エピソード3 『大家族』
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- 2023年4月4日
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エピソード3
結婚相手も、創価学会の会員だった。10歳年上の銀行員である。
マユもやはり、お金には困らない環境を手にする。
マユもまた、働く必要性のない身分を手にする。
マユは、早く母親になってみたかった。望みどおり、ミユはすぐに産まれた。
ミユの誕生をきっかけに家に篭もる時間が増えると、マユは家事をとても楽しんだ。
家を自分好みに飾りつけ、出来そうなものから手作りに挑戦した。
油絵、藤カゴ、キャミソール、パッチワーク、アロマウォーター、陶芸、ミニトマト…
何でも挑戦してみた。
料理ももちろん、夢中になった。
マユは味覚が繊細だったので、外の食事はあまり口に合わず、
自分好みの料理を開発することは、この上ない喜びだった。
それはお腹を満たし、健康を促進し、想像力を高め、おもてなしの道具にもなった。
マユが家事遊びにのめりこんでいくと、1つ、困ったことが起きた。
マユは、旦那のことがどうでもよくなってしまったのだ。
旦那が嫌いだったりはしないが、あまり関心が向かなかった。
旦那に愛されている確信があったので、ご機嫌取りしなければという感覚も無かった。
しかし旦那は、マユからの愛が薄れていることを感じとり、焦りを覚えた。
マユの関心を得るために、旦那は必死で贈り物をした。
絵画、バッグ、ネグリジェ、じゅうたん、香水、花瓶、珍しいフルーツ…
とにかく様々な高級品を贈った。家の中は高級品であふれかえった。
しかし、マユはあまりそれを喜ばなかった。
幼少時の生家が立派な民宿であったため、たいていの高級品は見飽きている。
それに、何にせよ、自分好みに手作りするほうが嬉しかったのだ。
ブランド品よりも、手作り品のほうが魅力的に感じたのだ。
旦那からの贈り物は、
皮肉にもむしろ、自分の手作り趣味を否定されているような気持ちになった。
旦那にそのような悪意は無かったが、マユはたびたび、そう疑心してしまった。
男女の思いやりというのは、いとも簡単にすれ違う。
とにかくマユは、旦那から高級品を贈られても、さっぱり喜べなかった。
ミユは、そのようなマユの背中を見ながら育った。そのようなマユを手伝いながら育った。
また、ミユは、
毎年夏休みだけは、白川郷で暮らした。祖父の経営する民宿で、である。
ミユもまた、たくさんの客人に囲まれもてはやされ、大家族生活を経験する。
ミユにとって、白川郷の集落は、迷路みたいで面白かった。
田舎には何も無かったが、ミユにとっては問題なかった。
マユの影響で何でも手作りできるし、創作それ自体を遊びと思えるからだ。
また、白川郷の豊かな自然は、大好きな「となりのトトロ」を彷彿とさせた。
ミユはトトロに会いたくて、サンゴ色のスカートを泥だらけにして野山をあちこち探検しては、
大人たちをハラハラさせた。
『大家族』



