エピソード17 『ヒミツの図書館お姉さん♪』
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- 2023年3月7日
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私は、ひとしきり疑問が解決したので、
コピー用紙を抱えて、レノンさんを探した。
「おんやぁ?
ずいぶん長いデートじゃったのう♪」
レノンさんは、イタズラにウインクをして見せた。
…どうやら、
このような展開になることを、
この人はお見通しだったらしい…(笑)
「もう!レノンさんのばかぁ!
私ったら無意味にドギマギして、
無意味にアブラ汗かいちゃったじゃないですかー!
いい人ならいい人って、教えてくれれば良かったのに!!」
「ほっほっほ。そうかな?
ワシが『主任は良い人じゃよ』と言ったら、
古藤さんはそれを真に受けるのかな?それで良いんじゃろか?
ワシにとって良い人であっても、
女性や古藤さんにとっては良い人じゃないかもしれんし…」
「た、たしかに…。
おしゃべりした今でも、結局よくわからない人だし…
そういえば高桑さん、
微妙に私に目を合わせてくれないんですけど、
あれはなぜなんでしょう?私、あんまり好かれていないのかな?」
何か気まずいことがあるからかな?と聞くことはできなかった…(笑)
「ほぉ。それは、『斜視(しゃし)』ゆえじゃろ。しゃぁないことよ。」
「しゃし??何ですか?それは。」
「斜視を知らんか?
まぁ近年は、斜視の人も少なくなったから、
知らんでも無理はないかの。
斜視というのは、目の病気というか障害というか、そういうもんじゃな。
まっすぐ前を見ようとしても、左右どっちかの瞳がそっぽ向いてしまうんじゃ。
じゃから、対面しとる人からすると、
目をそらされてるようにも見えてしまう…。
しょうがないことじゃよ。障害じゃからの。
当人の意思でどうにかなることではないし、
ましてや、当人が悪意を持ってやってることでは、まったくない。」
「そうなんですか…。かわいそうな人なんですね。」
「ほほほ。かわいそうな人かどうかは、わからんぞ?
こりゃあくまでウワサにすぎんが、
斜視の人というのは、宇宙人であるとかないとか…!?」
「宇宙人!?」
「ほっほっほ。本当かどうかは知らんぞ?
でも、そのようなことを書いた本が、いくつもあるんじゃよ。
斜視の人は、
宇宙人かどうかはシランが、たしかに、地球人ばなれした秀才が多い。
優秀すぎるのも不公平じゃから、
斜視というハンデを背負っといたんじゃなかろうか?
ワシはそんなふうに感じてるが。」
私は気を取り直して、
レノンさんのアシスタントとして、様々な業務をこなした。
レノンさんは、
「焦る」ということを一切しない人だった。
いつも、柔和な顔だった。
たとえ利用者の居ない場所でも、
その表情やスタンスは、崩れることがなかった。
私に対して、
何かを厳しく指摘したりすることも、無かった。
失敗しても、怒らなかった。
私の体が仕事を覚えるまで、辛抱強く待った。
「待つ」ということすら、しているふうではなかった。
私は、レノンさんに聞いてみた。
「どうしていつも、
のほほんと仕事しているんですか?」
「そりゃあ?
人生っていうのは、
『死ぬまでのヒマ潰し』じゃからのう♪」
…それだけだった!
司書の仕事というのは、
大筋、私の思い描いていた通りの仕事だった。
とにかく、
利用者にあれやこれやと宣伝しなくて良いから、助かる♪
「ご一緒に、ポテトもいかがですか?」とか、
「新発売のアップルパイがオススメですよ」とか、
思ってもいないセリフをマニュアル化されるのは、
私には、苦しいのだ。
それに、
「売り上げが芳しくない!」と上司が怒鳴ったりすることも、無い♪
いつも、純粋に、
目の前の利用者さんに奉仕してあげれば良かったし、
しかるべき作業を、丁寧にやれば、良かった♪
中には、やや神経質なスタッフさんも居たけれど、
全体を見れば、おおむね、穏やかで優しい人ばかりだった♪
利用者にも、穏やかな人が多い。
本や手続きに不備があっても、
怒鳴り込むようなクレーマーは、ほとんど居なかった♪
私は、『お手伝い』にストレスを感じることが無く、
8時間立ち回っていても、大して疲労を感じなかった♪
私は決して、
全ての土日に来館したわけでは、なかった。
何か他に用事があれば、そちらを優先することが許された♪
それでも、
だいたい毎月、土日の3/4くらいは、ここに来ていた。
同年代の子たちと遊びにいくよりも、ずっと面白かった(笑)
平日もちょくちょく、
呼ばれてもいないのに顔を出して、
カートに積まれた本を棚に戻す作業などを、コッソリ行った。
スタッフは誰も、私の「おせっかい」を止めたりはしなかった。
私は、信頼してもらえているようだった。
『ヒミツの図書館お姉さん♪』



