エピソード16 『イエスの子らよ』
- ・
- 2023年3月4日
- 読了時間: 2分
緊迫した空気を打ち破ったのは、エルサだったわ。
「ちょっと?シスター・サラ?
どうでもいいけどあなた、
読書なんかしてないで、ホコリはたき手伝いなさいよ!
今はお仕事する時間なんですからね!読書は夕食後よ!」
「ぷっ!
あはははははは!!」
シスター・サラは、初めて笑顔を見せ、笑い声を聞かせてくれたわ。
なによ、笑うってことを知らない人なのかと思ったわ。
私たちみんな、つられて大笑いしたわ。
チョコレート色の髪の、美しい女性、シスター・サラ。
またお友達が増えたわ♪
ヘンな人ばっかりだけど、いいわよね?
それからは3人で、いろいろやるようになったわ。私とエルサとサラよ。
おばあ様は相変わらず、
「ワシのことはそのつど見つけてみんしゃい」と、子供みたいなこと言ってるのよ。
だから、ときどきは4人で遊ぶの。…じゃなかった、お仕事。
サラも成人棟の人だから、一緒にいられないことも多いけどね。
それにしても、
エルサの「嗅ぎわけ」って、どういう基準なのかしら?
私やおばあ様はまだわかるとして、
なんでサラにも、あんなにズケズケできたの?
さすがにサラは怒るんじゃないかと心配したけど、
むしろサラ、喜んでいたわ。楽しそうよ、とっても。
だから私も、「シスター・サラ」なんて、かしこまらなくてよくなったの。
私、調子にのって、疑問だったことをサラに聞いてみたの。
「ねぇサラ?
あなた、修道院に来たの日の晩、
音楽室かどこかに抜け出して、シスターに怒られたって本当?」
「うふふ。本当よ。
なつかしいわ。来たばかりの日なんて…。」
「どうして?どうしてあなたみたいな優秀な人が、
私と同じような悪さをしたの?」
「悪さってほどのことでもないと思うけれど…
それも、天使様の御言葉(みことば)だったのよ。
『怒られるだろうが、脱走しなさい』ってね。
御言葉のとおりにして怒られたり嫌われたりするのは、慣れっこだったから、
私、あんがい素直に、それを実行したのを覚えてる。
来て早々で、そのお説教の件があったから、
シスターたちは、私にあまり多くを期待しなくなったわ。
『あまり優秀な子ではないのだろう』と、思ってもらえたみたい。」
「どういうこと?落第生と思われて、サラはうれしいの?」
「天使様にとっては、そのほうが好都合であったみたいなのよ。
私が優秀なシスターとして期待されてしまうと、
何かと重要な仕事を課されたり、重要な肩書きを与えられたり、してしまうから。
私は私でやることがあるらしく、
そういう重苦しい期待は、邪魔だったのね。」
「ふうん。」
『イエスの子らよ』



