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エピソード17 『私の彼は有名人』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月27日
  • 読了時間: 4分

エピソード17

彼の音楽活動は、

特別賞の受賞や観客動員数の増加とともに、少しずつ、忙しくなってきた。

ライブハウスだけでなく、ショッピングモールのようなところで歌うことも増えてきた。

ラジオ番組にゲスト出演することも出てきた。曲が流れるだけじゃなく、トークもするのだ。

ラジオ番組に物販スタッフなど必要ないのだが、なぜか私は、ついていく。

彼がそれを止めないでいてくれるので、何も言わずに、ついていく。

すると、なんだかんだで、週に2回くらいのペースで、彼と顔を合わせるようになった。

週に2回もデートしてるカップルって、どれくい居るだろう?そう多くないと思う。

それを考えてみると、今のこの状況は、割と恵まれている気がした。

恋人同士ではないけれど、彼に週2も会えるのだ。


私のアルバイトのシフトは、彼の音楽活動に合わせて組まれる。

もはや、そういうスタンスだ。

そして、大学の授業なんていうのは、もはやどうでもよくなっている。

とりあえず、卒業はしておかなくちゃと思っているが、あとはどうでも良い。



ラジオ出演は、彼の人脈も広げていく。

人脈が広がるということは、ブレイクのチャンスが拡大するということでもあり、

また、恋のライバルが増えていくことも、意味する。


あるとき、

アイドル声優なジャンルの女性タレントが、彼をラジオに呼んだ。ゲスト出演だ。

それくらいは、あまり特筆する話ではない。

そのアイドル声優のMちゃんは、どうも、彼のことが気に入ったらしい。

たった1ヶ月後に、また彼をゲストに呼ぶ。

そして、番組の中で、

「一緒にライブ・イベントをやろう!」などという約束を交わしてしまったのだ。


このイベント参加については、

彼のファンたちの間で、ずいぶんと物議をかもした。

「アイドル声優?それってちょっと、低俗すぎるんじゃないの?

 低俗ではないにしても、○○クンの方向性とは合わないんじゃない!?」

という具合だ。

私も、そう思った。アイドル声優と一緒に仕事をすることは、

むしろ、彼の経歴に汚点となってしまうのではなかろうか…?


私はそれとなく、私らファンたちが思ってる懸念を、彼にぶつけてみた。

「うん。アイドル声優とコラボするのは、普通に考えれば、ちょっとためらうよ。

 でも、Mちゃんって普通のアイドル声優と違うでしょ?

 彼女は、ただキャピキャピしてるだけじゃないよ。思想を持ってるよね。

 だから僕、彼女とならコラボしても良いかなって、思ったんだ。」

ちゃんと色々、考えているらしい。

確かにMちゃんは、彼と相通ずるような思想を持っている。

その思想を、歌やトークに載せて、ガンガンと発信しまくる。

そもそも、そういう精神性が無ければ、彼のことを気に入ったりはしないだろう。


とりあえず、イベントをするのは良しとしよう。

しかし…やはり私は、一人の女として、嫉妬心に苦しんでしまう。

彼らは、イベントの練習と称して、ときどき一緒にスタジオ練習をするのだ。

さすがにスタッフの私も、練習スタジオまで同伴するわけにはいかない。

するとMちゃんは、彼と二人っきりで練習しているのだ。

…練習だけだろうか?

おしゃべりもいっぱいするだろう。帰りに食事もするだろう。そして…?

彼の性格からして、その先があるとは思えないが、無いとも言い切れないのだ。

なにしろMちゃんは、彼のファンではないし、自分からアプローチする積極性がある。

彼の理論からすれば、Mちゃんが強く押しさえすれば、

彼とMちゃんは男女の関係になる可能性が、ある。

ファンのコたちは、実際のところ、

コラボの相手がアイドルであるかどうかは、あまり重要でないのだ。

俳優だろうがロックシンガーだろうが、女の子が彼にまとわりつくのが、面白くないのだ。

ファンの子たちだけでなく、私にしても、同様なのです。



私は、そんな葛藤について、

放送部の仲間たちに打ち明けてみた。

例の先輩は、即答で言う。

「釘さししておけば?

 時々は、3人で会う機会もあるんでしょう?

 そういうときに、

 『アタシは彼の女なのよ!』的なアピールを、それとなくすりゃイイのよ!」

「えー?でも私、彼の恋人ってわけではないし…」

「実際に恋人じゃなくたってイイんだよぉ。

 そういう『匂い』さえ漂わせておけば、とにかく、そのMちゃんは彼に近づけないでしょ?」

うーん…。なんだか、フェアじゃないような気がする。

彼はとてもフェア(誠実)に生きているというのに、

その彼を、アンフェアな方法で囲いこむのか?うーん。どうなんだろう、それ。


『私の彼は有名人』

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