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エピソード167 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2025年11月8日
  • 読了時間: 4分

エピソード167


プカシェル村に戻って一晩ゆっくり休息を挟んだ後、れいはアズランの街へと向かった。

「アドルという貴族はいますか?」と人探しをすると、貴族というのかはわからないがそういう名前の金持ちがいる、と大きな屋敷を案内された。

屋敷に赴くと、「ご主人様はいますか?」と尋ねる。それで出てきたのは眼鏡の老人だった。

アドル 『天空の城』
アドル キャラデザby絵夢さん

ア「なんだね?どこの誰だね?私は研究に忙しいのだ!」

れ「あ、すみません。

 でも、盗まれた財宝をお返しにあがりました」

ア「何?君はうちの屋敷から何か盗っていったのか!」

れ「いえ、私ではありません。

 海賊に財宝を盗まれたのではありませんか?」

ア「何を言っているのだ?

 君はそんなわけのわからないことを言って、うちの屋敷に侵入するのか?」

れ「いえ、違うんです。

 財宝をお返しにあがったんです」

メイドの中年女性が慌てて口を挟んだ!

メ「ご主人様!悪い人には見えませんよ!

 もう少し落ち着いてお話を伺ったらよろしいんじゃないですか!」

メイドのおかげで主人は興奮を鎮めた。

れいは客間に通され、アフタヌーンティーでもてなされた。


ア「それで君は、何を言っているのだね?

 盗っ人が入ることは稀にあるがね。海賊が何だって?」

れ「アドルという富豪が他にもいるのでしょうか?」

ア「この街には私だけだが」

れ「もう少し南に、大きな鍾乳洞があります。

 その奥に、海賊が隠した財宝がある、という話を聞きました。

 私は、友人の宝物であった剣を取り返すつもりで潜りました。

 奥まで行くと、そこには数えきれないほどの金貨や財宝があったのです。

 宝の地図には『アドル家の財宝』と書かれていたもので・・・」

れいはなるべく端的に、状況説明を試みた。


しかし・・・

ア「数えきれないほどの金貨を海賊に?そんな記憶はないぞ」

アドルは腕を組んで首をかしげる。

れいは呆気にとられる。どうなっているのだ?

するとまた、メイドのおばさんが助け船を出した。

メ「ご主人様!それは遥かご先祖様のお話では?

 たしか、200年くらい前にアドルの屋敷が海賊に襲われた、という話を聞いたことがありますよ」

ア「あぁ・・・!先祖の話か。

 たしかにそういう話は聞いたことがある」

れ「同じアドルでも、ご先祖様のお話だったのですね。

 それでも返却は現在のアドルさんでよろしいのだろうと思います」

れいはそう言うと、客間に莫大な財宝を物質化してみせた。

メ「まぁ!!」

ア「こ、こんなにか!?」二人とも呆気にとられる。

れ「はい。お返しいたします。少なくとも私が持っていくべきものとは思えませんから」

メイドがまた口を挟んだ。

メ「もしもし?あなた、どれだけ人が善いのです?

 普通、海賊の財宝というのは盗った人が持っていくのです。その宝物を返却したなんて話・・・1つも聞いたことがありませんけど!」

ア「た、たしかに・・・!」

れ「よくわかりません。

 海賊の文化に育つと、そういう考えになるのかもしれませんが。

 私は西の大陸の生まれでして、海賊のことは絵本の中でしか知らないのです。

 私の頭で考えると、海賊に盗まれた財宝は持ち主にお返しするのが良心かなと、思ったのですが」

ア「偉い・・・!!君は偉い!」


メ「ご主人様。落とし物の拾得は普通、1割の謝礼をするのですよ」

ア「そうだ。1割でも持っていきなさい。

 私は別にカネに困った身分ではない。本を買える貯蓄さえあれば充分だからな」

れ「えぇ!一割でも相当な額になってしまいます!

ア「いいだろう。1割持っていきなさい」

れ「いえ、なんだか私には分不相応です。お金は必要な分くらいは稼げますし」

ア「むむ。なんて欲のない女なんだ!」

メ「ご主人様!そういう言葉を怒り口調で言ってはなりませんよ!」

ア「むむ。済まない。ついすぐに興奮してしまう。

 じゃぁそこに2、3転がっている武器を持っていったらどうだ?」

れ「いえ、武器も私は気に入ったものがあるのです」

ア「じゃぁ魔導書ならいいだろう。ほら、分厚い本が転がっている。それは魔導書だろう。

 魔法を習得することが出来るはずだぞ。それなら価値があるだろう」

れ「えぇ!それは助かります!」

れいは魔導書を1つ拾って、ぱらぱらとめくってみた。

れ「残念ながら、まったく意味がわかりません・・・」

ア「そうか。残念だな。

 いや、まだ手があるぞ。ちょっと一緒に教会に行こう。

 教会の神父が何か手助けしてくれると思うのだが」

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