エピソード10 『碧い鳥 -最高の医療は何だ?-』
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- 2023年3月30日
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エピソード10
また順番に、次のドアをくぐった。
次の部屋は、植物園みたいに、たくさんの鉢植えが置いてあります。
そして、あちこちから良い香りが漂っています。
「ハーブ!?」陽菜はたまらず、声を上げる。
「そうです正解。ハーブの部屋です。
のどがかわいたことでしょう。ハーブティでも飲むことにしよう。
お嬢さん、何のハーブが好きですか?」
「え、陽菜?陽菜は、ローズヒップかなぁ。」
「…と、それにハイビスカスを混ぜたのが絶品だったりするんですけど!」
珍しく、秀樹が口を開いた。
「ははは。ハーブティもたしなんでらっしゃるようですな。
乾燥ハーブでよろしければ、どちらも出してさしあげられますよ。」
おじさんは戸棚に歩み寄ると、
無数に並んだ瓶の中から、ローズヒップとハイビスカスを選び取った。
そして、脇に設置されたガスコンロで、お湯を沸かしはじめる。
「ハーブティも、正しく活用されていないんですか?」
陽菜は、先回りして尋ねる。きっと、そういう展開なのでしょう。
「そうなんですねぇ。
ハーブティも、先進諸国民にとってはもう、医療ではなく嗜好品ですね。」
おじさんは、「やれやれ」といったポーズで言います。
「何がタブーで、どうやって飲んだら効果的なんですか?」
「じゃぁお嬢さん、逆にお伺いしますが、
サプリメントを飲む際、毎日違う種類を飲んだりなさいます?」
「いや?1ヶ月くらいは同じのを飲むと思います。」
「なぜです?」
「だって、1回だけ飲んだくらいじゃ、ほとんど意味ないから。」
「そうですよね。じゃぁ、ハーブティは、どうです?
ローブヒップだけを、1ヶ月飲み続けますか?」
「いえ?…あ!!」
「そうです。おわかりになられたでしょう?
ローズヒップがどれだけビタミンCに優れていても、
気まぐれに一杯飲んだくらいでは、健康増進には役立たんのです。
ハーブはサプリメントよりもずっと控えめですから、
すると、サプリメントよりももっと長期間、一途に飲み続けなければなりません。
そのような飲み方をしている日本人は、どれくらいおられます?」
「…あははは。ゼロかな。」
「そうなんですよ。
ハーブ業者は、たくさんのハーブを売りつけたいので、
『一種類だけを飲み続けましょう』なんて言いません。
とはいえ、まぁ、
専門家ですら、『一種類だけにすべき』だなんて、気付いていないのです。
ですが、
専門家から教わらなくても、ちょっと頭を働かせれば、わかるはずのことなんですが…
結局、先進諸国のハーブ愛好家は、健康増進にはあまり興味がないのでしょう。
色とりどり香りとりどりのハーブティを、ぜいたくに楽しみたいだけなのです。
現代、先進諸国にとってハーブティは、
薬品ではなく、完全に、『嗜好品』になり下がってしまいましたね…。」
お湯が沸いた。
おじさんはこなれた手つきでガラスポットにお湯を注ぐ。
「それと…
大変申し上げにくいんですが、
お嬢さんにはローズヒップは不向きでしょうなぁ。」
「え?どうしてですか!?」
「『地産地消』という言葉、聞いたことあるでしょう?
『その土地でとれた野菜が、最も体に合う』という摂理です。
これ実は、ハーブティにも言えることなんですよ。
ローズヒップは、もともとイギリス人のための植物です。
ですから、彼らがイギリス人のアイデンティティを生きる上では、
ローズヒップは、役に立ちます。
しかし、あなた方日本人には、あまり合わないんですよ。」
「そうなんですか!?」
「ええ。ローズヒップだけじゃありません。
カモミールもジャスミンも、日本人には合いません。
日本の本州には、原生していないでしょう?
じゃぁ、日本に原生しているハーブは、なんです?」
「…えーっと、ドクダミ茶?」
「そうです。
ドクダミ茶は、日本人に最も合うハーブですよ。
野草は臭くて鬱陶しがられているようですけども。ははは。
…そう。
ドクダミ草であれば、お金を出して買う必要すらないはずです。
近所にたくさん原生しているでしょうから、
それを摘んできて陰干しすれば良いんですよ。」
「うわー!そんなこと、ほとんど誰もやってない…。」
「ははは。そうなんですよ。
残念なことですよね。
身近に最も優れたものがあるのに、それは無視して忌み嫌い、
そして、体に合わない輸入品を、高いお金で買ってくる…
日本人はどうも、
他の先進諸国民以上に、そうした不毛な行動が多いようですが…」
『碧い鳥 -最高の医療は何だ?-』



