エピソード11 『首長の村の掟 -真実の物語-』
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- 2023年3月12日
- 読了時間: 3分
翌朝は、
9時頃に宿をチェックアウトして、近場を歩いた。
これは、
山岳民族の村々を巡るツアーに、参加するためだった。
そのようなツアーを催行する、小さな旅行会社は、
チェンマイに、腐るほどある。
腐るほどあるということは、玉石混交ということだ。
たいていは、安宿が、ツアー会社も兼ねている。
僕の泊まっていた宿は、ツアー商売を行っていなかったので、
別途、そのような会社を、探さなければならなかった。
宿の主人に訊くと、
「気の良い日本人夫婦が行っているオフィスが、近くにあるぞ」
という情報を、教えてくれた。
教わった場所に行ってみると、
そこは、庭の広い、一軒家だった。
自宅・兼・職場ということだ。
庭には、20畳ほどの東屋があった。
その屋根の下に、パソコンデスクを広げて、
1人の日本人男性が、何やら仕事をしていた。40歳くらいだろうか。
「すみませーん。
ココって、山岳民族のトレッキング・ツアー、やってます?」
僕には、この家が旅行会社のようには見えなかったので、
半信半疑なすっとんきょーな声で、尋ねた。
男の人は、そのようなリアクションには馴れっこだったらしく、
ノンキに笑いながら、「その通りだよ♪」と、答えてくれた。
とても穏やかな人で、且つ、ステキな笑顔をしていた。
「…でも、
今日の便は、もう、出てしまったよ?
明日の便で良ければ、承ることが、出来るけれど…」
「えー!?マジっすか!?
どうしようかなぁ…。
僕、あんまり、日程に余裕が無いんスよ…」
「他のツアー会社を当れば、
まだギリギリ、間に合うところもあるかもしれない!
知り合いに、当ってみようか?」
…この人は、
「自分の会社に客を誘導すること」よりも、
「客の予定」を、何よりも優先する聖者なのだ!
しかも、
自分の利益にはならないというのに、
電話で問い合わせることまで、提案してくれている!!
僕は、直感的に決めてしまった。
「日程が圧迫されるとしても、この人のツアーに、参加しよう!」
僕は、その旨を伝えた。
「お兄さんのところで参加するから、焦らなくてイイです♪」
…お兄さんは、呆気に取られていた(笑)
…何という名前の男性だったか、思い出せない…
サツキとメイのパパみたいな人だったから、
クサカベさんと呼ぶことにしよう。
クサカベさんは、
無数にある、山岳民族トレッキング・ツアーの中でも、
独自のこだわりを持って、幾つか、独自のツアーを組んでいた。
ツアーに同行するのは、現地のタイ人なのだけれど、
「全ての責任は、私たちが取る」
という、確固としたポリシーを貫いていた。
奥さんは、そのツアーのために、
山岳民族のある村に、頻繁に行き来して、
友好と信頼を築いているらしかった。
…厳密に言えば、
仕事のために出向いているのではなく、
個人的に、純粋に、
その山間の村に興味があって、赴いているのだった!
いつの間にかに、村人たちと仲良くなってしまって、
そして、村の中に宿泊施設を建てる許可すら、貰ったらしい!
…といっても、
景観を壊すようなコンクリート・ホテルでは無く、
地元の彼らと同じ作りの、簡素な木製ロッジなのだ。
クサカベさんたちが重要視したのは、
「現地の人たちと同じような環境で、寝泊りすること」
だったのさ♪
僕の、今回の渡航のメイン・イベントは、
この、「山岳民族の村々に訪れること」だったのだ。
とにかく、
「ウルルン滞在○」みたいな体験が、してみたかった。
…あの番組自体は、正直、あまり好きでは無かったけれど、
あのような土着民族とのふれあいには、憧れていた。
そして、
僕は、首長族という人々に、会ってみたかった。
けれども、残念ながら、
クサカベさんの催行している、2泊3日のツアーでは、
首長の村は、訪れない。
それでも、僕は、
クサカベさんのところで、お世話になりたいと思った。
それだけの魅力が、この夫婦には、あった!
そして、
「首長の村には、別途、自分で行けば良い」と考えた。
臨機応変であることは、「旅人」にとって、命よりも重要だ。
『首長の村の掟 -真実の物語-』



