が一番キライっつてんだろぉ~。

 あんた今来たの?ここで暮らすのか?

 それならあたいん家でかくまってやるよ。騒がしいけどな!あっはっは」

ソ「いえ、ごめんなさい」美人ではあるが、性格がまるで合いそうにない。

男「絶対来るなよ!オレの部屋が狭くなる!」

ア「アンタもそろそろ自分で家建てろよ~」

男「それでまた他の男連れ込むつもりか!」

ソ「人生を楽しんでいらっしゃるようで・・・」

ア「そうだよ。人生は楽しんでナンボだ。

 セックスより欲しいものがあるか?」

ソ「否定はしませんけどね。ご自愛くださいよ。女性はデリケートですからね」

ア「強ければいいんだよ、女だって」

女は連れの男を押し倒して、マウントを取るように上からのしかかった。

ア「はっはっはっは!」

ソ「子供が出来ちゃいませんか?そんな無防備で」

ア「望まない子なら、流せばいいさ」

ソ「え?」

ア「ここならそれが許される。法律もない、宗教もない、警察もないんだからな!」

思いがけない切り口で無政府世界を語る者が現れた!

ア「女はなぜ、妊娠したら産まなきゃいけないんだ?それを決める権利は自分にあるはずだ。

 堕ろしたい精子もあるだろ。

 なんで殺人だ不道徳だって言われなきゃならないんだ?

 あたいは新しい世界を生きるよ!」

ソ「堕胎は自分の体も痛めませんか?」

ア「魔法はすべてを可能にした!今どき痛みを伴わずに堕胎なんか出来る。

 性病だって魔法で防げるじゃないか。

 宗教だけが未だに古い!」

ソ「あ、はぁ・・・」ソロはそれ以上言葉を挟まなかった。

とても危険な思想だが、彼女が強いのであれば、男に支配されていないのであれば、たしかに新しい性観念の世界を確立する可能性はある。そういう実験をする人間が少しは居てもよいのかもしれない。

ア「あたいを裁くのか?罰を受ける覚悟はある。

 でもあたいを裁くなら政治家も社長も全部裁いてから来い。奴らが裁かれないなら、あたいだって捕まる筋合いはない」

彼女なりに、平等を主張している。

そして、正論にも聞こえる。



さらに歩く。

ソ「畑だ」ソロは畑を見つけた。

農業をせっせと行う人というのは、荒くれとは異なる気質を予想する。畑に近づいてみると、一人で腰をかがめて作業する男の姿がある。

ソ「あのう」ソロは声を掛けてみる。

男は顔を上げてソロを見る。

男「・・・見ない顔だ」

ソ「今来ました。ここは、無政府世界というやつですか?」

男「そうだ。でも君のイメージしている理想郷とは違うかもしれない。

 話は長くなるか?」

ソ「はい。可能ならば」

男「茶でも淹れよう」男はソロを家へと招待した。


サザム

サザム 『王と悟り』
サザム キャラデザ by 絵夢さん

年齢:48歳 誕生日:11月22日 身長:174cm

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episode48 その日は本当にゆっくり過ごした。 洗濯物がたなびく下で、小川のちょろちょろという音を聞きながら、向かい側の壮麗な山脈を眺めていた。 翌日。ソロは動いてみようと思った。 玄関の大きな階段を上り、2階に行く。2階にも多くの部屋があるが、さらに3階に上る。 そこにはやはり王の間のような空間があった。 ここも荒らされているが、魔物にメチャクチャにされているふうとも違う。盗賊は金目のもの

 
 
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