エピソード12 『沈黙のレジスタンス』
父と家族は、数日後にセルチュクに戻っていったけど、
僕はガットキアにとどまった。
父と親戚を強引に説得して、一人だけこの村に残った。
この事件を、ほったらかしにしたくはなかった。
しかし、デニーは何も動かなかった。
やがて、
ラーマ法王指揮による地下都市の発見は、ニュースとなってかけめぐった。
彼らはもちろん、原初教徒への迫害・攻撃などという話はしなかった。
地下1階にはそこかしこにワイン樽が転がっていたため、
「昔の人たちの巨大な酒蔵だ」という見解で、真実は隠ぺいされた。
僕やデニーを狙うやつらがいるかもと、しばらくおびえていたけれど、
どうやらそれはなかった。
子供がたまたま発見しただけだと、彼らは思ったらしかった。
僕が古い文献を読んだなどとは、彼らは思わなかったらしい。
遺跡の作業員が何人か訪れ、調査や発掘をしていったけど、
1ヶ月もしないうちに、それは打ち切られた。
そして、ラーマ法王からも村人からも、やがて忘れられていった。
その静まる波を見計らって、
デニーは長い沈黙を破った。
デニーは、村の子供たちを総動員した。
デニーの言うことを素直に聞く子など、居はしないが、
「このプロジェクトが上手くいったなら、
オマエたちはトンネル掘りに駆り出されずに、ずっとこの村にいられる」
とお触れを出した。
半信半疑のまま、子供たちは集った。全員ではないが、16人もいた。
デニーは、僕とチャゴスと16人の探検隊を引き連れて、
再びあの地下通路へと潜っていった。
入り口は封鎖されていたが、
見張る者はいないので、簡単に突破できた。
デニーは隊員に、妙な指令を出した。
「そこらじゅう掘りまくれ!」と。
村の子供たちが、最も得意としている遊びであった。
僕もデニーも、スコップを持ってそれに加わった。
僕は掘りながら、デニーにこの指令の意味を尋ねた。
「オレはな、
この地下都市は、1階だけじゃないんじゃないかと思ってるんだよ。
オレが、『城』の小部屋からこのフロアを発見したように、
このフロアを掘ってれば、地下2階が見つかるんじゃないかと思ってさ。」
「そういえば…!
地下都市には、2万人も住んでたらしいんだ。
このフロア広いけど、このフロアだけで2万人が暮らせたとは、思えないよ。」
「だろう?
オレは人数とか知らないけどな、
逃げ隠れたヤツらの気持ちになって、考えてみたんだ。徹底的に考えた。」
「うん。」
「迫害を逃れて、ここにアジトを求めたんだろ?
であれば、簡単に見つかるわけにはいかない。」
「だから、地下に掘ったんでしょ?
デニーが見つけるまで誰も見つけられなかったんだから、成功だね。」
「そうだけど、それじゃ甘い。
何万人も守るんだろ?真剣勝負で隠れ続けるんだろ?
それを考えたら、トラップは1つじゃ足りない。
オレがリーダーだったら、
1つのトラップじゃ満足しない。それじゃ同胞は守りきれない。
だから、地下1階は酒蔵にしたんだろう。
であれば、万が一このフロアが発見されても、
『酒蔵にすぎない』と思わせることが出来る。『人が隠れてたりはしない』とな。
きっと、どこかにまた隠し階段があって、
更に深いフロアがあるに違いないんだ。」
発掘は続けられた。
地下1階だけでも思いのほか広く、
子供たちはロウソクを10本も持参し、食料まで持ってくるようになった。
そうして作業を続けること、3日…
ドサドサドサ!
イゼットの掘っていた床が、にぶい音を立ててくずれ落ちた!
『沈黙のレジスタンス』



