top of page

エピソード16 『トトロの森のけもの道』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月23日
  • 読了時間: 4分

エピソード16

「ちわーっす!」

と、僕らが引き戸をくぐったとき、

2人のお巡りさんが夜勤中で、

コンビニの牛丼か何かを、ガツガツと食っていた。

「おぉ!どうした?

 財布でも、失くしたか?」


「サイフは失くしてナイのに、

 お金は、ありません。」

ハルオが、真顔で答えた。


「そうか!

 じゃぁ、おじさんの替わりに、ココで夜勤、してくか!?」

…ノリのイイお巡りさんだった…



僕は、

クダラナイ漫才は放っておいて、事情を打ち明けた。

「実はですねぇ、

 『トトロの森』っていう場所を、探してるんですよ。

 このヘンにあるんじゃないかって、聞いたんですけど…」


「トトロの森!?

 なんだろなぁ、それ。

 おじさん、ココで30年も巡査やってるけど、

 そんなお尋ねモノは、聞いたことナイなぁ」


「えー!?

 狭山も、違うのー!?」



ハルオが、瞬発的に、ツッコんできた。

「…いや、

 おじさんが知らなくたって、狭山にあるカモしんないよ?」


「ボウズ、なかなか、お巡りさんをナメてるなぁ(笑)

 ヨシ!

 たまにはオレも、マジメにシゴトするかぁ♪」


「なんだ、裏情報、持ってたんスか?」

ハルオは、

淡白に、ズバズバと、対等に、

お巡りさんと会話をしている…

「お巡りさん馴れ」しているんだろう(笑)


「わっはっは!

 裏情報なんてたいそうなモンじゃナイが、

 ココを使えば、知らないコトだって、教えられるんだよ♪」

芸人風のお巡りさんは、自慢気に、頭を指差した。


「…で、その『トトロの森』ってのは、

 あの、『となりのトトロ』のことかい?」

彼は、紙と鉛筆を持ち出し、パイプ椅子に深く、腰掛けた。


「そうそう!

 あの、『トトロ』なんスよ!

 …なんでも、

 宮崎さんって、埼玉出身のヒトなんでしょう?

 子どもの頃の風景を題材にして、『トトロ』の背景を描いたとかって…」


「あぁ!

 そういうハナシなら、聞いたこと、あるなぁ。

 映画の中で、『七国山病院』ってのが、出てくるだろう?

 アレ、

 実際に、『八国山』って地名が、このヘンに、あるんだよ♪」

彼は、そう自慢気に言うと、

地図帳を開いて、僕らに証明して見せた。


彼は、肩を落として、続けた。

「…でも、

 映画に出てくるような風景が、実際にこのヘンにあるかって言ったら…

 ナイ気がするなぁ…」


「えぇー!?

 『トトロの森』だけじゃなくて、

 『サツキやメイが、トトロに出会ったバス停』

 も、実在してるって聞いたこと、ありますよ!?」


「わははは!

 それは、ガセネタを掴まされたなぁ、きっと!

 アレと同じバス停なんてのは、ナイと思うぞ?

 …あ、でも、

 もう1コ、関連する地名が、あるぞ♪

 映画の中で、『松郷』って地名が、出てくるだろう?

 覚えてるかなぁ?」


「あーはいはいはいはい!

 覚えてる覚えてる!

 サツキが、『松郷から来ましたぁ』って言うシーン、あるよ!」


「それも、ほらぁ。ココにあるだろう?」

彼は、地図の一角を指差して言った。


「ホントだぁ!」

僕とハルオは、声を揃えて、感嘆した。


「…ってコトは、やっぱり、

 このヘンに『トトロの森』があっても、

 おかしくナイんじゃないかなぁ?」



「…あぁ、もしかして…」

初めて、もう一人のお巡りさんが、口を挟んでくれた。


「『トトロの森』って、

 正式な商業施設でも無ければ、

 映画の舞台のことでも、ナイなぁ。

 そうじゃないかい?」


「…いや、僕らも、

 どんな場所なのか、サッパリ、わかってナイんですよぉ。」


「何年か前に、地方新聞で、見たなぁ。

 『トトロ』の映画が放映された後に、

 どっかの自然保護団体が、

 狭山の山の一角を、買い取ったんだよ。

 ただただ、都市開発から守るために、さ?

 …で、その山一体を、

 『トトロの森』とかって名付けて、

 親しみやすくしたんじゃなかったかなぁ…。」


「へー!村中さん、良く知ってるねぇ!」


「いやぁ、たまたまですよ!」


「…そっかぁ。

 映画とオンナジ景色があるってワケじゃぁ、ナイのかぁ…」

僕は、ずいぶんと、ヘコんでしまった。



「でも、とりあえず、

 行ってみても良くねぇ?

 手ぶらで帰っても、ツマンネェしさぁ。」

ハルオは、常に前向きだ。


「そりゃ、そうだわなぁ。

 …えっと、村中さん、

 その、保護された山の場所とかって、わかります?」

僕は、

信頼のおけそうなその村中さんとやらしか、見ていなかった。


「うん。わかりますよ。

 …どのヘンだろうなぁ。

 えーっと、コンビニがあって…、この道かな!」

…実際は、

村中さんって名前では無かったと思うけど、

とにかく、細身の彼が、地図を指差してくれた。



「へー!!優秀だぁ!!」


「…だから、ボウズは、

 お巡りさんをナメるなっつうの!」


「いやぁ、すんません!ついつい…」


「わっはっはっはっは!」

「わっはっはっはっは!」



ハルオっていう生き物は、

すぐに、誰とでも仲良しになっちゃうんだ。

それは、ヤツの、類稀なる才能だよ!!

何よりも重要で、何よりも素晴らしい才能だと、僕は、思う!!


『トトロの森のけもの道』

bottom of page