エピソード13 『クラシックの革命児』
- ・
- 2023年4月11日
- 読了時間: 2分
エピソード13
中島さんは、第3部は一転、
凛々しいコンサート・スーツを着て、登場した。
そして、
無言のまま、指揮棒を振り上る。
奏者は一斉にブレスをし、そして最初の音に備えた指の形で固まる。
会場は一転、ヨーロッパの年代もののコンサートホールのような重厚感に包まれる。
中島さんが最後に一人、静寂を切り裂くように息を吸うと、
その指揮棒を力強く振り下ろした。
演目は、「ローマの祭り」だった。
25分にも達する、壮大な、コテコテの、交響曲だ!
吹奏楽部員には、お馴染みの曲だと思われる。
学生の吹奏楽がやるのは、曲の一部分だけだろうけれど。
割とハデな曲ではあるので、
眠らないヒトは、全く眠らないと思われる。
クラシックに疎いヒトであれば、
「公約」通り、ぐっすり眠ってしまうだろう。
どちらでも、良いのだ(笑)
この楽団自体は、アマチュア楽団なので、
そんなに上手いわけではなかった。
それでも、充分に、
「これが、クラシックの真髄ですよ!」
というものは披露してくれていた。
中島さんとやらは、
1部、2部、3部を、非常にハッキリ色分けしていた。
プロデュースの天才にして、実演の天才にして、ナレーターの天才だった!
そんなヒトが、
大した給料にもならないアマチュア楽団で、
楽しそうに、指揮を振っているのだ!
…いや、
おそらく彼は、
大した給料にもならないアマチュア楽団だからこそ、
好んで指揮を振るのだと思う。
自由が利くからだ。大胆なことが、許されるからだ。
冒頭の演説内容から察するに、
彼は、プロの有名楽団から大金を積まれても、
彼のコンセプトを実践出来ない古臭い楽団の誘いには、応じないのだろう。
そういう人間なのだろう。
それは、「お高くとまっている」のとは違う。
「信念を貫いている」のだ!
むしろ、「お低くとまっている」のだし(笑)
このような指揮者が数多く出てくると、
古臭いクラシック業界も、変わっていくだろう。
古い殻を脱ぎ捨てて、刷新されていくだろう。
クラシックの「古き良き」の部分だけは残し、
それ以外は、時代や地域に合わせて、衣替えしていくのだ。
それが成功すれば、
クラシック音楽の人口は増えていくと思う。
『クラシックの革命児』



