エピソード1 『オーボエにまつわるエトセトラ』
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- 2023年4月10日
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エピソード1
私が、オーボエという楽器に興味を持ったのは、
NHKの長寿番組である、「小さな旅」がキッカケだ。
この番組の主題歌で、
オーボエが、とても哀愁に満ちた音色を、奏でていたからだった。
それは、
小学生にも上がる前のことだったと思う。
私の母親は、昔から、
NHKばかり見ていたから、
日曜の朝は、毎週毎週、
無意識的に、その切ない旋律を耳にしていた。
私は、
世界中の誰もが、このオーボエという楽器の音色に、
特別な哀愁を感じるものだと、勝手に、思い込んでいた。
それくらい、強烈なイメージを、持っていた。
母親に、
「ねぇ、あの曲のあの楽器、ナニ?」
と尋ねても、
「は?何のことなの?」
と、全く要領を得ない…
父親や、学校の友人、果ては、担任にまで、
「ねぇ、『小さな旅』の主題歌の、あの楽器、なぁに?」
と尋ねたのだけれど、誰一人として、
「あー!あれ、イイよねぇ♪」
などと解ってくれるヒトは、居なかった…
私は、小学校4年生になって、
吹奏楽部の仮入部に赴いたとき、
夢中で、あの楽器の音色を探した。
金管も木管もわからなかったから、
とにかく、しらみつぶしに、様々な楽器の先輩に、音を聞かせてもらった。
オーボエのサヤカ先輩の音色を聴いたとき、
「あ!コレ!!
…のようで、なんか違うような…??」
「ニアピン賞」といったカンジではあったけれど、
きっと、一番手掛かりを多く持っている楽器だろうし、
サヤカ先輩とやらの、すっとぼけた雰囲気が可愛らしくて、
私は、吹奏楽部のオーボエ奏者になることを、決めたのだった。
…サヤカ先輩は、一体、
私よりも後輩なんじゃないかってくらい、
おっとりしていて、危なっかしいヒトだった。
もう、5年生なハズなのだけれど、
2年生くらいな知能で、精一杯というカンジがする…
それなのに、
音楽の譜面は、難しいモノでも、スラスラ読んだ!!
オーボエは、ソロ楽器の一種だから、
複雑な、歯抜けの8分3連とか、5連符とか、
小学生の取り組む曲でさえも、出てくることが、ある。
…サヤカ先輩に限らず、音楽をやる人たちというのは、
「音楽に限定して働く脳みそ」
みたいなモノを、コッソリ持っている気がする…。
だから、
音楽に携わっていると、
「5教科で良い点数を取るだけが、秀才ではナイのだな」
という価値観が、自然と、身に付いてしまう。
音楽愛好家で、学歴崇拝の強いヒトなど、
ほとんど、居ないことだろう。
…すると、必然的に、
音楽愛好家たちは、「感性」という曖昧な長所を、
尊重・肯定出来るヒトたちなので、
一緒に居ると、とても、安心する♪
学歴や収入のハナシばかりするヒトたちは、
一緒に居ると、とても疲れてしまう…
「吹奏楽部」という環境は、
小、中、高、大、通じて、
ある種の「避難所」みたいな便利さが、あった。
とりあえず、そこに駆け込んでさえおけば、
ココロ穏やかに接せられる仲間が、すぐに、作れるのだ。
…そういうワケで、
私は、自然と、
大学までずーっと、オーボエを吹き続けた。
『オーボエにまつわるエトセトラ』



