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エピソード18『「おとぎの国」の歩き方』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月5日
  • 読了時間: 2分

村は、とても静かだった。

家は4つよりもずいぶんたくさんあるけど、人の姿は見えない。

いないことはナイだろう。何となく人の気配がする。匂いがする。

家の中にこもってるのか、はたまたどこかで儀式とかやってんのか。

適当にノックしてみるって手もある。

ダメだ。よそ者嫌いの家に当たったら、猟銃で撃ち殺されちゃうんだっけか。

そうか、またストゥーパに行ってみよう。

ストゥーパじゃなくてもいいや、宗教っぽい場所だ。

きっと、龍とかパゥオとか好きな人がいるさ。

やっぱ考えるって大事だ。いろいろアイデアが浮かんでくる。

ガイドブック無くても、どうすりゃいいかわかるよ。考えりゃいいんだ。


きょろきょろしながら歩いてると、

小さなほこらのようなのを見つけた。そして人がいる。

爺さんが、供え物の交換でもやっているらしい。

顔中ホクロだらけの、100歳もいってそうな爺さん。

「お爺さん、こんにちわ!

 ここってブータンですか?それとももう、チベット?」

「ここはブータンではない。アジナじゃよ。」

「やった!アジナに着いたんだ!

 …ってお爺さん、アジナもブータンでしょ?」

「そうじゃよ。だが、そうじゃない。」

「??何言ってんの??」

「アジナは昔、チベットじゃった。領土争いの結果、今はブータンになった。

 しかし、統治国がチベットであろうがブータンであろうが、

 当のアジナ住民にとっては、どうでも良いことじゃ。

 チベットであろうがブータンであろうが、

 アジナはアジナの文化を生きる。アジナの習慣を生きる。

 文化を作るのは国ではない。王でもない。住民じゃよ。

 つまらないことは気にしないことじゃ。

 好きな文化を生きれば良い。好きな習慣を生きれば良い。」

うーん。説教臭い爺さんだ。絶対何か知ってる。龍とかパゥオとか。


僕は、爺さんの横に座って話しかけた。

「お爺さん。僕、龍らしいんだ。龍人間?よくわかんないけど。

 それで、アジナに行けって言われたんだよ。国境の町の人にさ。」

「うむ。それで、カメレオンに行くんじゃろう?」

「カメレオン!?それは知らないなぁ。」

「聞いてないか。まぁいい。

 龍にとって、アジナはあくまで経由地に過ぎぬ。」

「お爺さんも、龍なの?」

「わしか?わしは龍ではない。迦楼羅(かるら)だ。ガルーダと言えばわかるな。

 わしのようにホクロだらけの人間には、迦楼羅が多いな。」

「ガルーダ?」

「ガルーダも知らんか。神鳥じゃよ。

 今生は、龍たちの橋渡しに徹して終わるだろう。

 われわれ迦楼羅は、

 その広大な翼に龍を乗せ、彼(か)の地へと導く。

 まぁ、急ぐことはあるまい。旅は楽しんだほうが良い。」

爺さんは、キセルをぷーっと吹かした。

僕は、ブータンの澄んだ空気を、ぷーっとはいた。



『「おとぎの国」の歩き方』

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