top of page

エピソード16 『私の彼は有名人』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月27日
  • 読了時間: 3分

エピソード16

彼が音楽を愛しているのは、理解した。痛いほど。

でも、じゃぁ、人間様への愛のほうは、どうなんだろう?

彼には、恋愛感情というものは無いのだろうか?

私は、「打ち上げデート」の際に、それとなく尋ねてみた。

「恋愛感情?あるよ。もちろんあるさ。」

「あるの!?あるのに、ファンのコに手を出さないの??」

「あはは。そりゃそうだよ。

 可愛いなーって思うファンのコだって、居るには居るよ?

 けど、それで特定のコに手を出してしまったら、全てが崩れちゃうと思う。

 わかんないけど、多分、

 ゲンメツされちゃうんじゃない?

 それに、ファンたちの間で、嫉妬みたいな問題も起きるんじゃないかな。

 それで他のファンのコたちが、ライブに来てくれなくなっちゃったりしたら、

 僕の音楽活動にとって、大きなダメージだと思わない?」

「うん。思う。」実際に、似たようなこと、起きてまーす(汗)

「でも、秘密厳守できるコとかも、居るんじゃない?」私!私、できるよ!

「うーん。そういうコとなら、遊んでみたい欲求も、あるにはある…」

「あるんだ!」え?私にもチャンスあるってこと??

「あるにはあるけど…。

 多分そこからは、己との戦いなんじゃないかって、思ってる。

 『音楽活動に対して、誠実であれるかどうか』みたいのが、試されてる気がするんだよ。

 そこで僕が誘惑に負けてしまうなら、僕はきっと、

 音楽に対して不誠実なんだよ。

 『なんだ、女遊びするために音楽活動を利用してたのか』って、自分にゲンメツするんだ。」

「ふぅーん。」

 どうも彼は、とてもストイックであるらしい。いつも、見えない敵と戦っている。


「でも、じゃぁ、一生恋愛は封印っていうこと?」私は、彼の瞳をのぞき込む。

「そんなことはないよ。

 要は、ファンのコに手を出さなきゃイイんだよ。音楽をエサにしなきゃいいんだ。

 だから、バイト先とか同窓会とか、とにかく、ファンのコ以外の女性と、

 恋愛すればいいんじゃなかいと思ってるけど。」

「そうかぁ。」私はファンに属するの?それとも仕事の同僚?

「…で、あの…その…今もだれかと、恋愛してるの…?」うわー、聞いちゃった!

「いま?今ねー。本気で夢中になるようなヒトは、いないかなぁ。」

「そうなんだ。」はー良かった。…良かった…のか?私に夢中なわけではないんだな…。

「でも、音楽やってたりすると、モテるでしょ?

 ○○クンのこと気になってる女性、実はけっこう居たり、するのかもよ?」

「あはは。どうなんだろう?モテてる気配は、無いなぁ。

 でも多分、僕みたいな奴は、女性からアプローチされるようなほうが、向いてるだろうね。」

「そうなの!?どうして?」

「だって、どうしても僕、音楽が最優先になっちゃうから。

 僕が誰か女の子に交際を申し込んだとしても、

 申し込んでおきながら、誕生日とかクリスマスとか、イベントを大事にしてやれないよ。

 どうしても、音楽活動が優先になる。

 すると相手のコは、『大事にしてくれないなら口説かないでよ!』って、思うんじゃない?」

「うん。」

「だったら、

 僕の人生が音楽最優先であっても、それでも僕と付き合いたいと感じるような女性が、

 言い寄ってきてくれるのを、待つしかない気がするよ。

 そういう価値観の女性であれば、

 誕生日やクリスマスを祝ってあげられなくても、あんまり悲しまないだろうさ。

 そしたら僕も、あんまり心苦しくないよ。」

「そうかぁ。」

 なんだか、私には全くチャンスが無いような気もするし、

 私にもものすごくチャンスがあるような気も、する。


…でも、彼の言わんとしてることは、解る気がする。

 ミュージシャンに限らず、スターっぽい人に恋するなら、

 誕生日とかクリスマスとか、遊園地デートとか、そういうのは諦めなくちゃいけない。

 『フツウの恋愛』は、諦めなくちゃいけないんだ。


私はどうしても、精神論的な男性に恋心を抱いてしまう。

でも、精神的な男性と恋をするなら、物質的なメリットは、あんまり期待できないんだ。

四六時中イチャイチャしてたりはできないし、

記念日に尽くしてもらうようなことも、難しい。

それはそれで、ちょっと寂しい。もどかしい。

でも、やっぱり私は、彼みたいな精神論者を見つめていたい。


『私の彼は有名人』

bottom of page