エピソード11 機転
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- 2023年3月10日
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エピソード11 機転
絶体絶命のピンチを救ったのは、なんと、ロッドであった。
兄のロッドではない。ぬいぐるみのロッドである。
「シスター。この子たちを見逃してやってよ。行かせてやってくれ。
悪さをしようっていうんじゃないんだ。」
ロッドは、シスターの心の中に話しかけたのだ。
「あら!これは、神の声…!?」
だれもかもがロッドの声を聞けるわけではない。
シスターは敬虔(けいけん)な宗教徒であった。宗教徒には精霊の声を聞く者は多いし、
そうした現象を理解する者も多い。
ミシェルの選んだ「教会」という出発点は、限りなく100点に近かった。
シスターは、事情をくんでくれた。
親戚の一人が、北の町まで車を出しても良いと言ってくれた。
シスターの親戚は、二人を車に乗せてくれた。
いくばくかの食料まで分けてくれた。
二人は、北の町までは行かず、
例の森を抜ける道の途中で、降ろしてくれと請(こ)うた。
運転手の男はもちろん、しぶい顔をした。
シスターには「北の町まで」と頼まれているし、
うす暗い森の中に、幼子(おさなご)を置いていくわけにはいかない。
ミシェルは100ぺんも懇願(こんがん)したが、
やはり運転手の男はそれを認めはしなかった。
「とりあえず息苦しくなっちゃったから、
いっかい外に出してもらえませんか?それくらいはいいでしょ?」
男は、「それくらいなら」とドアを開け、二人に外の空気を吸わせた。
「ちょっとションベンしてくるわ。」
男は自分も息抜きを求め、木の影に回った。
そのとき!
ミシェルはハっと思いつき、なりふりかまわずさけんだ!
「キャロル!
藪(やぶ)を向こうにまっすぐ走るのよ!まっすぐまっすぐ走って!
お姉ちゃんは反対側に走るわ!」
そう言い終わる前に、ミシェル自身は走り出した。
「え?え??」
取り残されたキャロルは、混乱のきわみにおちいった。全く意味がわからない。
「走りな!ミシェルの言うとおりにするんだ!」ロッドは言った。
キャロルはすでに泣き出していたが、
涙をふくまもなく、言われたとおりに走りだした!
運転手の男もまた、何が起きたのかわからず、呆気(あっけ)にとられた。
小便が途中なので動くわけにもいかず、
それが済んでも、
いったいどちらの幼子(おさなご)を追いかけてよいものか、わからない。
結局、動くことは出来なかった。
10分ほど待ってみたが、二人がもどってくる気配はなかったので、
仕方なしに、車をもどらせることにした。
『ミシェル』



