エピソード15 『私の彼は有名人』
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- 2023年3月27日
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エピソード15
観客動員数が25人に増えても、
彼がお金持ちになったりは、しない。
動員数が増えると、小さなライブハウスでは狭すぎるので、
彼は、大きなライブハウスにブッキングせざるをえなくなる。
すると、規模の大きさに比例して、「ノルマ」も増え、
つまり、ライブ費用もかさんでしまうのだ。
「30人のお客が入って、ようやくプラマイ0になる」
と、彼は言っていた。
30人のお客を呼べるバンドなんて、ほとんど数えるほどしかいないのに、
そんな選りすぐりのバンドで、ようやく、プラマイ0!?
…ライブハウスというのは、ずいぶんとマージンをかっさらっているらしい…。
いや、音楽に掛かるコストは、ライブハウスの費用だけではないのだ。
楽器の購入・維持費、スタジオでの練習代なども考慮するなら、
毎月、数万円のマイナスになる。
なんだか、とてもかわいそうになってきた…。
私は、彼に尋ねた。
「こんなにファンがついて、賞まで獲っても、ほとんど収入にならない…
逆に、毎月何万円も音楽に出資して、時間も膨大に割いて…
どうして、そこまでして音楽をするの?」
「簡単だよ。音楽を愛してるからさ。
それに、僕の場合、
どうしても世の中に伝えたいことがある。その使命感みたいなのも、原動力かな。」
彼は音楽を愛しているから、音楽に毎月数万円も費やし、何百時間も費やす。
私が彼に費やしているのは、月にせいぜい1万円くらいだ。
私は、彼を愛しているんだろうか?まだまだ、愛には至らないんだろうか?
それにしてもやはり、再認識させられた。
尽くされる恋愛を望んでいるコたちは、
その彼を「愛している」わけではないのだ。「利用している」だけだ。
「愛している」のであれば、彼みたいに生きるのだ。
毎月何万円費やしてでも、何百時間費やしてでも、それを追いかけるのだ。
もう1つ、切ないことに気付いてしまった。
彼はたしかに、愛に生きる人間ではあるが、
かといってその愛は、女性ではなく音楽に、向けられるのだ。
私がたとえ、彼を愛して愛しまくっても、
その愛が私に返ってくることはない…
永遠の片思いだ。
それでも私は、彼を愛し続けられるんだろうか…?
『私の彼は有名人』



