top of page

エピソード39 『首長の村の掟 -真実の物語-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月12日
  • 読了時間: 2分

下のメインストリートに下りてきて、尚も奥に向かって歩いていると、

前方から、青いTシャツを着た、黒髪の青年が走ってきた。

すれ違いざまに、彼の存在に気付き、顔を見ると、

日本人のように見えた。

観光客のほとんど居ないこのタイミングで、日本人を見つけて嬉しかったので、

「あれ、日本人ですか!?」

と、反射的に、声を掛けていた。


彼は、パっと振り返ると、

僕のことを、怪訝そうな顔でにらみ、

「…そうですけど?」と短く言って、

また、走り去ってしまった。



「なんだぁ、愛想の悪い人だなぁ…」

僕は、つぶやいた。

「旅人」の反応とは、思えない。


「…今のって、タレントのS.Kじゃない!?」

ユミちゃんが、小声で叫んだ。


確かに、そうだった(笑)

どおりで、見覚えがある顔だと思ったし、イケメンだと思った。



「なんでこんなトコにいるんだ?

 テレビの撮影でも、やってんのかなぁ?」

と、首をかしげながら前に向き直ると、


…その通りだった(笑)



すぐ目の前で、

大きなビデオカメラを担いだスタッフなどが、

あれやこれやと、作業をしていた。


遠巻きに、観察してみた。


「…えー、では、これから、

 村のお子さんに、水浴をしてもらいまーす。」



…ヤラセかよ…!!!(笑)

…はぁ。


僕は、更に落胆してしまった。

今のセリフは、聞かなかったことにした。


水浴びの「演技」が終わった後に、

スタッフの1人に、声を掛けてみた。

「これ、何の番組なんスか?」


「あ、『なるほどザ・ワール○』です。

 今度、10年振りに、『復活スペシャル』っていうのを、やるんですよ。

 首長族を有名にしたのは、昔の私たちなんです。」

と、胸を張って、言っていた。

「胸を張って」言っていた…。



一体全体、彼らは、

首長の集落を、これほどずさんな観光地に変えてしまって、

心は、痛んでいないようであった。

誇らしいようであった。

典型的資本主義の思考が、ここに、あった。


彼らは、どうやら、

この商業的な集落を、巧みに、撮影した。

土産物屋台が映らないような、「素朴な人々の映像」に見えるように、

謀ったのである。

日本で最高峰に有名だった、知的クイズ番組が、この有様だ…。



僕らは、テレビスタッフはほったらかしにして、更に歩いた。

ヒマそうな首長娘に、話し掛けてみた。

「この暮らしは、楽しいのかい?」

と、聞いてみたかったのだ。


しかし、

僕が質問をする前に、彼女が僕に、質問をしてきた。日本語でだ。

「オ兄サン、オマ〇コ、好キデスカ?」


僕は、頭が痛くなってしまった…

一体、

彼女たちにこんなことを教えたのは、誰なんだ?

日本人であることは、間違いなかった。


そして、その疑問の答えが、30秒後に、解けた!



他の東屋の下で、

さっきのS.K氏が、若い首長娘と、楽しそうに談笑していた。

彼は、驚くことを、口にしていた!!


「バスト イズ おっぱい!

 OK? 

 バスト イズ おっぱーい!」


『首長の村の掟 -真実の物語-』

bottom of page