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エピソード21 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月4日
  • 読了時間: 2分

エピソード21


修道士さんを助けた翌日のことよ。

その日は、廊下の窓拭きをしながら、3人でしゃべっていたわ。

「ほっほほ!

 おぬし、ケガした修道士を担ぎあげたんじゃってな!」

「怒られちゃったの。悲しいわ。人助けをしたのに。」

「複雑よのう。ルールじゃからの。」

「私、地獄に落ちるの?」

「そんな深刻なものではあるまい。

 異性に触れてはならんというのは、修道院のルールではあるが、

 人道に反するものではない。地獄に落ちるようなことではない。」

「それならいいけど…」

「それで地獄に落ちるなら、

 地獄でサラに会えるわね。さみしくないじゃない?」

「もぉ、エルサったら。」



それから2週間ほど経ったある日…

私たちまた、粉当番を命ぜられたわ。別にいいけど。

でもエルサったら、ヘンなこと言うのよ。

「ちょっとアタシ風邪ぎみだから、

 あなた一人で行ってちょうだい。」ってね。

しかたないから私、一人で教会に行ったわ。


一番後ろの長イスで、しばらく待ってると、

ガラガラと物音がして、そして大きな扉が開いたわ。

「あなたは…!

 もうケガは大丈夫なんですか?」

粉袋を持ってきたのは、こないだと同じ修道士さんだったわ。

今度は台車に乗せているから、安心したわ。

「先日のお嬢さんですね。

 あのときは、ありがとうございました。」

よく見ると、とても若い人だったわ。十代じゃないかしら。

彼も私のこと、じっと見てた。そして、思い出したように話しはじめた。

「ちょうど良かった!

 あの…」

と言うと、モジモジしながら、辺りをキョロキョロ見回すの。

「誰も…いないかな?」

「えぇ、エルサは居ないわ。風邪ひいてるの。呼んできましょうか?」

「いや!いいんだ。誰も呼ぶ必要はないよ。

 キミに…用があったから…」

そういうと彼は、

私に近寄ってきて、キレイな花柄のハンカチを、そっと手渡した。

「まぁ!これは…」

「ごめんなさい。キミのハンカチは、血の汚れが落ちなくて…

 それで、新しいのを買ってきました。未使用なので、汚くはありませんよ。」

「まぁ、ご親切に、どうもありがとうございます!」

「いや、僕はただ、借りたものを返しただけです。

 親切なのは、キミのほうだ。

 オキテを破ってまでして、僕に手を差し伸べてくれたのだから。」

「いや?あの、その…」オキテを知らなかったって、言えなかった。

コツコツと、誰かが歩いてくる足音がして、

彼はそれに気づいて、出ていってしまったわ。



『イエスの子らよ』

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