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エピソード22 『「おとぎの国」の歩き方』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月5日
  • 読了時間: 2分

エピソード22


1日歩いても、ぜんぜん着かなかった。

何日歩くんだ?どれくらい歩くんだ?

僕は敢えて、それを訊かなかった。知っても距離は減らないさ。


2日目の朝は、

やたらモヤがかかっていた。8時になってもまだ、モヤが消えない。

その仙人じみた景色の中に、ヤクの群れが歩いているのを見かけた。

爺さんは、それを目にして、思い出したように語りはじめた。

「野生のヤクの群れは、1頭のオスと100頭ばかりのメスからなる。

 オスがメスを引き連れたのか?違う。

 母ヤクは、その歯を用いて、最も強靭なオス以外を殺してしまう。

 すると、強靭な子孫だけが生まれ継がれる。

 日本や西欧の王侯貴族も、同じことをやってきた。

 しかし、決定的に違う。

 先進国の王たちは、美しい女性を選んで、子孫を残した。女性が淘汰されてきた。

 しかし、遺伝というものは、基本的に男性優位なのだ。

 男性側の性質こそが、強く遺伝されていく。例外もあるが、基本的にはそうだ。

 であるならば。

 男性たちは、社会は、女性を選りすぐっている場合ではない。

 女性ではなく、男性を選りすぐっていかなければならん。男性を淘汰していかねばならん。

 どのような男性を残し、どのような男性を淘汰するか?

 それは、その国の女性たちが決めれば良いことだ。

 金持ちを愛するなら、金持ちを選び、貧乏人を淘汰すれば良い。

 豪傑を愛するなら、豪傑を選び、文学者を淘汰すれば良い。

 優しい男を愛するならば、優しい男を選び、傲慢ちきを淘汰すれば良い。

 ただし、それ相応の国ができあがる。

 社会の様相は、女性たちの価値観に委ねられている。」

「ふーん。」

「ヤクだけではない。人間とて同じだ。

 ご存知か?

 ブータンは、伝統的に、多重婚を生きてきた。

 一夫多妻であり、一妻多夫だよ。

 4人姉妹のすべてを、一挙にめとることもある。逆も然り。

 そうして、一人の異性を共有しながら生きてきたが、

 そこには大した争いなど生じてこなかった。

 そして、『誰もが幸福を感じる国』であり続けてきた。

 要点は、心だ。

 我々ブータン人には、『所有したい』という欲求が無い。あっても薄い。

 所有欲が無いのなら、独占欲だって無い。

 だから窃盗も起きないし、恋の嫉妬も生じない。」

そうして2日目も、暮れていった。



『「おとぎの国」の歩き方』

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