エピソード185 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード185
気球はゆっくりとしっかりと雲に着地する。・・・雲に物体が着地できるのか?それは雲によく似た、きちんと質量を持った地面であった。
マゴットは代表者として挨拶をした。
マ「お初にお目にかかります。
ガーデンブルグの民が、れい殿をお連れいたしました」
兵「お待ちしておりましたわ」やはり微笑んでいる。
れいは、何と言っていいのかわからない。その上、言わずにいられないものを見つけてしまった。
れ「つ、翼があります!」
なんと二人の兵士は、背中に大きな白い翼があった。
兵「うふふ。これは飾りですわ。
私たちはこのような飾りが好きなのです」
ユ「天空人とは、人間とは異なる存在ですか?」ユーリも興味津々だ。ユーリがれいと同じ様な言動をするとき、れいはとても安心する。
兵「天使の魂を持つ者が多いですが、体は地上の人間と大差ありません」
れ「天使・・・?」
兵「はい。そうですが、翼で空を飛べる生き物ではないのです」
兵「さてさて、兵士と会話するためにお越しいただいたわけはありませんので・・・」
れいは気球から、ふわふわの地面に着地をした。
れ「皆さんは?」マゴットたちは降りてこない。
マ「着陸を見守るまでが引率者の役目、と招待状に書かれてあったのでね」
ユ「あとでそのふわふわの地面の歩き心地を、聞かせてくださいね」
兵「では参りましょう、れいさん。マスタードラゴンがお待ちです」
兵「引率の方々は、ご苦労様でした。
あなた方もまた、マスタードラゴンからの招待にかぎりなく近い者だと思いますわ」
マ「その一歩が遠い気がするがな。ははは」頭の良い人は、頭が良い。
れいは少し不安げに、マゴットたちに手を振る。今度は彼女たちの浮上の無事を見送る。
大丈夫だ。天空城の兵士たちも優しそうである。結局のところガーデンブルグの民に似ている。翼のコスプレを好むか否か、なのではなかろうか、というほどに。
城を見上げる。壮麗、という言葉がふさわしい。
地上の城のように、灰色の石のレンガを積み上げて造られているが、少し水色がかっているような気がする。その絶妙な色合いが、独特の気品を醸し出している。かといって大理石で造られた神殿のような豪華さはない。大理石の城を建てることとて可能であったのではないかと思われるが、彼らは素朴さを選んだのか。
れ「音楽が、聞こえます」
そう。どこからか美しいクラシックの音楽が聞こえてくる。美しい明るいメロディで、美しいハーモニーだ。
兵「えぇ。この上のテラスで楽隊が奏でています。交代交代で1日中」
れ「マスタードラゴンは音楽が好きなのですか?」
兵「それもありますが、天空人自体が音楽が好きなのです。
ですから代わりばんこで楽隊の席に座りますよ。強要されているのではなく、皆の趣味のようなものです」



