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エピソード1 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 2分

プロローグ




修道院って知ってる?

私も知らなかったわ。実際に行ってみるまでは。

教会みたいなところよ。

教会は、日曜日にだけ行くでしょう?

でも、修道院は毎日行くところなの。

毎日行くっていうか、毎日、そこで暮らすのよ。





エピソード1


「パッカラパッカラパッカラパッカラ…」

「何を言っているの?マリアンヌ。」

「パッカラパッカラパッカラパッカラ…」

「何の呪文なの?それは。

 お願いだから、悪魔を呼び出したりしないでちょうだいね?

 もう少しで着きます。着いたらオムレツが食べられますから、

 お願いだから、おとなしくしててちょうだい。

 あなたももう10才なんですから、お行儀よくできるでしょう?」


はぁあ。タイクツ。

私は大きなアクビをして、馬車の窓につっぷして、

今にももう、眠りに落ちそうだった。

パッカラパッカラが何の呪文かって?

呪文じゃないわ。馬車のマネをしただけよ。

馬車ったら、ずーっとパッカラパッカラ言ってるの。

3日前から、今日だって、1時間も10時間もずーっとよ。飽きないのかしら?

私には耐えられないわ。飽きっぽいからね、私は。


眠るのもダメって言われてたから、

私は眠気を覚ますために、ポシェットから1枚のポストカードを取り出したわ。

海に浮かぶ、立派なお城の絵なの。

ステキでしょ?ステキなのよ。世界に1つしかない風景よ、きっと。

モン・サン・ミッシェルっていうらしいわ。

私、この絵を見てると、胸がトキメくの。

私いつか、ここに行きたいの。

お母様にもおねだりしてみたわ。でも、ダメだったの。

お母様は言ったわ。

「行きたい場所があるなら、自分の足で行くのよ。自分でお金を貯めて、ね。

 親なんかに頼ってはだめ。男に頼ってもだめ。自分のチカラで行きなさい。

 そうじゃないと、行ってもあまり感動しないでしょうから。楽しめもしないのよ。

 他人に連れていかれるなら、どこだってそれは、地獄なんですからね。」

こんなに力説するんだから、お母様は連れていってはくれないのよ。

もうあきらめてるわ。お母様にはさからえないの。


うつろな目でポストカードを眺めていたら…

私、ビックリしたわ!

ポストカードの後ろにも、ポストカードが見えるんだから!

ううん。ポストカードじゃなくて、

海に浮かぶお城が、見えたのよ!!本物が!!

私は興奮して、大声を出しそうになったわ。

「わー…」

でも、すぐに気づいて、両手で口をふさいだわ。

おしゃべりも禁じられているの。静かにしていないといけないのよ。

夢にまで見たあこがれの場所が、目の前にあるのに、

そこに行けないばかりか、ほめたたえることさえ許されない。

世界一不幸ね、私って。


眠るまい眠るまいと思ってたけど、

やっぱり、眠ってしまったわ。タイクツには勝てなかったわ。



『イエスの子らよ』

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