エピソード16 『真理の森へ』
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- 2023年3月19日
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エピソード16
私は、憎っくきミヒャエルのことも憎まないことにしました。
それどころか、彼の意見を自分の暮らしに取り入れることにしました。
バスではなく、自転車通学することにしたのです。
私が乗らなかろうがバスの本数は減らないし、つまりエコにはならないけど、
私の健康促進にはなります。そして、バス代が節約できます。
健康とお金が少し増えるなら、それはトータルな意味で、私の「環境」を良くするだろう。
ミヒャエルに、「あなたの意見を参考にして、私も自転車に乗ることにしたよ♪」と微笑めば、
ミヒャエルは私に好感を持ってくれるだろう。
すると人間関係は好転し、それはトータルな意味で、私の「環境」を良くするだろう。
幸い、自転車はカティが貸してくれて、初期費用すら掛かりませんでした。
そんなふうに私は、学問上の環境学と、トータルとしての環境学と、
2つの視点で眺めながら、留学生活を送っていきました。
カティとアンティは、とても多趣味な人間でした。
そしてその趣味の大半は、健康に良いことや、クリエイティブなことでした。
すると、彼女たちに混じってその趣味を教えてもらうことは、
トータルな意味で、私の「環境」を良くしていくのでした。
その1つに、ヨガがあります。
私は、ヨガには多少なじみがありました。母がヨガ好きなのです。
しかし、フィンランディアン・カティのヨガは、私の想像を超えていました!
カティはたいてい、金曜の夜にヨガをします。
フィンランド名物であるサウナに入ったあと、ヨガタイムを取るのです。
リビングに敷布団を敷いて、アンティと一緒にやります。
時々は、他の友人たちも呼んで、一緒にやるようです。
とにかく驚いたのは、ポージングです。
調和を大切にするフィンランド人なのに…
2人ともバラバラに、ポージングするのです。
2人はいつも、座位前屈のポーズから始めるんですが、
カティは1分半くらいで次のポーズに移るけど、アンティは2分経ってから、移ります。
だから、ポーズ2つ目にしてもう、バラバラなのです。
なぜかと思えば、それは、「呼吸の長さ」の違いだそうです。
2人とも、1ポーズにだいたい3呼吸ほどするんですが、
体が大きく肺活量も大きいアンティは、カティよりも呼吸1サイクルに時間が掛かります。
ヨガにとって、「吐ききる」ということはとても重要らしく、それを徹底するなら、
仲間に合わせて呼吸をしたりポーズを変えたりするのは、好ましくない。
そうやって他者に合わせてなぁなぁでやってしまうなら、
それは「ストレッチ」ではあれども、「ヨガ」ではないんだそうな。
「…だから、
フィットネスクラブで集団でやってるヨガなんて、
実際のところ、ヨガになってないのよ。ウフフ。」
カティは豪快に股をおっぴろげながら、笑って言います。
そして2人は、シンプルなポーズしかやりません。
アクロバティックなのはぜんぜんやらない。
初心者に難しそうなのといえば、「鳩のポーズ」くらいかな。
なぜなのか尋ねてみると、やはり明確なポリシーがあるのです。
「サーカス団に入りたいわけでもないのに、アクロバティックなポーズは要らないわ。
アクロバティックなポーズが出来れば、友達に自慢できるかもしれないけど、
でも、自慢して何になるの?
自慢とか競争とか、そういう俗っぽいことを卒業するための、ヨガなんじゃんなくて?」
「なるほど!」
「それに、ポーズを一通り実践してみると、
効果のカブるポーズがいくつもあることに、気付くわよね(笑)
そういうのを律儀に重複する必要、ないんじゃないかしら?
極端な話、
開脚と前屈と『鳩のポーズ』と、その3つでたいていの筋は伸びるんじゃないかしら(笑)」
どうも、
トゥーリにしてもカティにしても、
「本質」というものをすごく意識しているようです。
表面的なアクションには、あんまり意味がないんだ。
『真理の森へ』



