エピソード22 『名もなき町で』
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- 2023年3月16日
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エピソード22
キャンプ場に客がこなくても、伊座利での生活はけっこう面白かった♪
僕がこの村に居ついて2~3日目くらいに、
村の鎮守祭みたいのがあったね!
村の隅っこに神社があるんだけど、
境内を隅々まで、みんなで綺麗に掃除するんだ。
普段は閉じられているご本尊まで開けられて、隅々まで掃除する。
なかなか貴重な体験だよ!
僕にとっては、伊座利の住人たちと顔合わせする良い機会でもあった。
「お?オマエかぁ!キャンプ場の新しい管理人はぁ!」
なんて、気さくに声をかけてくれるおっちゃんが多い。
疎ましく思ってる人はほとんど誰も居ないようだった。安心した。
村の人口は100人ちょいしかいないんだ。
誰もが顔見知りだから、新参者がいればすぐわかるらしい。
神社の掃除とか一日がかりで行うけど、
かといって、彼らは信心深いわけでも無い。
毎年の決まりごとだから、なんとなしにやっているんだよ。
サボったりはしないけど、真剣だったりもしない。
ここはとても田舎だけど、「土着」といった雰囲気は薄いね。信仰的ではない。
イザリーヌの広大な敷地を、探検するのも楽しい。
管理棟のすぐ下には、
海に向かって棚田のような地形が広がっている。
タブンこれ、棚田だったんだと思うよ。
タコ八は、「潮風にやられるから農作物なんて実らない」って言ってたけど。
棚田を下っていく途中、左の茂みに分け入っていくと、
小さなログハウスを発見!軽く感動したよ♪
なんでも、イザリーヌを建てた画家さんが、子供たちと一緒に建てたらしい。
今はもう誰も遊びに来ていなくて、村人からも忘れ去られ、朽ちはじめていた。
もったいないなぁ。伊座利にトムソーヤは居ないのか?
さらに下りていくと、広大な多目的広場がある。
そこから右の小道を行くと、川が流れてる。
木立に覆われていて涼しく、夏の水浴びにはうってつけの立地だよ。
水は綺麗で、ひんやりしてる。
もったいないなぁ。伊座利にトムソーヤは居ないのか?
川を下っていくと、変な人工施設がある。コンクリートを打ちっ放したような。
プールかと思ったんだけど、どうやら、犬のための遊び場らしい。ドッグランだよ。
創設者の画家さんは犬が大好きで、犬と一緒にココで遊びたかったんだね。
何年も使われていないようで、もうボロボロになってた。
多目的広場に戻って、真っ直ぐ下りていくと、
じゃーん!プライベートビーチ!!
リゾートビーチのような楽園テイストじゃないけど、
プライベートビーチがあるのは気持ち良いよ。
裸で海に入ったことある?スゴい開放感さ♪
僕は、裸になって、
一人で海に入っていった。「危ないから泳ぐな」って禁じられてたけど。
ホントだ。波はちょっと高い。
いや、思いのほか高い!?
気付いたときにはもう遅く、
僕は、強烈な波に飲まれ、大岩に背中から打ち付けられた!!
痛ぇ!!痛ぇなんてモンじゃない!!
けど、痛がってる余裕もない!
波は次々に打ち寄せ、そして足は地に着かない!!
僕は呼吸を奪われ、傷口は海水でさらに痛み、助けを呼ぶ声も出ず、
仮に叫べようとも近くには誰も居やしない!!
文字通り死に物狂いで浜までたどり着き、僕は九死に一生を得た…!!
ホントに、死ぬかと思ったよ。
溺れかかったことは何度かあるけど、こんな絶望的だったのは初めてさ!
でも、面白かったよ(笑)
それにしても、
このイザリーヌの敷地は、地形の変化に富んでてホントに面白い。
子供を、こんな庭に放って育ててみたいよ。
きっと2回くらいは死にそうな目に遭うだろうけど、
それでも、恐ろしくたくさんの知恵とスキルを身に付けるだろうさ。
そして、自然の面白さを悟るだろうさ。
地球ってのはさ?手付かずな場所のほうが面白いんだよ。
それに子供ってのは、
田舎で育ったほうが幸せなんだよ。みんな自覚してないけど。
『名もなき町で』



