エピソード14 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』
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- 2023年3月6日
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嵐だわ!
眼前に、真っ黒い雷雲がさし迫っている!向こうは雨が降ってるわ!
私は操舵室に駆け戻った。
「ルチアーノ!やっぱり舵を代わって!」
しかしルチアーノは、応じない。
「大丈夫だよ。まっすぐ行けって人魚は言ってるよ。」
「変わりなさい!」
私がルチアーノを押すと、ルチアーノも私を押し返してきた。
普段ならおしくらまんじゅうで負けたりしないんだけど、
あらぬタイミングで、船が大きくグラっと揺れた!
私はバランスを崩し、倒れ、そのひょうしに頭を打って…
私が意識を取り戻したとき、
私は、見慣れない漁船の上に居たわ。
…あれ?これはどこ?ウチの船じゃないみたいだけど…
「気がついた?」
目の前にいたのは、あの男の子だった!
船上で練習する私たちのことを、ときどき見つめてた、あの男の子。
「あなたは!?」
「シっ。動かないで。頭を打ってるんだから、安静にしなくちゃ。
僕はマカリオス。セントニールの人間だよ。君を助けた。」
「そうだわ!パパは?ルチアーノは!?」
「あいにくだけど…」
今日の早朝、
マカリオスは、私たちの海賊船が珍しく沖に出ていくのを見つけて、
不思議に思ったらしいの。
天気の悪化も知ってたし、不吉な予感を感じた彼は、
お父さんに無断で家の漁船を出し、私たちを追いかけてきたのね。
そして、
嵐の中、岩礁に打ち付けて大破する、私たちの船を目撃した。
助けられたのは、私だけだった、というわけ。
パパとルチアーノは…
人魚の国に行ってしまったんだわ。
そうよ!
そういえば、人魚って、船を沈めるのよ!
ロマンチックな生き物だけど、でも残酷で怖い存在だわ!
「あぁ…私があのとき、
『人魚の国でも行くの?』なんてバカなことを言わなければ、
パパは船に『マーメイドの国へ』なんて名付けなかったのに…」
私がそうつぶやくと、マカリオスが下を向きながら言ったわ。
「人生には、正しいも間違いも無いんだ。」
「え!?
「マーメイドって言葉を思いついたんだろ?それならそう口にすれば良いんだ。」
「…あなた…!?」
マカリオスはゆっくりと、とてもゆっくりと言ったわ。
「キミが家族を失って、悲しみのどん底にいるのはわかるよ。
でも、深呼吸すべきさ。
1回で足りないなら、何回でもすべきさ。
本来、死っていうのは、悲しいことじゃないはずさ。
神父さんが言ってたよ。キミだって、聞いたことあるだろ?
人生の中でやることが終わったなら、天使がおむかえに来るんだよ。
マーメイドかもしれないさ。ここは漁村だからね。
そうじゃないかもしれないよ?
死には、突発的な、不慮の事故だってある。そうだよね。
でも、キミの家族の死は、どうだろう?どっちだろう?」
「………………。」
私は、考えてみたわ。
まずは深呼吸して、もう1回深呼吸して、心を落ち着けて、
それで、マカリオスの言うことを、考えてみた。
『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』



