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エピソード18 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 2分

エピソード18


…そういうことなの。

サラはやがて、ぱったりと姿を消してしまったわ。

いや、ちゃんと修道院の人々にはあいさつをしていったらしいけどね。

私とエルサは、さみしかったわ。

せっかくできたお友達だったんですもの。

引き止める方法とかも、いろいろ考えたけれどね、

「そっとしてやりなさい」って、おばあ様に言われたわ。

修道士のピエトロも落ち込んでいるみたいだけど、

私たちからは、何も言ってあげられないの。知らないフリしないとね。


「私生児を産み継ぐなんて…

 サラは世界で一番不幸なのかしら?」

私はほおづえをつきながら、おばあ様に聞いたわ。

「どうじゃろな?数奇な人生ではあるじゃろが、不幸とも限らん。

 女手ひとつで育てるほうが、うまくいくこともたくさんある。」

「そうなの?」

「そうよ。サラの家系は代々、

 マグダラの生き様と遺言を、しっかりと守りとおしてきた。

 それをなしえたのは、

 母子家庭を決意した母たちの強い精神に、子の魂が呼応するからじゃ。

 代々、優れた精神を持った魂が、宿り継いできたはずじゃ。

 じゃからある意味、子育て自体は辛くなかったろうな。

 優れた魂の宿った子は、あまりキカンボウにはならん。優しく、利発に育つ。」

「そうなの?」

「そうよ。

 それを体感的に悟っている母親も、少なからずいる。

 じゃから、サラのように敢えて、

 結婚もせず父の名も公開せず、

 女手ひとつで産み育てる母親も、ぼちぼちいるぞ。」

「いろんな人がいるのね。初めて知ったわ。」

「アタシも、そうするかもしれないわ。」エルサがきょとんと言う。

「え!本気なの??」

「アタシ、結婚に興味はないけど、子育てには興味あるもの。

 まぁ実際は、社会の風向きによると思うわ。

 社会が母子家庭に批判的なら、しがらみが多すぎて面倒くさいわ。

 社会やお母様が協力してくれるなら、母子家庭で育てるかもね。」 

「あながち本気なのね…!」

「修道女には、アタシみたいに考える人、あんがい多いんじゃない?」

図書館で話していると、サラのこと思い出しちゃうわ。



『イエスの子らよ』

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