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エピソード11 『クラシックの革命児』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月11日
  • 読了時間: 3分

エピソード11

第1部は、それ以降も、

「みんながどこかで聞いたことのあるクラシック曲」ばかりを、

詰め込んでいた。

たとえクラシックでも、

知っている曲であったり、キャッチーなメロディラインの曲だと、

素人でさえ、眠くはならずに楽しめる。

中島さんとやらは、観客の心理をよく理解出来ているし、

彼らへの配慮を、最大限に重要視しているようだった。


でも、これは決して、「打算的な顔色伺い」ではなかった。

彼は、「キャッチー且つ、テクニカルな曲」を、好むらしい。

玄人が喜ぶような要素も、ふんだんに盛り込んでくるのだ!

おそらく、自分でアレンジを加えている曲も、あると思われる。

単調なポップス曲を、大胆に転調させたり、短調に平行移調させたりして、

新鮮な展開をして見せた!

そのようなアレンジ曲の譜面も、出回ってはいるだろう。

既製品か彼のオリジナル・アレンジかは、わからないけれど、

とにかく、「素人も玄人も、両方喜ばせる」

ということが、常に念頭にあるようだった!


彼は、「お高くとまっている」と揶揄されやすいクラシック音楽を、

お茶の間の座布団まで、引きずり下ろしてしまった!!



40分ほど演奏すると、15分の休憩に入るらしかった。

中島さんとやらは、再び客席に向き直り、話し始めた。

「えー、皆様。ご苦労様です。

 休憩の後、再び奏者一同が袖から入場致しますが、 

 拍手によるお出迎えは、頂かなくて結構です(笑)

 音楽を聴きに来られて、筋肉痛で帰られたんでは、元も子もありません(笑)

 拍手はもう、充分に頂いておりますので、どうぞ、無理をなさらぬよう…」

そう言い切ると、深く礼をして、袖へと消えていった。


やはり彼は、

「拍手が多過ぎる」というクラシック・コンサートの無意味な風潮を、

強く懸念していることが解った!

ボクと同じようなことを考える人間が、居るには居るようだ。



休憩時間のヒマ潰しに、

ボクは、ロビーで貰ったパンフレットを再び開いた。

そして、指揮者紹介の欄を、まじまじと眺めた。


よくある指揮者紹介で、よくある経歴だった。

よくある「輝かしい経歴」だった。

海外含め、様々な楽団で指揮を振り、客演をし、指導も行ってきたらしい。

ナントカ賞を、幾つか受賞しているらしい。

つまり、

「専門家たちに賞賛される、輝かしい実力派」なのだ!



通常、肩書きが立派になればなるほど、

厳格な振る舞いしか出来なくなっていくし、

そうでなくても、「バカな振る舞い」は出来なくなる。

市場評価を落とすのが、怖いからね。


でも、どうやらこのヒトは、

「結果的」には様々な専門家から絶賛されているけれども、

専門家からの絶賛など、大して欲していないらしい。

だから、市場評価が落ちることを恐れずに、

「大胆な改革」を実践出来てしまうのだ!!



また、指揮者には、怒りっぽく神経質なヒトが多い。

けれども、彼は、

それらとは掛け離れているようだった。

ヴィオラのパート紹介のコラムが、あれだけユーモラスであるところを見ると、

普段から、ユーモアを大切にしながら指揮を振っているのがわかる。

最高責任者が怖いと、冗談半分のコラムなど、プラグラムに載せられないよ(笑)


『クラシックの革命児』

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