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エピソード12 『沈黙のレジスタンス』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月8日
  • 読了時間: 3分

父と家族は、数日後にセルチュクに戻っていったけど、

僕はガットキアにとどまった。

父と親戚を強引に説得して、一人だけこの村に残った。

この事件を、ほったらかしにしたくはなかった。

しかし、デニーは何も動かなかった。


やがて、

ラーマ法王指揮による地下都市の発見は、ニュースとなってかけめぐった。

彼らはもちろん、原初教徒への迫害・攻撃などという話はしなかった。

地下1階にはそこかしこにワイン樽が転がっていたため、

「昔の人たちの巨大な酒蔵だ」という見解で、真実は隠ぺいされた。

僕やデニーを狙うやつらがいるかもと、しばらくおびえていたけれど、

どうやらそれはなかった。

子供がたまたま発見しただけだと、彼らは思ったらしかった。

僕が古い文献を読んだなどとは、彼らは思わなかったらしい。

遺跡の作業員が何人か訪れ、調査や発掘をしていったけど、

1ヶ月もしないうちに、それは打ち切られた。

そして、ラーマ法王からも村人からも、やがて忘れられていった。


その静まる波を見計らって、

デニーは長い沈黙を破った。


デニーは、村の子供たちを総動員した。

デニーの言うことを素直に聞く子など、居はしないが、

「このプロジェクトが上手くいったなら、

 オマエたちはトンネル掘りに駆り出されずに、ずっとこの村にいられる」

とお触れを出した。

半信半疑のまま、子供たちは集った。全員ではないが、16人もいた。


デニーは、僕とチャゴスと16人の探検隊を引き連れて、

再びあの地下通路へと潜っていった。

入り口は封鎖されていたが、

見張る者はいないので、簡単に突破できた。

デニーは隊員に、妙な指令を出した。

「そこらじゅう掘りまくれ!」と。

村の子供たちが、最も得意としている遊びであった。


僕もデニーも、スコップを持ってそれに加わった。

僕は掘りながら、デニーにこの指令の意味を尋ねた。

「オレはな、

 この地下都市は、1階だけじゃないんじゃないかと思ってるんだよ。

 オレが、『城』の小部屋からこのフロアを発見したように、

 このフロアを掘ってれば、地下2階が見つかるんじゃないかと思ってさ。」

「そういえば…!

 地下都市には、2万人も住んでたらしいんだ。

 このフロア広いけど、このフロアだけで2万人が暮らせたとは、思えないよ。」

「だろう?

 オレは人数とか知らないけどな、

 逃げ隠れたヤツらの気持ちになって、考えてみたんだ。徹底的に考えた。」

「うん。」

「迫害を逃れて、ここにアジトを求めたんだろ?

 であれば、簡単に見つかるわけにはいかない。」

「だから、地下に掘ったんでしょ?

 デニーが見つけるまで誰も見つけられなかったんだから、成功だね。」

「そうだけど、それじゃ甘い。

 何万人も守るんだろ?真剣勝負で隠れ続けるんだろ?

 それを考えたら、トラップは1つじゃ足りない。

 オレがリーダーだったら、

 1つのトラップじゃ満足しない。それじゃ同胞は守りきれない。

 だから、地下1階は酒蔵にしたんだろう。

 であれば、万が一このフロアが発見されても、

 『酒蔵にすぎない』と思わせることが出来る。『人が隠れてたりはしない』とな。

 きっと、どこかにまた隠し階段があって、

 更に深いフロアがあるに違いないんだ。」


発掘は続けられた。

地下1階だけでも思いのほか広く、

子供たちはロウソクを10本も持参し、食料まで持ってくるようになった。

そうして作業を続けること、3日…


ドサドサドサ!

イゼットの掘っていた床が、にぶい音を立ててくずれ落ちた!



『沈黙のレジスタンス』

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