episode76 『王と悟り』
episode76

場面はソロの冒険に戻る。
ガンディーノの属国ヨロハマにて、防具を特注したソロだ。
お金をたくさん使ったので、防具の仕立てが完了するまでの3日間は、戦闘で暇つぶしをすることにした。
グレイグがいるので戦闘は楽になったが、しかし報酬のゴールド宝石は山分けしなければならなくなる・・・かと思いきや、グレイグは充分な蓄えを持っているらしく、「2人の戦闘で得たゴールドもソロが持っていけばいい。少なくとも当面は」と言ってくれた。盾や兜や、王道の剣や、ガンディーノの上級兵士が装備しているくらいの武具が調達できるまでは、ソロの貯蓄を優先したほうがいい、とグレイグは気を利かせるのだった。
ソ「えぇ、いいのですか!?」
グ「私はまるで金に困っていないからな。風俗も酒もやらないなら、金などどんどん貯まっていく。
金がないと言っている奴は、生活必需品でないものを買いすぎなのだ」
3日後、無事に特注の防具を手にする。
ソ「わぁ、強くなった気がするー!」
店「鎖を編んだ防具は剣の斬りつけには強いが、槍や弓矢なんかには弱いから気を付けるんだよ」
良い買い物をした!
グ「ところで店主よ。
以前よりも物騒な雰囲気になってはいないか?」
店「あぁ、リンガイアから人が来るようになったからですな。
あそこは盗賊みたいな奴が多いんですよね。
まぁタキシードを仕立てるような奴は少ないんで、うちの店なんかはあまり影響を受けてませんけどね」
ソ「リンガイア!たしかに盗賊みたいな人が多いんですよ」
グ「何をしに来るのだ?」
店「ヨロハマのファッションなど人気が広がってるみたいですけどね。
あとはね、なんか最近この街の近くに、降龍寺(こうりゅうじ)とかいう社(やしろ)が出来たんですよ。それを拝みにくる余所者が増えた、なんて宿屋の知人は喜んでましたけどね」
ソ・グ「降龍寺!?」
グ「それを拝むとどうなるのだ?」
店「よく知りませんけどね。私は信仰とか好きじゃありませんから。
龍神がお願いごとでも叶えてくれるんじゃありませんか?」
グ「カルト宗教ではないのか・・・!?」
店「いかがわしい教祖の話なんかは聞きませんけどね」
行ってみるか。
聞き込みによると、降龍寺はヨロハマの街のはずれにある。

古い寺を買い取り、真っ白く塗り替え、立派な龍神のオブジェなど飾って派手に人目を引いているのだった。
そこに向かう人の姿は少なくなく、たしかに余所者らしき姿が多い。そして盗賊のような雰囲気をした、おそらくリンガイア方面から来たであろう者が多い。かと思えば女性の姿もあるし、商人の姿もある。
境内には参拝の列が出来ており、2人もそこに並んでみる。
カルト教祖のような者が大演説でもしているのかと思ったが、そういう姿はない。列が短くなると、賽銭箱の様子が見えてくる。皆、何かぶつぶつ言いながら賽銭を投げ入れている。それだけなら寺社によくある風景だが、その額が大きい!ジャラジャラジャラ!
グ「ここでは幾らくらいの賽銭を投げるのだ?」グレイグは列の前の者に尋ねる。
男「あぁ?100ゴールド(約1万円)が相場って言われてるぜ。でも俺は200ゴールドだ。龍神に気に入られないとな!」
ソ・グ「100ゴールド!?」
グ「喜捨の額として大きすぎないか?」
男「だって龍神が降臨してくれるかもしれないんだぜ?そりゃ大金も注ぐだろ」
グ「なぜ龍神に会いたいのだ?そんな者がいるのか?」
男「そりゃオマエ・・・おっと、知らないなら話す必要もねぇぜ。限りあるものだからな!
あばよ!」
男は自分の番になると、やはり大金の賽銭を投げ入れ、
男「龍神様!俺の前に降臨してくれ!!」と大きな声で祈願するのだった。
グ「なんなのだこれは・・・!?」
ソ「あー!グレイグさん、これ賽銭なんて払わないほうがいいですよ」
ソロは、賽銭箱の前に掲げられた大きな緑色の龍の絵を見て言った。
グ「なんだ?」
ソ「とにかく帰りましょ。賽銭がもったいない」
ソロはグレイグの腕を引っ張って、参拝の列から離れた。
グ「何か知っているのか?龍神について」
ソ「ちょっと前にセントベレスって山脈を越えてきたんですけどね」
グ「あぁ、東に続く険しい山脈だろう」
ソ「あそこには龍の伝説があるんです。
なんでも、女性は龍の血を飲んだら、不老不死になれるとかなんとか・・・」
グ「龍の血で不老不死だと!?」
ソ「その真相はわからないですけどね。
つまりこれ、カネ儲けになるのでしょうね!
『龍神を祀るお寺だ』って宣伝したら、こんなふうに遠くからお賽銭払いに来るんですよ、大勢。
お賽銭箱置いておくだけでガッポリだぁ」
グ「寺の役割を完全に逸脱しているぞ・・・!
寺とは説法をするための場所だろう。そして学びに行くための場所だ」
ソ「それにこんなところで拝んだって、龍には会えないですよ」
グ「何か知ってるのか?」
ソロは、セントベレス山脈をさすらったときの出来事を一晩掛けて語った。
グ「そんな旅をしてきたのか、そなたは・・・!!!」
グレイグはすこぶる興奮するのだった。



