エピソード12 『「おとぎの国」の歩き方』
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- 2023年3月5日
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翌日僕は、朝早くに爺さんの家を発った。
まず、にぎわう国境に戻って、両替をし、防寒具を調達した。
目的地はアジナに決まったものの、どうやって行こう?
バスで行くのが定石だろうけど、バスターミナルらしきものはナイ。
少なくとも、この国境の賑わいの中には、ナイ。
僕は、車に乗ってる人や車のそばにいる人に近寄っては、
「アジナ?アジナ?」と、声をかけまくった。
バスである必要はナイんだ。タクシーだろうが物流トラックだろうが、
とにかく、アジナに向かってさえくれれば、何でもいいからね。
すると、案の定、
僕の「アジナ?」に「アジナ!」と返してくれるオッサンを発見!
「アジナ行くの?」と日本語で訊くと、
「アジナ!アジナ!」と大きく頷いている。よくわかんないけど、アジナに行くんだろう。
それは、8人乗りくらいのミニバンだった。
僕は促されるままにその車の助手席に乗ったけど、すぐに出発したりはしなかった。
やはり、簡易バスであるらしかった。他の乗客で埋まるまで、待つんだ。
20分もすると、バンは買い物袋を抱えた人でいっぱいになった。
お客たちの荷物を車の屋根にも積みこむと、
車はようやく、出発した。
車は、山道をくねくねと登っていった。
インド国境からチベットまで、標高がどんどん上がっていくんだ。
アジナがどの辺りなのかよくわかんないけど、
あまり高所じゃないといいなと、ドキドキしながら願っていた。
防寒具は買ったけど、やっぱり寒冷地はキツいからね。
およそ山しか見えない雄大な景色の中を、車は走っていく。
僕はやがて、心地よい揺れにいざなわれ、居眠りをはじめた。
2時間くらい経ったらしかった。
「アジナ!アジナ!」と、真横で運転手のおっちゃんが叫んでいた。
「あ、着いたの!?」とあわてて飛び起き、
いくらかのお金を払って、僕は車から降りた。
「あり!?」
よくよく周りを見渡してみると、まだ山道の途中じゃないか!
車はすでに、残りの乗客を乗せたまま、走り去ったあと…
なのにここは、
アジナじゃなさそうなばかりか、村さえナイ。停留所もナイ。
ここが三叉路であるところをみると、
おそらくここは、国境から見て、「アジナ方面」ではあるんだろう。
そして、あのバスの行き先が、ここからはアジナから反れるんだろう。
だから僕を、ここで降ろしたんだ。途中までしか行かないのに客を乗せるというのは、
東南アジアではよくあるよ。
うーむ。それにしたって、辺鄙なところに取り残されちゃって…
『「おとぎの国」の歩き方』



