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エピソード2 『小さな大ちゃん』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月7日
  • 読了時間: 2分

エピソード2

けれど、

オレの「ならず者」生活は、1年で幕を閉じた。

改心させられてしまったのだ!



3年生進級のクラス替えで、

ムカイくんという男と、同じクラスになった。

オレは、第一印象では、ヤツが嫌いだった!

クラスで一番、背が高かったからだ!



でも、

授業中にせよ、休み時間にせよ、

ヤツは、ひょうきんで面白かった。

よく「おしゃべり」をしていたけれど、「不良」ではなかった。

ヤツは、

まず、自分の課題を黙々とやった。

終わってから、しゃべり出すのだ!

それも、課題が終わっているヤツをとっ捕まえて、しゃべるのだ。

または、先生の黒板の誤字脱字をツッコんだりして、笑いを取る。


ヤツはヤツで、

課題中のクラスメイトに迷惑を掛けないように、

細心の気配りをしていたのが、わかる。

さらには、

教室内が緊迫し過ぎないようにも、気配りしていた気がする。

子どもたちは、緊迫を嫌うからだ。


でも、ヤツの声は通るから、

他のヤツとおしゃべりしているとしても、

そのジョークがオレらの耳にも届いてしまって、

オレらは笑ってしまう。

小学生なんて生き物は、

噴き出し笑いをこらえるスキルがまだ養われていないから、

クラス中に、「ププっ!」というような失笑が、こだまする。



オレは、ヤツの面白さに降参して、

ヤツに、自分から話し掛けにいくようになってしまった。

なぜか、ヤツも、

オレのことを好いてくれた。

互いに、一番の親友同士になってしまった。


『小さな大ちゃん』

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