エピソード23 『真理の森へ』
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- 2023年3月19日
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エピソード23
2ヶ月ほど経ったある日のこと。
カティは、お尻をふりふりしながら、私の部屋の戸を叩きました。
「翔子!
日本の恋人から、エアメールが届いてるわよ♪
リョウって、日本の男性の名前でしょう?」
「亮くん!?」
私は赤面して、あわててカティから手紙を奪い取りました。
「あらあらぁ!赤面しちゃってぇ♪
あなた、日本に恋人がいるなんて、一言も言わなかったじゃない?」
「こ、恋人じゃないし…」オドオド。
「恋人じゃないの?それなのに、そんなに赤面??」
「えーっと、実は…」
私は、亮くんのことを、思い切ってカティに話してみました。
「…つまり、
リョウくんっていうのは、セックスフレンドってことね?」
「え!えっと、いや、あの、その…」
「恥ずかしがることないわよ♪
日本は貞淑が美徳なのは、知ってるわ。
でもフィンランド人は、けっこうフリーな恋愛観をしているわ。
セックスフレンドなんて別に、おかしなことじゃないの。
恋人がいたって、それ以外にセックスフレンドを持つ人もいるわ。
フランスやオランダなんかも、そうでしょ?」
「そうなの!?」
「昔はフィンランド人も、一途で貞淑だったらしいけれど。
いや、一途でも貞淑でもないのに、それを演じなければならない社会で、
それに耐え切れなくて、女性たちが性改革を起こしたのよ。
そからはずいぶんオープンになったし、ずいぶん自由になったわ。」
「清楚なフィンランド人女性が…?」
「そうね。おおむね清楚な人種だとおもうわ。
そのへんはフランス人やイタリア人とは違うし、ラテンとも違うわよね。
あまりテンションの高い人種ではないわ。でも性欲とテンションは別よ。」
「へぇ。」
「別に、悪くないとおもうわよ?セックスフレンド。
恋人なんて、『義務の押し付け合い』ですもの。
『恋人なんだからプレゼントちょうだい!』
『恋人なんだから迎えに来て!』
『恋人なんだから週末は遊んで!』ってね。
私、それがあまり美しい関係性だとは思えないのよね。
そして実際、恋人たちは、それが重荷になり苦痛になって、険悪になっていく…
でも、セックスフレンドに対して人は、多くを求めないわ。義務を押し付けない。
セックスやスキンシップの欲求さえ満たしてくれれば、
プレゼントも送迎も求めたりしない。ある意味、健全じゃない?」
「へぇ…。」
へぇとは答えたものの、それは、私がなんとなく感じていたことと同じでした。
日本でその考えを口にしても、誰も理解してくれそうもないから、
心の中でうやむやに押し留めていたけれど。
私が言葉を探していると、カティは続けます。
「日本人って、不思議だわ。
日本の女性の服装やアニメを眺めてると、
日本人ってとても性欲が強くて、セックスを貪欲に求めてるんだと思うの。
そのわりに、社会やパートナーに対しては、性の自由を許さない。
自分はたくさん欲しいけど、他人の自由は許さない。
ちょっとワガママなのかも?よくわからないけどね。」
「そういえば、トゥーリも、
『日本人は本音とタテマエが裏腹だ』って、言ってたな。」
「そうね。良くも悪くも、そういう気質があるんだとおもうわ。
とにかく、日本の場合、
よっぽど心の広い人たちでないと、自由恋愛は生きられないとおもうわ。
嫉妬や恨みが、次々問題を引き起こすでしょうからね。」
カティが退散すると、私は亮くんからの手紙を開けてみました。
「1通くらいは手紙をよこすと思ったのに、水くさいじゃないか!」
といった内容でした。
たしかにそうかもしれません。亮くんは私の恋人じゃないけれど、
私と亮くんは心のつながった親友でもあります。フィンランドは二人の共通項だし。
「落ち着いたら手紙の1つでも書こう」と、出国前は思っていたのですが、
いざこっちに来て、充実した毎日を過ごしていると、
すっかり忘れていたのです。
亮くんのことはよく思い出すけど、手紙を書こうとは思わなかった。
そういえば、以前一度だけ付き合った人にも、
「君はそっけないね」と言われ、フラれたのでした。
私はどうも、ベタベタとした関係が苦手なようです。
メルアドの交換とかもあまりしないし、メール自体もあまりしません。
カティを見ていて、
愛想よく振舞ったり可愛くメールしたりするのもいいことだなと、
感じるようになってきたけれど。
亮くんは、怒っているというよりは私の安否を心配してくれていたので、
フィンランドでの楽しい出来事をいっぱい書きつづって、
カティ、アンティとの3ショットを添えて、お返事しました。
『真理の森へ』



