エピソード19 『首長の村の掟 -真実の物語-』
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- 2023年3月12日
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そこからは、
過酷な山登りが始まった!
僕は、「トレッキングと言っても大したことは無いだろう」
と踏んでいたのだけれど、甘かった!
また、僕は、
みんなよりも荷物が重かったので、余計にキツかったのだろう。
僕は、例の15リットルのリュックしか、持っていなかったから、
全ての荷物を持って、参加していた。プラス、ギターまである。
みんなは、
小さなリュックに、1~2枚の着替えと食料程度の、軽装だった。
山道を30分ほど登って、メオ族の集落に到着した。
山の中腹の開けた土地、校庭1つ分くらいの広さに、
20程度の家屋が、並んでいた。木製で、高床式だった。
水難の恐れも無いのに、なぜ高床式なんだろう?
湿気やネズミを防ぎたいのかもしれない。
僕は、誰に出会ったって、笑顔であいさつした。
山岳部族たちは、独自の言語を持っているようだったが、
それにしたって、
「ハロー」や「サワディーカ」くらいは、通じる。
しかし、
この、メオ族の村人たちは、
僕が笑顔で挨拶しても、誰も彼もが、辛気臭い顔をしていた。
30分ほども自由時間があるのに、誰とも交流が深まらない…
僕は、ふてくされ半分に、
高床の下で涼んでいた黒い犬に、触りにいった。
顔の前に手を出すと、
犬は、急に威勢よく吠えたかと思うと、
僕の指を、ガブっと噛んだ!!
飼い主と思われる年配の女性が、その犬を厳しく叱り付けたが、
僕は、一瞬で悟った。
悪いのは、この犬じゃない。
僕ら、観光客たちのほうだ!!
観光客向けの商売をする人たちは、「ようこそようこそ」と笑っているが、
普通の地元民たちは、毎日毎日、何百人もの観光客がやってきて、
村の静けさを奪っていくことを、歓迎しては、いないのだ!
イチイチ愛想を振りまくのも、飽き飽きってもんさ。
観光収入は、少なからず、村全体の利益になるため、
観光客に噛み付いたりすることは、しない。
けれども、
地元民たちの本心としては、
あの黒犬と、さして変わりはしないのだ。
あの黒犬は、「代弁者」に過ぎないのだ。
僕は、犬に噛まれることなど、そうそう無い。
そんな僕に噛み付いてまでして、発したいメッセージがあったのだろう。
僕は、
こうしたことに気付いて、ブルーになってしまった…
僕は、彼らに迷惑を掛けてまでして、探訪したいとは、思わないのだ。
チェンマイ発のトレッキング・ツアーは、
あらかた、この村を通って行く。
そのような、観光客馴れした村には、
僕が憧れていたような、素朴なふれあいというのは、難しいのだ。
ふれあいがあるにしても、
それは、商業者による、「おあいそ」に過ぎない。
クサカベさんの奥さんが、
村の1つに、独自の宿泊施設を建てたのは、
「彼らの静寂を壊したくなかったから」であろうと、思った。
クサカベさんたちが、独自に組んだツアーは、
「エコ・ツアー」を銘打っている。
村々に、「お金を落としていくこと」よりも、
村々に、「ゴミを落としていかないこと」を、配慮したのだ!
観光客たちの喧騒だって、ゴミのようなものだ。
山岳民族の人々というのは、
元々、お金なんて無くても、暮らしていける。
村の中で、物々交換や奉仕、自活力で持って、
必要な物品やサービスを、循環させられるからさ。
…そりゃぁ、お金があれば、
バイクを買ったり、家電を買ったり、出来るは、出来る。
けれども、お金を過剰に手に入れても、「幸福」には、ならないのだ。
彼らは、そのことをよく理解している。
先進諸国民よりも、理解している。
『首長の村の掟 -真実の物語-』



