エピソード23 『「おとぎの国」の歩き方』
どうでもいいけど、そろそろクツが臭い!
履いてるほうがまぎれるんだろうけど、
もっと臭くなるのはイヤだから、歩き終わったら脱ぐよ。
ビーチサンダル持ってたけど、タイ出るとき捨てちゃったんだよなぁ。
爺さんは、僕のクツが臭ってるのに気づくと、
どっかからハッカみたいな匂いの草を摘んできて、クツの中に詰めた。
っていうか爺さん、ぞうり!?
ぞうりで山道歩けんの!?ってのもビビるけど、
裸足にぞうりで寒くないの!?ってのがもっとビビる。
「ほっほっほ。これも鍛錬じゃよ。慣れじゃな。」
「慣れでどうこうなるの!?」
「なるとも。
いや、そもそも人の体は、
もともとは靴下を必要としていない。赤子のうちはな。
足の裏のチャクラから、絶えず熱を発しておるからじゃ。
しかし、親が靴下をはかせたり暖房を点けたりと甘やかし続けることによって、
赤子の足裏のチャクラは閉じてしまう。熱を発しなくなる。
そこから人は、急速に不健康になる。
足裏のチャクラを活性化させるなら、冬に裸足で出歩いても、苦しくない。
わしに限らず、田舎に暮らす者たちの多くは、こうだぞ?」
「そうなの!?」
「おぬしも少なからず、寒さに強いはずじゃぞ?
よく歩く者は、少なからず足裏のチャクラが開く。」
爺さんは話を終えると、
思いついたように立ち上がって、どこかに消えていった。
しばらくして戻ってくると、手にワラみたいのをたくさん持ってる。
「何するの?それで。」尋ねると、
それに答えもしないで、しゃがみこんで編み始めた。
ぞうりだ!
爺さん、僕にぞうりを編んでくれた!
「明日はこれをはけ。」
「お爺さん、こんなことまでできんの!?」
「驚くほどのことではない。
もともと人は、何でも自給自足していたのよ。貨幣が誕生するまでは、な。
クツも、服も、米も野菜も、家でさえ、誰でも手作りできた。
貨幣は、人を幸せに豊かにしたと崇められているが、
おそらく、真逆であろう。
貨幣の誕生により、人は何も手作りできなくなってしまった。
先進国の者たちのそれは、深刻なほどに著しいな。」
「ふえー。」
『「おとぎの国」の歩き方』


