episode52 『王と悟り』
episode52
里を端まで歩くと、まだ広大な雪山が広がっている。なぜここだけ雪がなく暖かいのか・・・なぜというか、そのために設けられた聖地なのだろうが。
そこからはぐれて探索に出ることは大きな危険を伴う。それなりの強さと覚悟がいる。しかし龍とはおそらく、そういった先にしか居ないのだろう。だから彼女は見つけられていない。

ソロは台地から下に降りる。
すると、古い立札が佇んでいるのを見つけた。寄ってみる。
「この上、シャンバラの台地」
ソ「あの無政府世界、シャンバラっていうんだな」
位置のわからなくなった者が、この立札を見て上に登るのだろうか。帰りはこれが大事な目印になりそうだ。
ソロは道しるべの発見に満足して先へ行こうとしたが、ふと立ち止まる。いや、こんなところに立札は必要か?微妙な違和感を覚える。
もう一度立札を見る。
ソ「うーん」
裏側まで見る。
ソ「あ!」
『古の勇者ローシュの旅日記~シャンバラの奥編~』
詩人というのはいやらしい奴だ。なぜなら、比喩表現を多用するからだ。
ソ「う、うん。まぁ耳が痛いけど(汗)」
ソロは苦笑いをし、なぜこんなところでそんなことを言うのか首をかしげつつも、先に進んだ。
空中を浮遊する魔物が多い土地だった。浮遊して吹雪でも吐いてくれば、これもドラゴンのように見えなくもない。しかしお目当ては、ドラゴンと言っても「竜」ではなく「龍」だ。
どうも世界には、大きく分けて2種類のドラゴンがいる。
1つは「竜」で、爬虫類のようなボテっとした体を持つ。
もう1つが「龍」だ。ヘビのような細長い体を持ち、東の国では神として崇められていたりする文化がある。
これらの魔物もドラゴンかもしれないが、龍ではないだろう。
ソロは冷静に状況を見ながら歩を進めた。
雪山は深く険しい。さらには手強い魔物がいる。
こんなところまで探索できる人間は数限られているのだ。そして、段階を踏んでこないと突破できない。高地に強くなければならず、寒さに強くなければならず、雪道に強くなければならず、遭難に強くなければならず、孤独に強くなければならず、魔物にも強くなければならず・・・。たとえばサマンオサの強い武器を持った戦士や魔法使いが、商人の馬車に乗ってセントベレスの4つ目の村までやってきたとしても、彼らはこの雪山の冒険には繰り出せないだろう。魔物には強いとしても、雪山には勝てないのだ。
現代人はよく「どこでもドアが欲しい」などと言う。しかし、旅人はそんなことは言わないものだ。段階を踏んでこないと、その先に進めないことがあることを、旅人は知っているから。
どこでもドアや貴族の馬車などで4つ目の村まで連れてきてもらったところで、シャンバラの台地どころかポタロ宮すら辿り着けはしない。苦手なプロセスを端折ってはいけないのだ。
そして、そのプロセスの右往左往も含めて「旅」だと、旅人は感じている。冒険とは、VRのゴーグルでは絶対に再現できない。
「真の自由を得るためには、さすらいがてらにあらゆる苦手を克服していかなくてはいけない」と、真の旅人はなんとなく悟っている。彼らはズルをしない。自分にズルをしない。そうして「自分」と向き合っているうちに、彼は強くたくましく、柔軟に、多才になっていく。誰も監視していない。何の通知表もない。自分と向き合っている。
登山に強くなりたいか?必ずしもセントベレス山に行く必要はない。セントベレス山を修行の聖地と崇めるのはお門違いだ。各々の地域や環境の中に、似たような試練は存在する。カレンから旅を始める者もいる。マーディラスから旅を始める者もいる。生まれはどこだって構わない。
冒険者界隈で、レベル5だとかレベル20だとか言うのは、単純な戦闘能力だけでなくこうしたサバイバル能力や突破力、タフさなどの目安を伺うものでもあるのかもしれない。数字を偽装している者もいるのだろうが。《ベギラマ》が使えればレベル15、というわけでもないのだ。
そして山奥に、大きな洞窟を見つける。洞窟には大きな鉄の扉があり、人か、もしくは知性を持った何者かの介入を確信する。
ゴクリ。
扉を開けようとするが、なんと錠前は凍って動かない!
怪しい。何かを求めてここまで来れたとしても、その多くは凍り付いた錠前に返り討ちに遭い、目的を果たせない。これは何かがありそうだぞ。
しかしソロには秘策があった。
ソ「《ベギラマ》!」
そうだ。ソロはかろうじて、炎の魔法の使い手でもあるのだった!その火は見事に錠前の氷を溶かした。
胸を高鳴らせながら中に入ろうとしたその瞬間・・・
ドガ!!
なんと、ソロは背後から後頭部を殴られた!
たまらずその場に倒れ込む。
戦「へっへっへ。ご苦労さんよ!」
なんと、シャンバラの里の入口で賭けをしていたあの3人組だ。
戦「おまえがあの女と話すところを見たもんでな。愚かなもんだぜ、みんな龍の血に夢中だ」
ソ「あ・・・あ・・・」ソロはまだ動けない。
戦「歯向かわないなら殺しはしねぇよ。くっくっく」
僧「そうら、《毒蛾の粉》をくれてやる」
僧侶らしき男はソロに《毒蛾の粉》を投げつけた。ソロの体は痺れてしまった!
盗「結構貴重品なんだぜ、そいつも。はっはっは」
3人はソロをまたいで扉の奥へと入っていく。



