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エピソード20 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 3分

数日後のある日のこと。

「あらあなたたち、

 小麦袋が届くから、礼拝堂まで取りにいってちょうだい?」

最近しょっちゅう穀物倉庫に行ってるから、

すっかり私たち、小麦当番だと思われてるわ!


言われたとおり、エルサと二人で教会に行ったけど、

だーれもいないわ。シーンとしてる。小麦も置いてないし。

「どうしちゃったのかしら?

 着くのが遅れてるの?

 それとも、誰かがもう運んでくれたのかしら?」

「アタシ、倉庫を見てくるわ。」

エルサはそう言うと、一人で走っていっちゃった。


私は、教会の大きな扉を開けて、

誰かがやってこないか、眺めることにしたわ。

ギィィィィィ。自分で開けちゃった。

出歩かなければ大丈夫よね?まだ扉の下に出ただけだもの。

見張りの人たち、どこに行っちゃったの?お手洗いかしら。いないの。

キョロキョロしていると、

向こうから、粉袋を担いで歩いてくる、修道士さんが見えたわ。

わざわざ担ぐの?大変ね。

しばらくその様子を見てたんだけど…

まぁ大変!

その修道士さん、転んでしまったわ!!

私、思わず、駆け出してしまったの。

外に出ちゃいけないのに、出ちゃったわ!

でもしょうがないじゃない?緊急事態ですもの!


「大丈夫ですか!?」私は、駆けよって言ったわ。

「イタタタタ。

 でも大丈夫です。どうもありがとう。」

彼はそう気丈に言って、立ち上がったんだけど、

粉袋をかつぎ上げたとたん、また倒れちゃったわ!

「イタタタ。足右に、チカラが入らないや。」

右ひざを出血してるもの、無理ないわ。

そして今度は、左足までくじいてしまったみたい!

「動かないでください!」

私は、ハンカチを取り出して、右ひざの傷の止血をしたわ。

左足は…どうしましょう!?

何も持たない私にできることは、1つしか思い浮かばなかったわ。

「教会まで、歩きましょう!肩を貸します!」

「だ、だめですよ!いけません!」

彼は必死に抵抗したけれど、私は聞く耳を持たなかったわ。

私は修道士さんの体を慎重に起こすと、自分の肩に彼の手を回した。

そしてよたよたと、でもけんめいに、彼を支えて歩いたわ。

「もう少し、もう少しですからね!」


扉の前まで着いたあたりで、エルサが戻ってきたわ。

「ちょっとアンタ、何やってんのよ!!」

「いいから、そこをどいて!」

「どいてってアンタ、男の人を…」

「どいてー!」

「もう!知らないからね!

 アタシ、大人のひと呼んでくる!」エルサは駆け出した。

教会の一番うしろの長イスに彼を寝かすと、私も一安心したわ。

「ふぅ。」

「お嬢さんありがとう、でも…」

彼がそう言いかけたとき、エルサと大人のシスターが駆けつけてきた。

「何やっているのマリアンヌ!彼から離れなさい!」

??どうして私、怒られているの??

ほめてほしいとは思っていなかったけど、怒られるとは思わなかったわ…。

立ち尽くす私を見て、エルサは言ったわ。

「あなた修道女のオキテ、忘れたの!?

 男の人に触れちゃいけないんだってば!」

「えっ!」

触れてもいけないの!?

恋愛禁止というのは知っていたけれど、触れることすら許されないなんて…



『イエスの子らよ』

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